3.03.2021

[film] The Talk of the Town (1942)

2月24日、水曜日の晩、Criterion Channelで見ました。Cary Grantのコメディ特集と2月末で見れなくなるリストから。
Sidney Harmonの原作をIrwin ShawとSidney Buchmanが脚色している。邦題は『希望の降る街』..?

ニューイングランドの町の紡績工場で火災があって、そこの工場長が行方不明になり、工場で働いていて労働運動もやっていたLeopold Dilg (Cary Grant)が収監されて裁判にかけられるのだが、夜中に脱獄して挫いた足を引き摺りながら同窓生のNora (Jean Arthur)の家にやってきて匿ってほしいと頼む。ほぼ同じタイミングでそこに執筆のため長期滞在の予約を入れていた高名な法学者のMichael Lightcap (Ronald Colman)が一日早いけどいい? ってあがりこんできて、他にも警察とかいろんなのがわあわあ現れるので、慌ただしくてNoraはどれも断ることができない。

Lightcapにお尋ね者のDilgをそのまま紹介するわけにはいかないので、足を怪我した住み込みの庭師です、ということにしておくと、暇でしょうがないDilgはLightcapに法律の議論を吹っかけて、法の適用をめぐる(Lightcapが探求してきた)理想と(Dilgが直面してきた)現実みたいな議論を延々戦わせるようになって、そういうのを通してふたりの仲はよくなっていく。

Noraの家の外では極悪犯Dilgを探せ捕まえて吊るせの騒ぎが大きくなっていくのと家の中ではLightcapがNoraを好きになるのが同時進行していて、外に出るのもやばい、中に籠るのもまずい、でも包囲網も狭まって来てるしどうする、になったところでDilgが庭師ではなくライブの指名手配犯であることがばれちゃって、でもDilgとLightcapは既に親友になっていたのでLightcapもDilgの友人の警官と組んで真相究明に協力することになり、やがて行方不明になっていた工場長が生きてボストンに潜伏していることがわかって、なぜ潜伏していたのか? って .. ここから先はいいよね。

工場放火事件の真相解明とDilgの逃走劇とDilgとLightcapとNoraの恋のトライアングルがどうなっちゃうのか – いろんな流れが渦を巻くコメディ、というよりは(Dilgも含めた)巻きこまれ型犯罪サスペンス、の趣きがあって、冒頭の脱獄のシーンのDilgなんて犯罪人にしか見えないダークなかんじだったり、堅物のLighcapはDilgとの議論やNoraとの出会いを通して現実世界のいろんな動き - 報道ひとつで大衆は狂ったようになって正義や法を見失って希望なんて降らない - に目覚めていくし、それらはいいけどふたりから言い寄られるNoraはどうしようか、って。

Cary Grantには茫洋とした仮面の裏で何考えているのかわからない不気味な男(”Suspicion” (1941)とか“Notorious” (1946))を演じるのとか、そういう鉄の仮面を突っついたり穴を開けたりして何がでてくるかを笑って楽しむ(”Bringing Up Baby” (1938)とか”Arsenic and Old Lace” (1944))のとか、ただの愚鈍で空っぽでインギンブレイなだけの二枚目を演じるの(これが一番多いかも)とかいろんなパターンの出演作があるのだが、この映画のは不気味な男がだんだん悪くない奴に見えてくるような話しで、そこにさらりと絡んでくるJean Arthurがチャーミングでとってもよいの。 ここの相手役がRosalind RussellやKatharine Hepburnだったらあれこれ拗れて収拾がつかなくなっていたかも(それはそれで見てみたいけど)。

最後にLightcapは最高裁判事にまで昇りつめてよかったよかったなのだが、ラストは判事席からNoraと(彼女から離れたところにいる)Dilgをそれぞれに見つめて、そこから恋の判決がくだるラストまでの流れと最後のカットがすばらしいったらないの。 結末をどうするのかは事前のスクリーニングで投票とかもして決めたらしいが、まああれしかないかー。

ボルシチに卵が入っているのを食べるのはDilgだけだから、って彼の居場所がばれそうになるシーンがあるのだが、ボルシチに卵っておいしいから割とふつうに入れない?

これとほんのちょっと似ているので、真面目な会社員が凶悪犯と瓜二つで大変な目にあうJohn Fordの”The Whole Town's Talking” (1935) ていう超絶の傑作コメディもあって - タイトルも似てるな - Jean Arthurはここでもヒロインをやっているの。 どっちもおもしろいよ。

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