3.31.2021

[film] Der blaue Engel (1930)

3月21日、土曜日の午後、Criterion Channelで見ました。

ここで“Dietrich & Von Sternberg“という特集をやってて、Marlene Dietrichは昨年、2度目のロックダウンの前のBFIの特集で見始めたところだったので、あれの続きと思って見ていくことにする。

これは、見ていてあったり前の映画史上の名作と言われているのに見たことなかった。彼女の特集で見るつもりでチケット買っていたの。 英語題は“The Blue Angel“、邦題は『嘆きの天使』。

原作はハインリッヒ・マンの『ウィンラート教授』(1905)。Dietrichの名を世界的にした1本とか、主題歌の"Falling in Love Again (Can't Help It)”とか、ドイツ表現主義からナチス台頭期に向かうアートのある種の典型を見ることができるとか、いろいろ。なんで見てなかったんだろ。

ワイマール期ドイツのギムナジウムの教授のImmanuel Rath (Emil Jannings)は堅物で厳格で生徒からも嫌われているのだが、生徒から取り上げた女性の絵葉書 - ひらひらが付いてて息を吹きかけるとスカートがまくれる - を見て、学生がこんなものに入り浸っているのであれば、抗議しに行かなければ(勿論それだけではない揺らぎもある)、ってキャバレー“The Blue Angel“に乗り込んでいくのだが、見るのも聞くのも初めての世界で混乱し、そこで見つけた学生を追いかけているうち、楽屋裏で看板娘のLola Lola (Marlene Dietrich)に出会って、彼女に話しかけられたり着替えを見ちゃったりしたら動揺して、その晩は帰るのだがコートに生徒が忍ばせた彼女の下着が入っていて、うむむむって翌日にそれを返しに行った彼はLola Lolaと一晩そこで過ごすことになる。その翌日に学校に戻ると教室は教授を揶揄するしょうもない落書きでいっぱいで、彼の威厳も居場所も消え失せていた。

こうしてギムナジウムを辞めちゃったRathはキャバレーに行って、Lola Lolaにプロポーズしたら彼女はあら嬉しい、ってあっさり結婚してくれるのだが、でも結婚しても彼にドサ回り一座での居場所はなくて、テーブルを回って地味に絵葉書を売ったり、一座のピエロになって笑い者にされるくらいしかできず、それでも使えねー奴、ってみんなに言われて扱われて屈辱にまみれ、他方でLola Lolaは変わらず人気者なので嫉妬にもまみれてゆっくりと正気を失っていく。

最後はふたりが出会った”The Blue Angel”での公演で、地元の学生とかもみんなやってくるのだが、それ故にRathにはここ数年の後悔と共に蘇ってくるものがあって、更には舞台袖で筋肉男といちゃいちゃしているLola Lolaから目を離すことができずに舞台上で固まってしまい、やがてその火山が大噴火して… (そうなることは彼の目をみたらじゅうぶんわかるのでああーって)

何度見ても恐ろしくて目が離せなくて震えてしまうサイレント時代の”The Last Laugh” (1924)のEmil Janningsが、あれと同じくらい恐ろしくて怖くてかわいそうな役を演じていて、これはMarlene DietrichというよりEmil Janningsの映画だよねえ、と思った。 Marlene Dietrichもよいのだが、ファム・ファタールと言うほどの篭った毒気はなくってさばさばした気さくなお姐さんてかんじだし、なんで彼女があんな簡単にRathと結婚しちゃったのかよくわかんないし、自分で穴掘って自滅していく哀れなRathの物語と見るのが正しいのではないか。

ラスト、ギムナジウムの教壇にがっちりしがみついた状態で絶命しているRathが哀れでかわいそうなのだが、世の中の受け止め方としては、"Falling in Love Again”て歌われたくらいでぼーっと舞いあがってしまった世間知らずのおじさんの自業自得、になってしまうのだろうか。  ナチスの治世に向かう前夜の頽廃、って、絵画だと腐って捩れて破廉恥な都市の男女の姿がよく描かれているが、それを市民社会に持ってきたら例えばこんなふう - 学はいらなくて色と金 - だったのかもしれない、とか。 

あと、The Blue Angelの内部のどうなっているかわからない構造がおもしろいのと、扉の開閉で音が聞こえたり聞こえなくなったり、ってサイレント以降を意識しているんだよね?

あと、"Falling in Love Again”ってずっとKevin Ayersの歌だと思っていたわ。

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