3.22.2021

[film] Tove (2020)

3月17日からBFIで始まったBFI Flare - 毎年やっているLGBTQ+ フィルムのお祭りで、17日、水曜日の晩に見ました。

フィンランドの画家で、誰もが知っているムーミンの作者 - Tove Janssonの伝記映画。
第二次大戦が終わる少し前くらいから50年代頃までのTove (Alma Poysti)の軌跡を追っている。

2017年の夏にSouthbank Centerであった展示(&ツアー)”Adventures in Moominland”と2018年のDulwich Picture Galleyでの彼女の絵画作品を中心とした展示 “Tove Jansson (1914-2001)”を見ていたので、ムーミン以外のToveのことも多少は知っているつもりだった。パスタ皿もずっとスナフキンだし。子供の頃の最初のムーミン経験はToveが激怒したという東京ムービーのバージョンだけど。

1944年のヘルシンキで、画家としてデビューしようとしていたToveは高名な彫刻家の父Viktor (Robert Enckell)からはまだまだだなって見下されていて、スケッチの隅に描かれた落書きみたいなスナフキンにも「そんなのはアートじゃない」、って言われたりしている。けど油絵を続けて品評会の選考から落とされても落書きはやめられないし、既婚の左寄りの政治家Atos (Shanti Roney)ともだらだらした関係を続けていて、割としょうもない。

そんなToveがパーティで市長の娘で演劇をやっているブルジョワのVivica Bandler (Krista Kosonen)と出会って電気に打たれて、Vivicaも結婚していながら「私は女性と寝るのよ」と言ってToveの家にやってきて関係を重ねていくようになる。ToveはVicicaの演出するサルトルの『恭しき娼婦』のリハーサルを見に行ったり、VicicaはToveの部屋から『ムーミン谷の彗星』をこっそり持ち出していったりする。

1947年に、VivicaはToveにムーミンの話をミュージカルすることを持ちかけて、最初は”Moomin doesn’t dance”って抵抗するのだが、やっているうちに楽しくなって、Swedish Theatreでの初演は成功して、そこから新聞連載の契約も取れたりするのだが、そんなことより彼女の目はVivicaから離れることができなくて - “Into the wild where doragon lives” - Vivicaが頻繁に誘ってくれていたパリに向かったとき、そこでふたりの愛も終わることになる。 と同時にToveが亡くなるまで関係を共にしたTuulikki Pietila (Joanna Haartti)との出会いはこの辺りから。

厳格な芸術家の家に生まれて、期待されていた油絵の方ではぱっとしなくて、ふつうに結婚することも敵わずに女性とずっと関係を持ち続けて、唯一うまくいったのはぽわぽわだったりごわごわだったりにょろにょろだったりする逸れものの変てこな生き物たちが自在に動き回る隠れ里のコミックだった..  けどぜんぜんいいじゃん、ていうお話で、これがぜんぜんひねくれ者の人生一発逆転モノみたいな臭さからは遠く離れて、そうこなくちゃね! っていう自由と爽快感に溢れているのは、Toveその人の奔放さとムーミンたちの像を彫りだして野に放った想像力の豊かさがあったから。 Toveが当時のスタンダードミュージックに合わせてひとりで楽しそうに - 本当に楽しそうに踊るシーンがすばらしくよくて、ラストにはこれとそっくり(いや、こっちがほんもの)のTove本人のダンスシーンも流れる。

Toveはなぜ、どんなふうにムーミンを描き始めたのか、については(既に描いていた時代から入るから)触れられないので、そういうのを含めてムーミンを見たいお子様を連れてくると女性の裸だらけで微妙なことになるかも。あと、Toveの戦争断固絶対反対!の側面もでてこない。 あくまでVivicaとの燃えるような恋が中心。
最後の方で、亡くなったパパの遺品の中からムーミンがいっぱいのスクラップブックを見つけるところ、いいなー。

Toveのアトリエのインテリアとか色の具合も素敵で、淡い光の射しかた、ハマスホイの絵のかんじ(これはデンマークだけど)もあったり。 この辺はフィンランドのセンス全開のようなー。

ムーミンランドも結局行けないことになるのか。でもスナフキンもムーミンも心のなかにずっといるから。

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