2.09.2021

[film] Baby Done (2020)

2月1日、月曜日の晩、BFI Playerで見ました。
ニュージーランドのコメディで、Taika Waititiがプロデュースしている。脚本は女優のSophie Hendersonさん。

樹木医のZoe (Rose Matafeo)はパートナーのTim (Matthew Lewis)と一緒にトラックに乗って木々の間を飛び回っている日々で、Zoeは木登りの世界大会に出ることを目指していて、友人のBaby Showerのパーティとかに行っても子供持つなんてありえねえわー、って言っているのだが、ある日木から落ちて、検査してみたら自分が妊娠していることがわかって、どうしよう… になる。

子供は欲しくない、いらない(断定)のではなく、子供の出現によって自分の描いていた夢とか計画がどうなってしまうのか、更には、親になった自分というものが想像つかない、わからない、という恐怖と、とりあえず木登りの世界大会にはなんとしても出たいし、という思惑でひたすら行動が怪しくなっていくZoeと、そんな彼女の様子から妊娠に気付いてパニックして、輪をかけておかしくなっていくTimの姿を描く。

キャラクターとしてはZoeが豪快なお姐さん肌なのに対してTimはぼんくらナイーブで、Zoeが無謀に適当に彼方にぶん投げてしまうあれこれを必死で拾ってくっついていこうとして却って墓穴を掘って嵌って、一緒に出なければいけないもうじき親になるふたりのためのワークショップもTimひとりで出て浮きまくったり。

タイトルは冒頭のパーティに出た時に彼らがいう“Married, House, Baby, Done.”から来ていて、要するに、結婚して - 家もって - 子供もって - おわり(あがり)になってしまうような人生のお決まりコースをあーやだやだよう、って嘆き畏れる目線と態度なのだが、それが洒落じゃなくなってきて、それでもとにかくバンクーバーの世界大会だけは出たい、出るからな、の方に想いが突っ走っていって、Timは置いていかれて、ひとりで航空券を手に空港に向かったZoeはチェックインカウンターで「お客様失礼ですが..?」って訊かれて「失礼な(怒)!」って突破して機内までいくのだがそこで動けなくなって…

思いもよらなかった妊娠が(どちらかというと)男の側にもたらす衝撃とじたばたを描いたコメディとしては”Knocked Up” (2007)があって、あれは数々の無計画と思考停止が組み合わさって引き起こされる笑いが中心で、女性の側からのだと”Juno” (2007)があって(どちらも2007年というのは偶然?)、これはまだ高校生だしどうするよ? っていうお話しで、今作はどちらも共通の仕事(樹木医)と目的をもってなんとかやってきた彼女と彼に突然降ってきた妊娠、というより彼方よりやってくるであろう子供がふたりの今後になにをもたらすことになるのか、を結構具体的に – 妊婦グッズとかワークショップとか、所謂妊活のなんだそれ? も含めて - 描いている。子供ができたらこんなことやる/こんなふうになるのか、みたいにいちいちぶつかってくるあれこれが驚嘆と共に綴られていて、なんじゃこれは? っていうお笑い が。

こういうのって、なんだかんだいっても赤ちゃんがやってくることはすばらしいよありがとうー(泣)みたいな方に行きがちな気がするのだが、この作品はそれはそれ、のように軽く流して、あくまでもふたりが想像もしていなかった溝に嵌ってじたばたする様に集中していて、それが結果的に“Married, House, Baby, Done.”のお決まりを転覆しようとする、その絶妙な軽さがすばらしい。

Lena DunhamやAmy Schumerの「それがなにか?」のふてぶてしさと重心を湛えてのしのし堂々と歩きまわるRose Matafeoのぶっとさと、Harry Potterの最後のやつで横から出てきてVoldemortの蛇をぶった切ってしまう(あのシーン好き)Neville - Matthew Lewisのコンビの楽しいことったらない。

この分野のコメディとしてはJohn Hughesの”She's Having a Baby” (1988)が大好きで、公開された時に2回くらい見たのだけど、これ、今見たらどう思うだろうなー、って。

日本に来たら不謹慎ではないか、ってコメントが吹きそうな気がする(偏見)。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。