5.20.2020

[film] It Felt Like Love (2013)

13日、水曜日の晩、アメリカのMUBIで見ました。
新作”Never Rarely Sometimes Always” (2020) – VODではもう見れるのね - が話題のEliza Hittman監督のデビュー作。

冒頭、波立つ海に向かって立っているLila (Gina Piersanti)の後ろ姿がすばらしい。波がどどーんてうねって鳴って”Quadrophenia” (1979) 並みに鮮烈で。(あの映画は"Love, Reign o'er Me"だった。こっちは”It Felt Like Love”)

Lilaがこちらを振り向くと顔に塗った日焼け止めのだんだらが白い子供のようで(実際に子供で)、一緒に浜辺にきたChiara (Giovanna Salimeni)とそのBFは彼女の前でずーっとべたべたいちゃいちゃしていて、あたしもなんとかしなきゃ、って(言葉には出さないけど)思いつめてて、Chiaraと一瞬じゃれていた大学生のSammy (Ronen Rubinstein)のところに行って、なめられたくないから表面はつーんとしながら暇だし遊んであげるわよ、みたいなふりをするのだが裏ではどきどきで、そんな彼女のひと夏の冒険。

ブルックリンの外れの住宅や通りの寂れてぎすぎすしたかんじと、ママはいなくてもっさりしたパパとよくできた弟がいて、なにもかもぱっとしないのだが家にいるのは嫌なのでとにかく外にでていって誰かと会ったり、ダンスの練習 - ぜんぜんだめっぽい - に励んだり。

SammyにもChiaraにもLilaの背伸びとか困惑は見透かされて、でもLilaもなんとか意地張りたくて引かないのでSammyの仲間のちんぴらとかやばい連中がなあなあ寄ってきたり、パーティではげろげろになったり誰もがどこかで覚えのありそうな若者のある夏が描写されるのだが、それが至近距離(うんわかるわかるよ)でもなく遠く(あーあなんてバカな娘)でもない距離から捉えられていて、よいの。 ”It Felt Like Love”について「それはLoveだ」とも「そんなのLoveじゃない」とも言わない優しさと慎ましさがあるの。

Lilaがコニーアイランドの観覧車に乗るシーンがあって、これは深く考えず(知らず)に乗るとものすごく怖くて死ぬかと思う(ほんとに。乗ってみ)やつなのだが、彼女はぼーっとつまんなそうな顔をしているのでこいつただものじゃないと思った。

続けて同様に夏の水際でばしゃばしゃする子供達の映画をもう一本。


Transnistra (2019)

16日、土曜日の晩、これもアメリカのMUBIで見ました。
これも女性監督Anna Ebornのデビュー作で、16mmによる撮影も女性。

トランスニストリアっていうのはモルドバの東の川とウクライナの国境のところにあるロシア域の小さな未承認国家で、その地名がそのままタイトルになっている。未承認の国でぼんやりと夏から冬を過ごす若者達のお話し。一応登場する若者たちの名前は本名(ファーストネームのみ)に近いみたいだしドキュメンタリーと分類されているのだが、あるテーマを掘りさげてドキュメントする、というより川や野原で遊んだり廃墟でうだうだしたり、彼らの「なにもしないをする」日々のスケッチ。

出てくるのは16歳のTanyaと他同い年くらいの男子5名で、ばしゃばしゃ泳いだり石を投げたりじゃれあったり見つめ合ったり、誰と誰が好きになったとかできたとかこんどやるとか別れたとか、とにかくすることがなくて、カメラに映っていないところでは「あーつまんねー」「なにするどーする?」を軽く500回くらい言い合っているような、野良猫たち野良犬たちの日々を追っているような。それでも十分におもしろい。本人たちはまったくそう思っていないだろうが。

他には目が不自由で就業資格なしと言われた男の子のこれからどうするんだろう.. とか、Tanyaの家には母親とよくできた弟がいて、弟は(あんな小さいのに..)勇ましく国軍に入隊して家を出て、最後の方ではTanyaも町を出て旅立つ支度をしてて、季節はもう冬なの。

Apichatpong Weerasethakulがアドバイザーとして参加した“Hale County This Morning, This Evening” (2018)にも少し近いかんじ。田舎の孤絶や貧困を「問題」として露わにするのではなく、そこにいる人たちの眼差し、息遣い、家とか部屋に差し込む朝夕の光とかを通して、いるんだよ、って。

アヒルとかねずみ(でっかい)とかカエルとか、動物も出てきてよいの。


夏の日々が始まったようで、午前中は10℃台で寒いくらいなのだが午後になるとあがってきて、15時くらいに25℃くらいまでいって、なんもやるきなくなる。冷房なんてないし。 これが水曜日で、水曜日にこれがくるということの意味、というのはあって、これが木曜日とか金曜日だったらまだなんとか持ちこたえよう、って思うのだが、水曜日にこれはいけない -  これは水曜日病と呼ばれる例の。

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