3.09.2021

[film] The Masque of the Red Death (1964)

3月3日、水曜日の晩、Glasgow Film Festivalで見ました。桃色の日に深紅のウィルスを。

監督Roger Cormanがイギリスに渡って制作した作品を Academy Film ArchiveとMartin ScorseseのFilm Foundation(とRoger Corman自身もお金出したと)がデジタルリストアしたバージョン。

原作はエドガー・アラン・ポーの同名短編 - 『赤死病の仮面』(1842) – Web上でSir Christopher Leeが朗読しているのを聞くことができる。この朗読版だけでも全部で18分くらいと短いので、ここに同じポーの短編”Hop-Frog” - 『跳び蛙』 (1849)をエピソード的に接ぎ木していて違和感ゼロ。ポーの原作ものはRoger Cormanにとっては”The Fall of the House of Usher” (1960)に続く2作目。

村の外れの木の下に座ってタロットをしている赤いマントを羽織った悪魔みたいなのがいて(ほぼ悪魔なんだけど)、立ち止まった老婆に白い花を渡すとそれが真っ赤に染まって → 赤死病が。

Prince Prospero (Vincent Price)が貧困に苦しむ村を訪れて、若いFrancesca (Jane Asher)を拉致して、文句を言った彼女の婚約者Gino (David Weston)と父Ludovico (Nigel Green)を死刑にするために引っ立てて、あとは赤死病の蔓延を防ぐためって村ごと焼き払ってしまう。

城に連れてこられたFrancescaは服を脱がされて風呂に入れられて(ここの箇所、英国公開版では一瞬カットが入ったんだって)、貴族を招いた舞踏会の準備のために従者のJuliana (Hazel Court)が彼女を連れて城内を案内していくのだが、黄色い部屋とか緑の部屋とか、ProsperoもJulianaも入るのを畏れている黒い部屋とかいろいろあってなんだかとっても怪しい。

舞踏会の余興の準備をしている小人のHop Toad (Skip Martin)とダンサーのEsmeralda (Verina Greenlaw)は意地悪な従者のAlfredo (Patrick Magee)に笑いものにされて恨めしやってじりじりしているし、牢獄に囚われたGinoとLudovicoは、鍵を手に入れたFrancescaの手引きで抜け出そうとするのだが見つかって..

で、いろいろ不穏な動きはあるけど、赤死病はあるけど、って晩餐が始まり、GinoとLudovicoは毒の剣で殺し合いをさせられてGinoは城の外に放り出されて赤いマントの男と出会い、その後で村人たちと合流して改めて城に向かう。Julianaは聖杯からなにかを飲んだららりらり状態でいろんな部屋を彷徨っておかしくなって鷹に殺され、Hop Toadに猿の着ぐるみを纏わされたAlfredoは着ぐるみごと火あぶりにされて、Francesca救出のために城内に入ろうとするGinoは中に入るな、って赤マントに言われる。

城内では乱痴気ダンスパーティが始まってて、でも密集したフロアに赤いマントの影がちらちら見えるようになり、やがてホールは死者のダンス場に変わっていく。Prosperoはこんなはずでは、とか言いながら赤マントと対峙して、お前は何者だ? 顔を見せろ、ってめくってみたら… (Nicolas Roegの紅が炸裂)

最後は城外に生き残った者たちといろんな色の死神たちが『第七の封印』 (1957)みたいに手を繋いで向こうに消えていくの。

死神から悪王子から陰険性悪侍従から薄幸の少女から正直農民から道化から子供まで、上から下まできちんと網羅された階層構造に、横から等しく吹き付けてくる疫病の脅威をタロットの世界観で揺り動かしながらも、悪いやつはどこまでも地獄に落ちるしかない、というホラーの原型。 これはRoger Coman自身が指摘するようにフロイトが無意識を発見するよりずっと前に物語構造のなかにこれらを浮かびあがらせたポーがすごいのだが、でもそれをどす鮮やかな色彩のホラーとして視覚化したCorman氏もすごいと思うよ。

映画祭の企画としてThe Final GirlのAnna Bogutskayaさん(わたしにとってはホラージャンルの先生)がRoger Cormanとオンラインで対話している映像が以下のリンクに。 ふたりともゆっくり喋ってくれてとてもわかりやすい英語なので是非。

https://www.youtube.com/watch?v=u_mHJ1pyZEU

ここで上のフロイトのこと、Vincent Priceのこと、撮影にNicolas Roegを選んだ経緯、低予算でセットを組む余裕がなく、撮影が終わった直後の”Becket” (1964)のセットを再利用したこと、今回のリストアのこと、ダンスシーンの振り付けはEnglish National Ballet(のJack Carter)がやったので自分では口を出していないとか、今作が今の時代に持つ意味 - もちろん、赤死病はいまのCovid-19で、それを蔓延させた悪政治家たちがいる、とはっきり指をさす - などなど。

とにかくおもしろくてちっとも古くないし色使いすごいし、日本でも公開されてほしい。


調子があんま戻ってくれないので会社休むことにしたのだが、どっちみち家にいるので事務処理は(溜まるのやだから)するし、どうせ出なきゃいけないオンラインの会議はでるし、ぜんぜんだめだった。だめだわ。

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