2.03.2011

[film] Dancing Dreams /Tanz Traume (2009)

火曜日の朝から10年に一度のStormがくる! てTVは大騒ぎしてて、実際に中西部のほうではすごいことになっていたので、わくわくして待っていたのに、結局はみぞれみたいな雨がぼたぼたきて、寒く冷たくなっただけだった。

あんまりにあんまりなので、うそつき! て文句をいいに外に出て、 映画みました。

Walter Readeのイベント"Dance on Camera"のクロージング作品。

Pina Bauschの2008年の”Kontakthof”上演のために集められた若者たちのリハーサル風景を追ったドキュメンタリーフィルム。 昨年NHKで放映されたみたいだし、輸入DVDでも見れるので既に見たひともいることでせう。
でもこれは、でっかいスクリーンで見たほうがぜったいにすごい。

演目としての”Kontakthof”は初演が78年で、その後65歳以上のダンサーによるバージョンが2000年にあって、今回はそれのTeenagerバージョン。 彼女が手掛けたほぼ最後の作品。 
Pinaの「ぴ」の字も、ダンスといったらヒップホップくらいしかしらないガキ共にPinaのピースを教えたらいったいどんなことになるのか。

ものすごくおもしろかった。 
優れた作品の、リハーサルやデモがおもしろいのは当然であるがそれ以上にいろいろ。

冒頭の、若者たち全員がこっちを向いて体を揺らす、そこから一挙にひきこまれる。
ダンス・フィルムとしても、ひとつの目標に向かう若者たちの像をとらえたフィルムとしても、すばらしいと思った。

リハーサルは2人のリハーサル・ディレクターが仕切っていて、彼女たちがほんとにつきっきりで面倒をみてて、細かく細かく指導して、Pinaはたまに顔をだして全体を見て、静かに指示をだして帰る程度。

Pinaのコレオグラフのメソッドとかリハーサルのやりかたについては、これまでもいくつかのダンサーのインタビューなどで明らかになっているが、今回のはダンサーではない、ダンサー志望というわけでもない素人相手に、いちから教えていかないといけない。 

体の動き、テンポ、表情。 まず若者たちには、なんでそういう動きをするのか、しなければいけないのか、それすら謎で困惑してて、Pinaのダンスって、それを見ている我々ですらなんじゃこれ?みたいなとこはあったりするので、道のりの困難なことといったらすさまじかったのだろうな、とおもう。

でも、とにかく動きとか身体の使い方を辛抱強く教えていくと、おもしろいことにその動きや動作に、そこに求められていた感情とか情動のコアみたいなところが穴とか型とかに吸い寄せられるかのように入っていく。
こうして最初はぎこちなかった動きや表情が、新たに注入され新たに獲得されたエモーションを伴うリアルで切実な動き -ダンスとして彼らの身体を新しいものにする。

そんなような化学変化が、これは彼らの若さゆえに起こったものなのか、あるいはそこに資質みたいのがあるのか、あるいはPinaのダンスがそういう方向に身体をガイドすることになっているのかしらんが、とにかく起こって、それを見る我々は、そこにPinaのダンスを見たときにいつも感じるあの、愛おしさとか、哀しみとか愛とか憎悪とかがむきだしにされた、丸裸にされたエモの姿を目撃することになる。

とにかく、うわー、この子すごい! てなるくらい変わるのね。

Pinaのいつものメンバーだと枯れてたりやさぐれ系だったりが多いのでそんなでもないし、それが味だったりするわけだが、この映画のなかでぴちぴちの若い子の間で起こるそんなような変化は、とにかく新鮮でまぶしくて、若いっていいねえ、と。

そういうのとは別に、実にいろんな子供たちがいて、ボスニアからの難民の子もいれば、死を身近に経験した子もいれば、ごくふつうの若者としてだらだらしている子もいる。 そうだよね。

あとはたまに登場するPina本人がさあ。 彼女がリハーサルの光景を、目を細めてたまに微笑みながら見ていたりする姿が映ると、それだけでなんだか泣けてきてしまうのだった。 彼女はあんなふうにして彼女のダンスとダンサーを繰り返し繰り返し作って、育ててきたんだなあ、って。
そして、彼女はもういないんだなあ、って。

上映後に監督とのQ&Aがあった。

監督の女性は73年頃からPina - Tanztheater Wuppertalのダンスを撮り続けてきたひとで、だから今回も許可が出たらすぐにオールアクセスで出入りができた、と。

このおばさん、別にたいしたことやっていないのよ、みたいなこと言っていたが、この映画のカメラは、ダンサーの動き、表情、Pina特有の群舞とそこから突出する個人の動きを実に見事に的確に追っていて、ただものじゃないねえ、とおもった。

以下、いくつか言っていたこと。

-撮影は、基本彼女とカメラマンのふたりだけで、使ったカメラは1台だけ。 どういうカメラかはしらない。 クライマックスの舞台のところだけは、カメラを2台つかった。

-オリジナル版、65歳版とTeenager版の異同については、まず、ダンサーにしかできないテクニックがいるところは外したのと、あとは上演年やバージョンごとに細かく変えていく部分が(いつも)あるのでそういう調整はあったが、それ以外にTeenageだから、ということで特に修正したりした箇所はなかった。

-子供たちはいろんなレベルの学校8つくらいから、最初は150人程集まった。土曜日フルに参加できること、という条件が入ったところで、それが半分に減った。そこから更に50人くらいに絞った。

-この舞台のあとで、本格的にダンサーや演劇の道を進みはじめた子も4~5人いた。

-照明はほとんどなにも考慮していない。 Pinaの姿を撮るときだけ、ちょっと配慮して調整した(笑)。

-映画製作の資金はTanztheater Wuppertalからとあとはパブリックの援助金、それだけ。


Wuppertalの町って、いつか行ってみたいなあ。 あのモノレール、いいなあ。

次は、ヴェンダースの3D, "Pina"だな。
Pinaが霊界から飛びだしてくるんでしょ?

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