4.02.2021

[film] Felkészülés meghatározatlan ideig tartó együttlétre (2020)

3月27日、土曜日の昼にCurzon Home Cinemaで見ました。

ハンガリーのLili Horvátが作/監督したハンガリー映画で、本選のノミネーションからは外れてしまったがハンガリーから今年のオスカーにエントリーされた作品。  英語題は“Preparations to Be Together for an Unknown Period of Time”。

冒頭にSylvia Plathの”Mad Girl's Love Song”の最後の一節がまるごと引用されている。

わたしはかわりに雷鳥を愛するべきだった。
少なくとも春になれば彼らは轟音とともに戻ってきてくれる。
わたしが目を閉じれば世界はみんな死んでしまう。
(わたしは頭のなかできみを作ったのだとおもう)

優秀な神経外科医のMárta (Natasa Stork)が20年ぶりにアメリカからブダペストに戻ってくる。 理由はニュージャージーの医学のコンベンションで出会った同じハンガリー人のJános (Viktor Bodó)と恋におちて、彼と1ヶ月後の夕刻にブダペストのリバティ橋で再会する約束をしたから/したはず、なのに、彼は現れてくれなくて、大学にいる彼を捕まえると、あなたとはお会いしたことはないけど..  と言われる – ので彼女は卒倒する。

カメラはMártaに密着し、彼女の目線でふたりのニュージャージーでの出会いを何度も再生していくのだが、それは会って食事したり話し込んだりキスしたりした、という像ではなく、彼女が彼の姿をずっと見つめていた(彼とは目があったかも)、というくらいのそれなので、これは彼女の思い込みがドライブしているなにかなのではないかと思い、彼女自身も思い違いだったのかも、ってアメリカに帰国しようとするのだが、空港まで行って荷物チェックをくぐった直後に彼女に何かが走って、そのまま街に戻り、アパートを借りて、Jánosの勤務する大学病院に職を得て(彼女ほどのキャリアの人がなんでうちに?と言われる)、彼のことを追っかけ始める。(コメディになってもおかしくないのだが、そっちには向かわない)

大学病院側では突然アメリカから現れた女医によい顔をしないのだが、彼女は淡々とクールでそんなことに構っている場合ではなくて、むしろ職場のあちこちに現れるJánosにどきどきしたり、手術をした患者の息子で医学生のAlex (Benett Vilmányi)に求愛されたりいろいろ大変で、とにかく彼女はJánosに近づくこと、彼と親密になることしか考えていなくて、自分が正気ではなくなっていることも十分認識している。

途中から彼女が精神分析を受けているシーンも入ってくるので、彼女はなにかをやらかしてしまったのか、と思うのだが、簡単にその地点には飛ばずに、彼女の強い思いがそう見せているのか、Jánosの何かが彼女にそう見せているのかを明確に示さず、恋と呼んでいいものかもわからない錯乱した状態にある彼女にとって、このめくるめく世界がどんなふうに見えて推移していくのかを丁寧に追っていく – それはまさに”Preparations to Be Together for an Unknown Period of Time” – まだ見えていない時間に向かって一緒になるための準備 - としかいいようのない思考、というか挙動の総体で、それは神経外科医の彼女であっても解きほぐすことができないようなものらしい。

やがてMártaの手術しているところに突然助手としてJánosが現れたり、同僚としてMártaに話しかけてきたり、作家でもある彼の本の出版記念パーティに行って話したり、彼を追って家まで行ったら娘が出てきたり、そうなってもそれが本当に起こっていることなのか疑わしい、カメラはどこまでもそういう夢のなかの出来事を追っているような動きを見せるし、彼女の表情はどこまでいっても硬いままだし。

これが延々続いた果てに、ああそこにいくのかー、ってなるラストがすごくいいので見てほしい。
恋ってこういうもんだし、っていうのと、映画っていうのはやっぱりこういう恋を描くものだったんだな、って。

昨年の1月に少しだけ滞在したブダペストの街がとても懐かしかった。アパートメントホテルもあんなかんじだったし、街灯の少し暗いかんじとかも。ロックダウンの前の旅の思い出はぜんぶ甘くてすてきだ。


月が替わったので書きますけど、5月に帰国することになりました。
ここ数ヶ月間、なにもかも嫌になっておちこんで、会社をやめる家をでる崖にむかう、そんなことばかり考えていたのだが(そういう時間だけはいっぱいある)、もういいや、って引っ越しの準備 - つまり持って帰るものをやけくそで買い漁るモードに切り替えた。 英国からだとスーツとか靴とか食器とかが多いらしいのだが、そんなの一切無視で、古い本とか新しい本とかでっかい本とか、そういうのばかり。オンラインは便利だなーちくしょうめ。 というわけなのでしばらく更新はちょこちょこ滞ることでしょう。

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