5.11.2020

[film] The Booksellers (2019)

2日、土曜日の晩、Film at Lincoln Center’s Virtual Cinemaで見ました。VPNで繋いだらすぐ見たかったやつ。
フィルムとしてどうとか、どうでもいいの。本と本屋とNY(と猫)が好きであれば涎垂らして見ているうちに終わってしまう99分のドキュメンタリー。語りはParker Poseyさん(制作も)。

昔はマンハッタンのそこらじゅうにあった書店(昔の書店はぜんぶインディペンデント書店だったの)が90年代から大規模チェーン店の登場で刈り取られ、更にAmazonの登場で物理書店も不要となり、デジタル化の波で紙の本ですらなくて済むようになってきて、こんなふうに何年かおきに本の、書店の危機が言われてきてこれからも言われるだろうけど、それでも本とか本屋って必要なやつなのかしら?

そんなの必要に決まってるだろこれを見てみ、っていうのがこの映画で、うんべつに本とかいらないかも、っていう人は見なくていいの。

最初にPark Avenue Armory(ぼろくてでっかいホール。ライブもある)で 行われるNYC Antiquarian Book Fairの様子を映しだす。日本の古書市と同じように各古書店がブースを設営して売っていくとこで、ここで問題とすべきなのは獲物を漁りにくるコレクター(こいつらはどっちにしても死滅しない)ではなくて、そこに店を出しにくるBooksellerの方なの。店頭で本を売る場所も機会も理由も失われつつある今、アンチークみたいな古書を売りにでるってなんかあるの?どういうことなの?  ていう辺りをBooksellerという商売の面白さ難しさという点から掘る、というより大昔からある本という紙束が持ついろんな魅力を中心に語っていく。誰も店の自慢とか宣伝しないの。本がどんなに素敵で厄介な困ったやつか、こいつらのせいでこんなことになっちまったぜ、って楽しそうに言うの。

オブジェとして本を捉えれば革装の豪華本とかアンチークみたいな側面もないことはないけど、まず本って、ページをめくってそこに書かれているものを読んではじめて本になる、っていうのと、前の所有者もそれを読んでページを追ったり書き込みしたり、当時の書評の切り抜きが挟まっていたり - 読み継がれてきた、ことを知るっていうのもある。 中古レコードも似たところはあるけど、本みたいに「継いでいく」感覚ってあんまないかも。60年代のアイランドレーベルの1stプレスとか、そりゃ欲しいけど、それがどういう音なのか元の曲を知っていればおおよそのイメージはできるし、でもきちんと知るにはそれなりの機材揃えないとだし面倒だけど、本は文章を追う目とページをめくる指とカニくらいの脳みそがあればなんとかなりそうだし。

本ていうのには他の収集嗜好品と比べるとやや特殊なところがいろいろあって、少なくとも自分はそれらにはまってしまったので売ってますー  将来? わかんねー(笑)みたいな人たちがいっぱいで安心する。なんでNYなのか、は昔から橋を渡って人が沢山集まって移動してモノが落ちていく、そういうところだろうか。これが西海岸だとやや事情が異なってくる気がする(車移動が必須、とかね)。

映画に登場する本屋ではArgosy Book StoreとSkyline Booksかなあ。Argosyは90年代に住んでいたアパートの並びだったので何回か入ったけど、当時はまだそんなに興味なかったしとっても敷居高いかんじがしたし。この他にもちっちゃくて素敵なの(名前思い出せない)はいっぱいあった。

わたしが古本にはまった(なんてまだとても言えないけど)のはロンドンに来てからで、レコード盤の世界が箱とか180gとかそんなのばかりでいいかげん重くなってきたし、英国でこれにはまると生きて帰れなくなる気がしてきたのと、本なら小さいのもあるし滞在していた記念になるかも、程度だったのだが、そろそろとてもそんなこと言えない事態になりつつあるかも。だって見たことないいろんなのがいっぱいあるんだも(殴)。

映画にも出てくるけど、20年代30年代のダストジャケットの本て表紙の絵とかその刷り具合とか擦れて掠れた紙のかんじとかタイポグラフィとか素敵なのが多くて、めくっていくのが快楽なの。あと映画のなかで実演してくれる紙カバーに被せるビニールのカバー、あのかんじも好きで、でも自分でできるもんじゃないのね。

自分は売り手でもコレクターでもないけど、それでも古本の – ひとはなんでああいうのを集めてしまうのか - はなんとなくわかるかんじに作られているかも。 あと直接触れられていなかったと思うが、ひとはなんであれらを積んで(さらに変なひとは歓んで)しまうのか?  実はこの重力にならって/抗して「積める」っていう要素がデジタルにはない重要なパートなのではないか。 だから得意になれるってもんではまったくないのだが。

オープニングとエンディングに登場するFran Lebowitzさんがいつものように最高。本を借りるのって好きじゃないのよね。読み始めると熱狂して返したくなくなっちゃうし、人に貸したやつはちゃんと返ってきたためしがないし。うんうん。

いまは本屋に行けない悶々した日々のなかにあるので、見てて余計に恋しく狂おしくなって、やばい。 店が開いたら錯乱してとんでもないことをしてしまう気がする。(まだ先みたい。期待しない)

でっかい本棚ほしいなー。


昨日、日曜日の午後にBorisが解除のための大枠の指針みたいのを出して、みんなでなに言ってるのかわかんねー、ってなって、今日の午後には具体的なガイドラインみたいのが出たのだが、これはこれで細かすぎてわかんないの。なぜそうする必要があるのか、の背後に具体的なデータもあるのでちゃんと読めばわかるんだと思う。「絆」とか言わないだけまだましよね。

例えば本屋はいつ開くんだ? とか言っても、そこに行くまでの経路はOKなのかとか、従業員のひとは来て働ける状態なのかとか、いろんな事情や機会の組み合わせで見る必要があって、ああ日々の社会活動ってこうしたいろんなことの連なりからなっているのだわ、って改めて思って、それらを振り返るのは決して悪いことではないの。 自粛なんて思考停止と封じ込め以外のなにものでもない。

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