5.14.2020

[film] The Whole Town's Talking (1935)

8日、金曜日(この日はBank Holidayでお休み)の昼間、Criterion Channelで見ました。
英国でのタイトルは“Passport to Fame”、邦題は『俺は善人だ』。めちゃくちゃおもしろいねえこれ。

広告会社で遅刻しないで皆勤していることだけが取り柄の真面目事務員のArthur (Edward G. Robinson)が目覚まし時計の故障で遅刻して唯一の取り柄を失ってしまうのが冒頭で、その日新聞を賑わせていたのが凶悪な"Killer" Mannion (Edward G. Robinson – 二役)の脱獄の件で懸賞金がかけられてて、その写真を見た同僚がこれ、Arthurにそっくりじゃね?って、本人も否定できないくらいなのだが、そのまま町を出たら彼を見た市民が通報して警察に引っ立てられ、一緒にいた同僚のBill (Jean Arthur)も捕まって、なんとか誤解は解けるものの紛らわしいので「わたしはMannionではありません」パスポートを持たされることになる。

釈放されて戻ったら新聞でArthurのことを知ったMannionが彼の部屋でおっかない顔で待ってて、パスポートをよこせ、って夜間の出入り用に持って行っちゃって朝になると返す(夜が明けるとその間に彼の起こした事件が.. )。気弱なArthurは震えあがって、でもなんもできなくて、でもそのうちArthurが今回の件についてコメントする新聞記事が警察とMannionの両方に疑念を巻き起こして、MannionはArthurの周りのBillとかおばさんとかを人質にして、警察は銀行に包囲網敷いて、どっちがどっちだの大騒ぎに発展していくの。

ふつうだと凶悪犯と瓜二つだったが故に事件に巻き込まれてしまう男の不条理悲喜劇(悲惨なのは当人のみ)、になるのだろうし、Edward G. Robinsonの雰囲気や顔の造作はもろにこのダブルA面(or B面?)ドラマにはまっているのだが、ここでおもしろいのが会社なんていつだって辞めてやるわよ、ってやたら威勢のいいBill姐さんと、逆に会社の仕事さえしてくれればそれ以外のことはどうでもいい、のArthurの堅物上司と懸賞金欲しさにArthur/Mannionを追っかけまわす市民とかが、(彼らの素性故に)いちいち場面場面に挟まって絡まって、しつこく引っ掻きまわすのでどっちに転ぶかはらはらしっぱなしで、結果的にはスラップスティック・コメディみたいになっているの。その時にEdward G. Robinsonはどっち側のどんな顔をするのか。

ドラマとしておもしろいのは、ArthurとMannion、このそっくりな二人が衝突してとってもやばい事態になったとしても、それは起こるべくして起こっただけで、まんなかの二人も周囲の連中もその挙動振るまいを何一つ変えないところ。Mannionは凶悪犯のまま、Arthurは生真面目会社員のまま、彼らの周囲の連中もそのまま、それぞれの役割に忠実に立ちまわって動いているだけで落語のように冗談のように事件は解決してしまう。こういうドラマに求められる主人公の一念発起とか勇気をだして一か八かの瞬間は最後まで訪れないの。唯一あるとしたらArthurとBillのロマンスか。 まるで手品みたいなの。なんだこれ? って。

これと同じような設定のどたばたドラマ/コメディって他にもあるのだろうけど、いっこ思いだしたのが”Desperately Seeking Susan” (1985) - 『マドンナのスーザンを探して』。これは日常にうんざりした主婦(Rosanna Arquette)が新聞の尋ね人欄を通してちょっと首突っこんでスーザンになりすましてみたら巻きこまれてぜんぜん関係ないのにえらい目にあって、でも結果めでたしめでたしになるやつ。

いまCriterion Channelに入っているJohn Ford - あと2つ?  もっと見なきゃ。


店先に白アスパラがでて、さくらんぼがでて、アプリコットがでて、桃がでて、とうもろこしがでてきた。 毎日八百屋に行っているとわかるの。 当たり前かもだけど、なんか得意になるの。(会社いきたくないらしい)

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