2.15.2011

[film] The Valiant Ones (1975)

日曜日は、BAMのSusan Sarandon特集もヤマだったのだが、アストリアのMoving Imageの特集"Recovered Treasures: Great Films from World Archives"から、地味に3本みました。

同館内で並行してやっている別の特集"Avant-Garde Masters"のなかで、Jonas Mekasの”Lost, Lost, Lost” (1976)の上映+本人によるQ&A、もあって、これも見たかったのだが、あきらめた。
"Lost, Lost, Lost"を最初に見たのはまだ四谷にあったイメージフォーラムで、84年くらいだったか。 これが実験映画みたいのを見た最初でもあって、いろいろびっくりしたものだった。

最初のが2時からの"Lonesome" (1928)、ていうやつ。 監督はPaul Fejos。 69分。
Universal Picturesで、音楽と、効果音と、部分だけだけどダイアログに声が入って、一部でうっすらとカラーが入った最初の作品、映画史的には結構重要な1本、なのだそうな。

マンハッタンの電話交換台で働く女の子と穴あけ工場で働く男の子の朝起きるところからはじまる。
目覚ましでびっくりして大急ぎで支度してカフェで朝ご飯とって、ラッシュの電車にうんざりして、単調な仕事で更にうんざりして、やあっと休日になるとばんざいー、てこれは、今とあんま変わらないよね。

で、休日のConey Islandでそんな男女が出あって、ビーチで遊んで、アトラクションであれこれ遊んでだんだん仲良くなって、ダンスホールで踊って、でもひょんなことからお互いはぐれちゃって、更にすごい夕立ちが来て泣きっ面に蜂で、お互いめそめそ泣きながらアパート戻って、男は彼女と踊った思い出の曲をレコードでがんがんかけて、女は泣きながらうるせえよ癪にさわるんだよ、て壁をどかどか叩いてたらそこにいたのは彼だった、と。

こんにちのデート映画、Boy meets Girlものの原型、ロマンチックなところも、失望もやけくそも、突然の、一旦の破局も、夢のようなハッピーエンドも、既にぜんぶ入っているのね。

しかし、当時の通勤電車は今の通勤地下鉄よか混んでいた、とか、20年代、全盛期ののConey Islandがすごかった、というのは聞いたことがあったが、これほどだったとは、とか、いろいろおもしろいなあ、と。


この後で4時から見たのが、香港のKing Hu(胡金銓)による"The Valiant Ones"(1975) -
『忠烈図』 。

20世紀初のNew Yorkから16世紀の中国にとんだ。

上映前に、これを見るためだけにわざわざどっかから飛んできたという映画史家のDavid Bordwellさん(http://www.davidbordwell.net/)による、ものすごく短い講義があった。

King Huのアクションの京劇(Beijing Opera)からの影響とか、彼のフレーミング(一瞬、中心がどこにあるのかわからなくなる)の特殊さ、などについてざっくり。

お話しは、16世紀の明の時代、日本の海賊が沿岸で悪いこといっぱいしてて、それをやっつけるために7人の勇者が呼ばれて、えんえんバトルするの。 いじょう。

勇者のなかに夫婦がいて、この2人がべらぼうに強くてかっこよくて、賊のアジトに乗りこんでって日本代表みたいなかんじの連中と勝負するのだが、日本側、まったく歯がたたない。 もうちょっと殺陣がちゃんとできるやつを、とかそういうこといわない。
たまにでてくる日本語、「ばきゃーろー」とかも相当変だが、そういうこともいわない。

日本側の親玉がサモハン(武術指導も彼)で、Hakatasu - 中国語字幕だと津多博てなっていたが、博多津ていうのか? - なんでか白塗りのバカ殿仕様なのに、とうぜんめっぽう強くてすごい。

で、ラスト、海岸でのバトルは、なんというか、ものすごくありえなくて唖然。
しぇー、しか出てこなかった。
モモンガじゃないんだから。 いや、モモンガだってあんなふうに飛ばないし。 
そもそも彼ら殺し合いしないし。

冒頭の講義でも触れられていたが、一瞬で相手を倒す、一瞬にしてコトが起こる、それをわからせるためにフレームとかカット割りはどこにどんなふうにあるべきなのか、King Huの偉大さとユニークさは、そのありようを独自に発明した - イタリアのウェスタンとは全く別のアプローチで - ことにある、というのがようくわかった。

ただ、案外適当につないでいたらたまたまそれなりにできてしまった、というのも結構あるのでは、とか失礼なことも思った。 だってあんなのまねできないし、まねできないから伝承しようがないし。 そうか、だから偉大なのか、とか。

DVDがどっかで出ているのだったら、もう一回見て、それなりに納得してみたいところ。

でもやっぱし、あんなふうにひとは飛べない。

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