3.04.2021

[film] Poly Styrene: I Am A Cliché (2021)

3月1日、月曜日の晩、3月に入っちゃったし月曜日だしなにもかも嫌だよう、って泣きながらGlasgow Film Festivalのオンラインで見ました。もうじき英国全体にも公開される。

X-Ray SpexのPoly Styrene (1957-2011)のドキュメンタリー。共同監督は実娘のCeleste Bellさんで、彼女が共著者でもある2019年に出版された本 - ”Dayglo: The Poly Styrene Story: The Creative Life of Poly Styrene”をアルバムのようにめくりながらPolyの生涯を振り返っていく。

冒頭で監督自身が表明しているように、そこには娘の目から見た母Polyがどうだったのか、という目線が入っているので、単純なパンクミュージシャンとしてのPolyかっこいい!!にはなっていないし、こういうドキュメンタリーでフォーカスされがちなダークサイドのありようも従来のそれとはやや異なっている。そこは賛否あるのかも知れないが、わたしは少しはらはらしながら見て、とてもよいと思った。

スコティッシュ=アイリッシュの母とソマリア人の父の間にMarianne Joan Elliott-Saidとして生まれ、自身を常に混血として意識せざるを得なかった少女時代からSex Pistolsのライブに出会って衝撃を受け、イエローページをめくって名前を拾ったPoly Styrene(ポリスチレン)となってX-Ray Spexを結成してすばらしいアルバムを1枚作って、でも成功の後で精神を病んで、治療の過程でクリシュナの思想に寄っていって、というのが大きな流れ。

再結成以降のは別として、もっとも生きていた頃の彼女に触れることができるのは“Live at the Roxy” (1977)と“Germfree Adolescents” (1978)のほぼ2枚だけなわけだが、とにかくデビューシングルの”Oh bondage, up yours”だけでもいいから聴いて。そこにはJohnny Rottenと比べても全く遜色ない瑞々しく奔出するパンクしたパンクの棘、傷、ささくれ、カサブタ、痣、みたいな声の典型のようなのがあって、彼女がJohnny Rottenにやられたのと同じように彼女の声が耳にはいって数秒後でやられるかどうか、そういう声なのだと思う。
そして、ナリについて言うのはよくないかも知れないけど、それを思いっきり振りかぶってぶちまける彼女ときたら声と同じようにまるで子供のようで、いまならCobra Kaiに入るナードの中にいてもおかしくないかんじなのに、とにかくすごいんだわ。

Bind me, tie me, chain me to the wall ~ I wanna be a slave to you all
Oh bondage, up yours ~ Oh bondage, no more      〜 ”Oh bondage, up yours”

こんなふうなので、コメントする人達はこれにやられてしまった人々ばかりで、女性からはKathleen Hannaに、Pauline Blackに、Neneh Cherryに、Vivien GoldmanにVivienne Westwood、Ana da SilvaにGina Birch、そしてもちろんLora Logic。 男性からはDon Letts(いつもの語り部)にThurston Mooreに、Youthに。 彼女は自分にとってのAwakingであり音楽をやっているのも彼女がいたから、と語るNeneh Cherryと、彼女こそがNew toolsでありNew possibilitiesだった、というThe Raincoatsのふたりが印象的。 あと1977年のCBGBで見た彼女たちのライブがいかに衝撃だったかを語るThurston Moore。そしてすばらしい声のLola Logic - 彼女とPolyが一緒に動いているとこが見れるだけでもう …

NYでのライブを成功させた後、彼女のなかで何かが壊れて、突然頭を坊主にして、その翌日にドキュメンタリー  ”White Riot” (2019)にも出てきたVictoria Parkでのライブに出演してから先は急性双極性障害を発症し、でも間違ったケアを受けてて... この辺はつらいのだが、監督のCelesteさんにとってはここからが母との関わりであったわけで、パンクがどうした、というのとは少し違う話になってくる。 でもこれもまたパンクを起点とした女性の、家族の物語であることは確かなので、みんな見るべき。(これとは関係ないけど、John LydonとNoraとAliのお話しも頭をよぎる)

パンクのドキュメンタリーとしては”Here to be Heard: The Story of The Slits” (2017)と同じくらいよくて、あれもたしかTessaが昔のスクラップブックをめくっていく構成だった。最後に残るのは本なのか映像なのか。いやもちろん音であり声に決まっている。 まずは見て聴いて。


PJ Harveyの”Stories from the City, Stories from the Sea”以降のデモ盤も含めたアナログが届いた。
“Stories from…”はCDでは持っていたのだがこっちには持ってきていなくて、久々に聴いた。 この盤のときのツアーのライブはNYのHammerstein Ballroomで見て、当然ものすごくよかったのだがその6日後に911があったので、このレコードの曲を聴くとジャケット写真も含めてあの当時のNYが蘇る。でも、だいじょうぶだったかも。

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