3.24.2021

[film] La belle de nuit (1934)

3月13日、土曜日の晩、MoMAのVirtual Screeningで見ました。
宣伝文句を見ていたらなんか見たくなってしまったのでメンバーになった。待ってろMoMA。
MoMAのフィルム部門っていろいろすごいんだから。3日くらい漬かって過ごせるんだから。

長編を2作残しただけ(iMDBにはもう1本あるけど)というLouis Valray (1896–1972) のことはまったく知らなくて、屋外で撮影したり制作から編集まで自分でやっていた、という点でヌーヴェル・ヴァーグのの先駆(いっぱいいる先駆)であり失われた作家のひとりである、とPaul Vecchialiが言っているというのも後で知った。数年前に彼の作品に出合って魅せられたLobster FilmsのSerge Brombergが修復に着手して、昨年のMoMAの”To Save and Project” – 修復された映画のお祭り – すごく楽しいので大好き – で上映された、と。 ストリーミングで見た画質はすばらしかった。

“La belle de nuit”は米国で公開された形跡がないらしく原題のみ。翻訳にかけると”The night beauty”。
パリの劇場で人気女優となったMaryse (Vera Korène)を誇らしく見つめる劇作家のClaude (Aimé Clariond)がいて、ふたりは恋人で一緒に暮らしている。ある日彼の戦友のJean (Jacques Dumesnil)が戻ってきたのでMaryseも加えて一緒に再会の食事をして、JeanはMaryseのことが気になって近寄っていって誘惑して、やがて嘘の電話を入れて朝帰りしたMaryseの嘘が明らかになるとClaudeは絶望してひとり南の港町に旅立つ。

そこの路地裏の酒場/娼館(のようなホテル)でMaryseによく似た娼婦のMaïthé (Vera Korène – 二役)と出会ったClaudeは彼女とある取引をしてパリに戻り、Jeanに引き合わせる – とJeanは見事にはまって寄っていって、Maïthéに高価な贈り物をしたり舞いあがるのだが、Maïthéは突然姿を消してしまい...   

前半の彼女がいる部屋を覗き見る目線のなんともいえないいやらしさと、そこから後半のダークなノワール風への転調がよくて、鏡をうまく使った部屋へのアプローチと港町の路地からバーに至る寂れた雰囲気がすばらしい。そしてラストに港からひとり旅立つMaïthéを見あげるようなショットがかっこいいったらないの。 つくづく男ってバカでしょうもないわねー、っていうお話し。


Escale (1935)

3月14日、日曜日の晩、同じくMoMAのVirtualで。英語題は“Thirteen Days of Love”。米国での公開時には酷評されたらしい。

海軍士官のJean (Pierre Nay)は途中下車(Escale)した町のバーでEva (Colette Darfeuil)と親しくなってそのまま恋におちて、休暇に入ったJeanはEvaを連れて南の島に向かって、ふたりは一緒に夢のような13日間(タイトルによると)を過ごすのだが、Evaにつきまとっていた港のちんぴらやくざDario (Samson Fainsilber)が黙っちゃいなくて、Jeanが軍に戻った隙になんとか彼女を見つけ出し、召使のZama (Francois “Féral” Benga)を利用して..   

最後はとても哀しくかわいそうに終わってしまって、ここでも南国の陽光と儚く潰された恋の周囲をちらつく闇の交錯が生々しく、ほんの少しのすれ違いとかけ違いで離れ離れになってしまったふたりが最後の方で互いを探しまわるシーンのカメラの動きがとても切ない。

キャラクター設定はくっきりしていて、やくざなDarioのぎらりとした南方の悪い奴なかんじがよいのと、従順でなにも考えていなそうなZama役のFéral BengaはJosephine Bakerとも共演したことがあるダンサーで人気のモデルだったそう(映画の中での描写のされかたは時代もあるのだろうがなかなかひどいけど)。

どちらの映画も男性は頭からっぽかすけべか嫉妬深くて狡猾か、そういう連中になっていて、彼らにまんまと利用されつつもどうにか自分の道を見いだそうとする女性がたどる試練や悲劇へと至る道、という点は共通している気がした。どうしても女性の方に目がいってしまう、そういう描き方をしているような。

この2作を見ただけでものすごい傑作であるLouis Valrayすごい、って騒ぐほどフランス映画史に精通していないのだが、でも2作ともふつうに面白くて、こういうのがいくらでも出てくるからやめられない。小説もそうだけど自分が生まれていない時代の、異国で編まれた物語をなんでこんなにのめりこんで見てしまうのか。いや、それだからいっぱい見るし読むのだし、ってぐるぐる回っていく。いつものように。


英国では最初のロックダウン開始から今日で1年、ということでこれまでに亡くなった126,284人と600万人の遺族の方々に向けてお昼に黙祷があった。お祈りくらいしかできないのでひたすら祈る。

日本でのコロナ患者や死者の扱いを見ていると国全体での黙祷なんてしそうにないよね。
というか、ここ数日のアカデミアのハラスメントやニュース番組のCMの件で、ほんとにますます嫌になっている。なにあれ? 明確なハラスメントや差別を後ろに追いやってないことにしようとする勢力が学会とかメディアに一定数いる。学校の虐めなんてなくなるわけないわ。絶望的、まっくら。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。