2.11.2021

[film] L'arbre, le maire et la médiathèque (1993)

2月3日、水曜日の晩、アメリカのMUBIで見ました。MUBIでÉric Rohmerを見ていくシリーズ。

英語題は”The Tree, the Mayor and the Mediatheque”、邦題は『木と市長と文化会館/または七つの偶然』。Rohmerの政治劇とか言われているが本当にそうなのか?

冒頭、小学校でMarc (Fabrice Luchini)が子供達に”If”で代表される従属副詞節の使い方について教えている。自転車に乗りたいというとき - “If” 天気がよければー、みたいなやつ。 そこから、”If”で始まる7章 – 「七つの偶然」-「もしxxがyyだったら…」が織りなす物語がさらさら流れていく。

フランスの田舎の市長Julien (Pascal Greggory)が恋人の小説家Bérénice (Arielle Dombasle)を連れて村を案内している。七面鳥がいて、りんごとか梨とかレタスが生えて、牛にはパセリをあげたり羊もいるし。とても素敵なところで彼はこの村をとても愛していることがわかるのだが、あと10年もすればみんな家で働くようになって職人の数は減っていくだろう、でもいろんな人に出会ったり話すことは大切だし、パリよりもこういう土地の方がそういう可能性に溢れている。だから – ここ=原っぱの真ん中に文化施設(メディアテーク) - ライブラリがあってギャラリーがあってフェスとかもできるような - を建てようと思うんだ、って。

そこには国政選挙の結果を受けた政治家Julienの思惑とかアピールもあるわけだが、Julienが建築家と進めていくその計画に対して、この風景 - 建築現場には大きな一本の白柳の木がある - を壊すなんてありえないとNO! を表明したのがMarc (Fabrice Luchini)で、そこにパリのジャーナリストのBlandine (Clémentine Amouroux)も加わってこの計画について、村の将来についての議論がドキュメンタリーのような画面構成でなされていく。

そこには男性と男性の対話で共和制の時代からの歴史を踏まえた革新と保守、リアリズムを巡る堂々巡りがあり、女性と女性の対話でチェルノブイリやエコロジーやCO2問題も含めた環境に関する懸念が表明され、市民に対するインタビュー - この村はよくなってきているか、これからどうなっていくと思うか、等があり、そう簡単に「結論」なんて出そうにないことが見えたところで、Julienの計画を批判するBlandineの記事が雑誌に出て..

それでも計画は計画で市長として粛々とやっていくから、と進んでいくところで自転車に乗ってきたMarcの娘とボールで遊んでいたJulienの娘が出会って – ここ『レネットとミラベル 四つの冒険』 (1987)のふたりの出会いのよう –  翌日Julienに紹介されたMarcの娘はメディアテークなんていらない、あるものを使えばいいし、ここを町にしたいのならまずは人が寄り集まる公園を作るべき、ってよいことを言うのだが、Julienはやらしい大人の態度たっぷりのやなかんじで相手をする。

結局計画は資金不足で頓挫してしまうのだが、これについての教訓とか格言は特になくて、学校のMarcやJulienやBéréniceや村の合唱団がそれぞれの立場で歓喜の歌や反省の歌を朗々と歌って、歴史っていうのはそれらの歌が重なってできていったもので、それがちゃんとしたハーモニーになっていたらメディアテークはできていたかもしれないねー、くらい。 結局なるようにしかならない、みたいなことしか言っていないのかもしれないけど、どんなもんでも振り返ってみればその程度のもんで、だからといって政治から遠ざかるのは別で、あるべき姿や理想について語ったり貼ったりしておくことって絶対に大切だし必要なのではないか、って。

で、ここまでくるとこのお話って彼の恋物語の語り口と似ていることに気付かないだろうか。『美しき結婚』(1982)とか『友だちの恋人』(1987)にあったような割と自信のある女性が永遠かつ最適のなにかを求めながらもいろんな条件とかタイミングで手元からするりと逃してしまうあれらの。

これはもちろんフィクションだし、役者たちもそういう動きをするのだが、編集しなおしたらFrederick Wisemanのドキュメンタリーみたいになりそうな気がする。

あと、こういう政治とか決定の場における男女の役割差みたいなところは割と意図的に(戯画化して)描いている気がする。

いまアメリカのMUBIでは“Bérénice” (1954)や“La sonate à Kreutzer” (1956)といったRohmerの初期の短編も見ることができる。 前者はEdgar Allan Poeの、後者はLeo Tolstoyの原作で、Rohmer自身が主演していて、結構怖いの。 サイコホラーの主人公で、最後に屋根裏で半狂乱状態で発見されていたりしそうな。


怖いといえば、昨日から始まったトランプの弾劾裁判を横目で見たりしているのだが、証拠として提出されてくる暴動現場の映像が本当に恐ろしい。 そして、これを壇上やTwitterから煽っている(ように見せているのだとしても、あのタイミングであんなことを言っている)元大統領はさらに恐ろしい。こんなの弾劾どころかはっきりと牢獄行きではないのか。 あと、直接の関係はないけどTwitter社の対応の遅さもー。 人が何人も亡くなっているんだよ。

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