2.26.2021

[film] I Care A Lot (2020)

2月20日、土曜日の晩、Amazon Primeで見ました。
英国ではAmazonでAmazon Originalと出るのだが、米国ではNetflixで見れるそうで、どっちなのかしらん。

Marla (Rosamund Pike)が介護施設に入れられた自分の母親と面会できない、と文句を言っている男と法廷で対決するシーンが冒頭。歳を取ってすごく衰弱しているわけではないが、認知症の兆候が見られる老人を病院が指名して、裁判所がそれを受けて法定後見人をアサインすると、それ以降は老人は後見人の許可なしには、家族であっても面会することすらできない。このケースでは後見人がちゃんと面倒を見ているから問題ないはず、とその息子は退けられる。

Marlaはそんな後見人を抱える会社のエージェントで、オフィスの壁には彼女が「後見」している老人の写真が並べて貼ってある。彼女は病院の医師と介護施設とつるんで、ターゲットになりそうな老人 - 経済的に裕福で、独り暮らしで家族や身寄りが余りいない – をピックアップすると医師に診断書を書いてもらって裁判所に持っていって、ターゲットを自分の保護下にするCourt Orderを出してもらって施設に収容する(携帯も家の鍵も全部没収)と、空いた家に入っていって財産を横流しする、そういうビジネスをやっていて、これだけで震撼する。リスクは被後見人が高齢なので亡くなってしまうこととか。

彼女が新たなターゲットとして見つけたのがJennifer Peterson (Dianne Wiest)で、金融機関に勤めていた独身の女性で一軒家に暮らして身寄りもないらしい。早速医師が痴呆の兆候が見られる、って嘘.. とも言い切れない診断書を用意して、Marlaと相棒のFran (Eiza González)が彼女の家を訪ねて、半信半疑の彼女を半ば強引に施設に連れて行って一丁あがり。没収した鍵でその家を捜索すると絵画 – トレチャコフ美術館の『忘れえぬ女』がオークションに..   - や宝石類がじゃらじゃらで、更に銀行の貸金庫に行ってみたらダイヤモンドの粒粒が..  

他方で、毎週Jenniferのところに高級車に乗ってマカロンを携えて面会にきていた男 - Roman Lunyov (Peter Dinklage)が彼女の不在と異変に気付いて、最初に弁護士 (Chris Messina)をMarlaのところに送って彼女をリリースしないと大変なことになるぞ、って脅迫して、それでも彼女たちが動かないと今度は介護施設に数人送りこんで強引に連れ出そうとして銃撃戦になる。

さすがにこれは..  ってなったMarlaはJenniferをより厳重な施設に移した上であれこれ調べてみるとRomanはアンタッチャブルなロシアマフィアの黒幕で、Jenniferは彼の母で、とうの昔に亡くなっている米国市民になりすましていた相当やばい母と息子であることがわかって、怒りに震えるRoman一家は当然MarlaとFranのところに押し寄せてくる。

悪いことをやっている連中が更に輪をかけて悪い連中を引っかけてしまって大変なことになる、という犯罪劇なのだが、彼らの悪さ以上に最初の方で明らかになるケア産業の構造のどす黒さに凍りついて以降の印象がやや薄まってしまったのが残念かも。

Steven Soderberghの”Unsane” (2018)とかもそうだったけど、いったんああいう施設に収容されちゃったら、あとは連中の思いのままで、騒げば騒ぐほど監視下に置かれてどうとでもされ放題で逃げられなくなる。”Unsane”は精神病(ではないケース)で病院側もおかしかったのだが、これは介護・ヘルスケア周辺で、一見だれもどこもおかしくない - 幸せになるんだから、ケアしてあげるんだから - ように見えてしまうところがこわい。 ビジネスとしても成功モデルだからこれからも伸びるよ、って。

I Care A Lot - because you have enough money and I want your money.  
という標語の元で形成されていく社会格差のありようとか。
 
これって”Parasite” (2019)がやっているのと同じようなことを企業体が高齢化社会に向かってやっているのだと思った。 し、邪魔になった老親をこんなふうに体裁よく施設に捨てる話はじゅうぶん現実になっていると思うし。 今だと、不謹慎だけど、コロナ陽性を理由に施設に入れてしまうとか。
 
Rosamund Pikeの絶対めげない、つーんとした硬質の悪っぷりは - “Gone Girl” (2014)以来かしら? - 見事でかっこいいのだが、あのラストはどうなのかなあ。なんか中途半端だよねえ。
あと、ふだんはふんわりしたお婆さん役が多い気がするDianne Wiestが一瞬凄まじい殺気を見せるのだが、できれば彼女とRosamund Pikeの直接対決が見たかったかも。


スウエーデンの女性画家 - Hilma af Klint (1862-1944)のCatalogue Raisonnéの7冊本のうちの一冊 - The Blue Books (1906-1915) が届いてぱらぱら見ている。素敵ったらないわ。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。