3.17.2021

[film] Les rendez-vous d'Anna (1978)

3月8日、月曜日の晩、Criterion Channelで見ました。

International Women's Dayだったこの日、同Channelに”Women Make Film”という特集が組まれて、ここにMark Cousinsの14時間の大作 - ”Women Make Film”の全エピソードが入っていた。BFIだとエピソードを束ねた全5部構成だったのに対して、ここは各1時間x全14部にばらしているのでより見やすいかも。この特集の中にはこのドキュメンタリーの中で紹介された女性監督たちの映画も入っていて、その中の1本。 この作品は、”Women Make Film”の中では3回参照されている。

英語題は”The Meetings of Anna”, 邦題は『アンナの出会い』。これ、大昔の(どれくらい昔だったか覚えていない)アテネのChantal Akerman特集で見ているのではないか、というのを最初の方のAnnaがホテルの窓辺のカーテンを引くシーン(なぜか印象に残っていた)を見て思ったのだが、ただの思い違いかもしれない。

ドイツのどこかの駅にAnna (Aurore Clément)が降りたってそのままホテルにチェックインして、ベッドに横たわったり電話で話したりして、夜になると迎えに来た人達(Annaは映画監督をやっているらしい)と外に出てイベントに参加して、終わるとHeinrich (Helmut Griem)と食事をして一緒にホテルに戻って、抱きあって、でももう愛しあっていない、と言うとHeinrichは出て行って、Annaはホテルの廊下に出ている男の靴をしゃがみこんで見たり、ルームサービスの残りを摘んで食べたり。翌日再び彼の住んでいる家の傍で会って彼の家に入って、どうしても行くのか、という彼を残して去る。

その後も駅の階段で旧友のIda (Magali Noël)と会って彼女の家庭のことを話したりしてからひとり電車に乗って、ブリュッセルに向かう電車のなかではHans (Hanns Zischler)という男と隣になってどこに住んでいる/住んでいた/どこに行く、みたいな話をして、ブリュッセルに着くとママ(Lea Massari)と会って食事してふたりでそこらのホテルの部屋に入って女性と恋におちたことある?とか会話してから一緒に寝て、翌日駅で別れる。

パリに戻ったAnnaは迎えにきたDaniel (Jean-Pierre Cassel)の車に乗って食事をしてホテルに入って、バスローブになって、Annaが彼に頼まれて歌を歌って、抱きあおうとしたら彼の具合が悪くなったのでタクシーで薬を買いに出て戻ってきて、うつ伏せのDanielに薬を塗ってあげる。

最後にAnnaは自宅と思われるアパートに戻ってきて、服を着たままベッドに横になって留守電のメッセージを順番に聞いていって、あるメッセージのところにくると少しだけ微笑む。

こんなふうに、移動をしながら人と会って話して別れて電気を消してベッドに横になる、を繰り返すAnnaの日々を固定画面とシンプルな横移動のみで追っていく。途中でパニックや事故に見舞われることはないし、誰かの腕のなかで or 酔っ払って気が付いたら目覚める、ということもない。誰と会ってもどこで一緒にいても彼女はどこまでもひとりで、自分がどこにいて、なにをしてて、次に誰と会うのか、誰に電話しなければいけないか、などについて極めて自覚的で、敷かれているレールを外れて冒険をすることなんて考えていない。 それがなにか?  

この2時間強の旅を通してあなたはAnnaに出会うことができるのか、Annaは誰かと出会うことができたのか。Annaが女性ではなく男性だったら、どんな移動と出会いになっただろうか?

これが(短編とドキュメンタリーを挟んで)”Jeanne Dielman, 23, quai du commerce, 1080 Bruxelles” (1975)の次に発表された、というのはおもしろい。”Jeanne Dielman.. ”で、ひとつの家の壁のなかで延々同じ家事と情事を反復していくJeanneときれいな対照をなしているような気もするし、そんなものではなくこれはひとりの女性が置かれている日々のありようをスケッチしただけ、なのかもしれないし。 映画祭に出品するような映画を作っている彼女であれば相当いろんな人と出会っているし、出会って話をすることが仕事、のような側面もあるのかもしれないのだから孤独だとか誰かとの出会いだとか、そんなXXかもしれない、という四方からの視線に囲まれながら、彼女はカーテンを開けたり窓から列車を眺めたり部屋の灯りを消して留守電の音を聞くことの方に安らぎを求めているかのよう。

そしてこれすらも.. というところで生きているんだよ大きなお世話だほっとけ、っていう声が聞こえてきそうな。

コロナ時代のトランスポーテーションガイド、としても使えるかも(← くだんない)

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