5.19.2020

[film] Talentime (2009)

12日、火曜日の晩、日本の「仮設の映画館」の中にあるジャック&ベティ(もう何年も行っていない。行きたいなー)で見ました。

日本でもいろいろ見放題のサイトが出てきていて、そりゃ見たいのはてんこ盛りなのだが、そこまで手を伸ばしていたら時間がいくらあっても足らないのでここしばらくは自分がお世話になった欧米の映画館の支援(一日一本、週末は二本)に集中したい、けどこれだけは見ておきたかった。 邦題は『タレンタイム~優しい歌』。マレーシア映画。

生徒も先生もいろんなのがいそうな学校(高校?)で、毎年卒業前に行われる音楽コンクール「タレンタイム」 - Talent + Timeのマレーシア英語 - の7回目、まずは7人のファイナリストを選ぶオーディションが行われる。このオーディションだけで十分におもしろくて1時間くらいやってほしいのだが、ここで7人が決まり、本番までのリハーサルの間、彼らを送迎するために7人の生徒が選ばれる。

映画はここでファイナリストに選ばれたピアノの弾き語りをするMelur (Pamela Chong)、ギターをじゃかじゃか鳴らして歌って楽しいHafiz  (Mohd Syafie Naswip)、Melurの送迎係になったMahesh (Mahesh Jug al Kishor)とタレンタイム本番まで – リハーサルの期間中に起こるそれぞれの家族のいろんなことを綴っていく。

いつも送迎してくれてありがとうだけどあんたなんで口きいてくれないのよ! で始まった口のきけないMaheshとMelurの恋はそれぞれの家族の違い - いつも賑やかで幸せそうな大家族のなかにいるMelurと母の手ひとつで苦労してきたのであれこれに厳しくて辛いMahesh - を乗り越えてどうなっていくのか。あと成績優秀でひょうきんだけど病院で寝たきりの母を看病しているHafizの親子も。

いろんなところに苦しみや悲しみがある。結婚が叶わないままずっと相手のことを想って独身を通し、やっと結婚することになったら事故で亡くなってしまうMaheshの叔父さんとか、同様にずっとパパを想っているMaheshのママとか、病で苦しむHafizのママとか、楽しそうなMelurの家族のなかで孤独を抱える中国人メイドとか、彼らの苦しみは、なんでこの想いはあの人に伝わらないんだろう? なんでこの痛みは消えてくれないでずっとあるの? どうしてくれるの?  ってひとりひとりの応えのない問い(相手は死んじゃったりしているから)に収斂していって溶けてなくなることはない。苦しみは止まない。まだリハーサルの間だというのにさ。 多宗教、多言語の国で、そのために宗教はあるのだろうしそれぞれ信じている神様もいるのだろうが、それらを通した救いや効能が描かれることはなくて、一緒にいようとかひとつになろうとか臭いことも言わなくて、でも、最後にタレンタイムの発表会がきて歌が。

もちろん歌も音楽も救いになるわけではないし、せっかくの大舞台なのにMelurは歌えなくなってしまうのだが、でも歌は空の上にまで届いてそこにあるの – だから優しい歌。

という誰にも等しく降り注ぐ歌の下によい意味でばらけたいろんな顔がある。笑う顔、おちゃらけた顔、がっかりの顔、心配する顔、怒った顔、泣いた顔、そして人を好きになった顔。それらの顔の集成がタレンタイム、なの。 (自分にとっては)久々で懐かしいアジアの映画の湿り気、そこに浮かびあがるいろんな表情が繊細にとらえられていて、いいなー、ってそればかりだった。 どれも/だれもがみんな”Appropriate Behaviour” なの。

宗教は関係ないみたい、と思ったけど車椅子にのったおっさんと公園であそんでいる子供たち、あれって神様と天使たちだし、叔父さんの結婚式前のやりとりの構図は宗教画、だよね。

いまって誰に対しても優しくならなきゃいけない時だと思っていて、そういう時にこの映画はとってもよいの。(そういう時にまったくしょうもないことしかしないどっかの国の政府はMaheshのママにぼこぼこに叩かれてほしい)

ヨークシャー訛りのMelurのおばあちゃん素敵。


暑さが戻ってきて午後の遅くには25度くらいまでいくようになって、外に出るとなんかの綿毛がいっぱい飛んでいる。なんの綿毛なんだか。 綿毛いいなー。(どこかに飛んでいきたいらしい)

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