2.21.2011

[film] Out of the Past (1947)

暖かくなった、と思ったらまた寒くなった。 こうやって春は。

ほんとうはーこの週末で帰国の予定だったんだけどね。 ほんのすこしだけのびた。

金曜日の晩は、Museum of the Moving Imageでリオープン記念のリストレーションシリーズ、自分がみるのはこれが最後のやつ、Jacques Tourneurの"Out of the Past" (1947)。 ノワールのきわめつけ。 といわれる。

この作品を最初に見たのは2003年、MOMAのフィルム部門が改装中に、いまはGramercy Theatreになっている元映画館で臨時営業やってて、そこでかかってた50年代映画特集で、Otto Premingerの"Angel Face" (1952)との2本立てだったの。

これでえらくびっくらして、昔の映画にずるずる引き摺られて、なんでも見るようになっていったのはこのあたりからだった。 ずるずるずる。

プリントはLibrary of Congressのでぴかぴか。
そして、あらためてしびれる。 

引退して田舎でガソリンスタンドをやっている元私立探偵(Jeff)のところに昔の雇い主からお呼びが掛かる。Jeffには結婚しようと思っている彼女がいて、彼女には話しておいたほうがいいかも、と彼は彼女に昔あった仕事 - $40000もって消えた女(Kathie)を探して恋におちて - のことを話す。 で話は一旦この過去に飛んでから、現在に戻ってきて、で、要するに逃れられない過去と、それでもそこから逃れようと静かにあがくふたりの顛末を冷酷に追う。

派手などんぱちも熱い喧嘩もほとんどなく、場所は田舎の町、NY、アカプルコ、西海岸、と結構動きながら、台詞は最小限で、時間が過ぎたことを示すこと、登場人物が変わったことを示すことの難しさを、ひっくり返していうと、なんで時間も登場人物もがらって変わってくれないのか、変わってくれたらどんなによいだろう、という主人公の祈りと諦念をあぶりだす。
(ガソリンスタンドで働く聾唖の青年 -ずっとひとりでそこにいる- はその想いを静かに体現しているのね)

Jeffを演じるRobert Mitchumのとろんとした目と静かな、しかし確信に満ちた語り、ファム・ファタールKathieを演じるJane Greerの猫のかわいさと凶暴さを併せもった表情がほんとにすばらしく、このふたりなら、あの結末しかありえないかんじ。

白黒のコントラストがくっきりと出た撮影のNicholas Musuracaもすばらしく、配布されたレジュメに、この作品こそリストレーションされた版で見るのがふさわしい、とあったが    ほんとにそうだと思った。

アカプルコの陽の光もスコールも、サンフランシスコの町の固い建物も濡れた舗道も、登場人物全員の、なに考えているんだかわからない顔の陰影も、すべてがくっきりとした存在感のなかにそこにある。 闇のなかにはっきりとそこで生きていた存在とその時間を、そこにあった物語を際立たせることがノワールの定義であるとしたら、これはやっぱしノワールの名作、と言わざるをえないのだわ。

何回でも見たい。 これからも見る。

この"Recovered Treasures"特集のあとは、アラン・レネ特集がはじまる。
日仏でやったのとほぼ同じかな。 

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