2.07.2021

[film] The Mirror Has Two Faces (1996)

1月31日、日曜日の昼間にCriterion Channelで見ました。1月末で見れなくなるBarbra Streisand監督作品の2つめ。彼女の監督としては今のところ最後の1本。 邦題は『マンハッタン・ラプソディ』… 2時間超えのRom-com。
フランス映画 - “Le Miroir à deux faces” (1958) - 未見 - を緩く翻案したものであるそう。

コロンビア大学の数学の教授Greg (Jeff Bridges)は、業績は立派で講義にも生徒は集まってくるのだが、女性が苦手で自著の出版記念講演でも元カノが現れただけで動揺してパニックになって、いいかげんそういうのを克服すべく、TVでやってるエスコートサービスに電話してどうしたらいいのか相談してみると、広告でも出してみたら? って言われたので、こちらコロンビアの教授(男) - 共通の関心とゴールを共にできる女性求む - Ph.D.持ちで35歳以上で外見は問わない(.. おいおい)、とかいう広告を出す。

同じくコロンビアの英文学の教授Rose (Barbra Streisand)は、マンハッタンのウェストエンドのアパートに母のHannah (Lauren Bacall)と暮らしていて、妹のClaire (Mimi Rogers)とAlex (Pierce Brosnan)の結婚式に出席した際、自分はもうこのまま結婚しなくてもいいのかも、って言いながらも、自分のことを本当に理解してくれるパートナーがいたらねえ、とも思っている。

Gregの広告を見たClaireがRoseに無断で返事を出して、それを受けたGregは気になってRoseの講義に出てみたら、生徒でいっぱいの会場で、なんでも肉体的な関係が優先されるのなんて間違っている!とかやっているので感銘を受けて(彼はここまでで講義から出てしまうのだが、この講義の結論はそうではない、というのが後で効いてくるの)、彼女を食事に誘って、キスをするのすらぎこちないデートが始まるのだが、会話は楽しく盛りあがるし、実際に一緒にいて楽しいからGregはプロポーズして、ふたりはCity Hallで地味に結婚する。

尊敬と友情に基づいた肉体関係なしのふたりの結婚生活は円満で、そこそこ楽しく進んでいくのだが、ある日、自分はやっぱりセックスしたいので今晩しよう、とRoseが宣言して彼に覆いかぶさってきたのでGregは撥ね退けて、あきれたRoseは家に戻ってしまう。 会話が楽しいのはいいけど、やっぱり自分は愛したいし愛されたいし、そのために美しくありたいし、それがおかしいことだとは思えない - このテーマを巡って実家に戻ったRoseと母Hannahとの美を巡る対話がすばらしいの。Lauren Bacallがそのまま喋っているみたい - 食事の内容を変えてエクササイズをして髪型も体型も普段の服も変えて、ヨーロッパから戻ってきたGregを驚かせて…

なんだかんだ言っても間抜けで愚かなのは男Gregの方なので、あとは後悔して反省して彼女への愛に目覚めたGregがどう出るか、Roseがいかに勝利するかで、それは夜明けのマンハッタンの通りで、トゥーランドットの愛のテーマが高らかに鳴り響くなか..

愛とか美とか結婚についての極めて本質的な議論が為される教育的な内容 - それ自体はまったく間違っているとは思わない - の映画なのだが、そのやりとりをする二人がコロンビア大学の、それぞれに実績があるらしい教授ふたりで、いくら文系 vs. 理系だからと言っても喋ったり書いたりが仕事なんだから互いの知力を尽くして徹底的に議論すればよかったのに、とは思った。結局すべてを見越していちばん賢かったのはLauren Bacallだった、でいいのか。

下の”What Happened Was…” (1994)にもあったような互いの体に触れずにどこまでがんばれるのか、とか、恋愛か友情か、みたいな議論を、やっぱりセックスでいいんじゃないか、それのどこがいけないのか、って女性の側から思いっきり吹っきってしまったのが”Sex and the City” (1996-)で、SATCについては、リブートを機にこの角度から再考してみるのもおもしろいのではないか。

あと、この映画が扱っているテーマ、大半の「男」は自分には関係ないやって思ってしまう気がする。Barbraが全ての女性に対して贈るメッセージのようなところもあるので、それでいいのかもだけど、それじゃだめなのではないか。”What Happened Was…”もそうだったけど、男性が見るか女性が見るかによって受け取り方が異なるであろうテーマで、男性の方にしか響かない(or まったく響かない)なにかをどうやったら伝えたり変えたりしていけるのか、って。 ”The Mirror Has Two Faces”にも諸相ある。

あと、Gregの役って、キャラクターとして結構繊細さが要求されると思うんだけどJeff Bridgesってちょっと違うよね。彼って無反省に愚直に信念を貫く、みたいなタイプで、それよりは最初に名前が挙がっていたHarrison Ford とかの方がまだ..  とか。

ここで吹っきれてしまったBarbraは、性の求道者として“Meet the Fockers” (2004)に再登場することになるの。道としてまったくブレていない。

音楽はBarbra Streisand and Bryan AdamsのデュエットとかRichard Marxとか… 恐竜みたいな。


ロンドンのお天気は火曜日まで雪マークが付いているが、ちっとも信用していない。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。