5.16.2020

[film] The Strange Love of Martha Ivers (1946)

9日、日曜日の昼間、アメリカのMUBIで見ました。邦題は『呪いの血』… いやいやいやこれホラーじゃないし極上のノワールだし。すごくおもしろいから。 脚本はRobert Rossen。

1928年、ペンシルベニアのIverstownていう町で、13歳のMartha IversとSam Mastersonが列車に隠れてどこかに逃げようとしていて、でも捕まってしまったMarthaは厳格で意地悪な伯母とWalter O'Neil親子の館に連れ戻される。激しい雷雨の晩で、館にMarthaを奪い返しにきたSamと伯母とMarthaの喧嘩と停電の闇が重なったとき、伯母は階段から転げ落ちて死んじゃって、ちょうどSamが去って扉がばたばたしていたので犯人がそこから逃げたのを見ました.. ってMarthaが言うと、Walter Jr. もそれに合わせて、やってきたWalter Sr. はではそういうことにして、これ以上のことは一切言わないように、と子供たちに告げる。

時は流れて1946年、大きくなってちょっとやくざのSam (Van Heflin) がIverstownの近くを移動中に事故にあって車を修理に出して、それが戻ってくるまでの間、懐かしい町じゃねえか、って思っているとちょっと困って途方に暮れている女性Toni (Lizabeth Scott)と出会ってホテルの部屋とか世話してあげて、でも彼女は執行猶予中の身だったので拘束されちゃって、そういえば、って昔馴染みで地方議員になっているWalter (Kirk Douglas) - Walter Sr. は既に死亡 - のところに顔を出して彼女をなんとかしてくれないか、って頼む。

WalterとMartha (Barbara Stanwyck)は結婚して(Walter Sr.によって結婚させられて)いて、でも二人の間の愛はとうに冷めたのか初めからなかったのかWalterは酒浸りで、Walterは28年の伯母の事件のことでSamが彼らを脅迫にきた(事件は別の犯人をたてて解決済みなのだがSamは真相を知っているから)のだと思って裏でいろいろ手を回し、その反対側でMarthaとSamはかつての絆を思いだして取り戻して仲良くなり、その様子を見たWalterは嫉妬に狂ってSamをぼこぼこにして町の外れに放り出し、でもそんなので引きさがるようなSamじゃなかったの。

18年前の事件で、大人達によって大きく狂わされた運命と将来を引きずって未だにぐだぐだの男と女(いちおう夫婦)と、そこに18年前と同じように割り込んできた幼馴染の男、彼が拾った薄幸の女、ヒエラルキーを巡る諦めと執着、再燃した愛と積もり積もった憎しみ、しがらみからの自由への希求 - などなどがいり乱れる四つ巴のドラマで、どうやって決着つけるんだろ、とはらはらして見ていると、やっぱしあれしかないのか..  って。

大人になってから土地の名士として君臨するMartha - Barbara Stanwyckさまと彼女を慕いつつも相手にされないので卑屈になっていくばかりのWalter - Kirk Douglas - これがスクリーンデビュー - のガリ勉へなちょこぶりと、気立てはいいけど怒らせたら怖いぎらっとした流れ者のSam - Van Heflin、これ以上失うものは何もないToni - Lizabeth Scott、全員が見事なくらいその場所から逃れられない、留まらざるを得ないものの哀しみと苛立ちを抱えてどうしようもないくらいそこにいる。
でも全体としてはやはりこれはMartha Iversの魂の軌跡 - “The Strange Love” のお話なのだと思って、彼女を演じられるのはBarbara Stanwyckさま以外に考えられない。

今なら軽くシリーズドラマ化できそうな濃さとヴォリュームだと思うのだが、よく116分に収めたもんだわ。


ロンドンのロックダウンも一部緩和に向かっているようなので、どんなもんかと思って久々にピカデリーの方に行ってみた。 地下鉄もバスもまだがらがらで、街中も一ヶ月前より少しだけ人が出ていた程度。 店が開けば人もやって来るのかしら? まだちょっとイメージできないねえ。

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