4.14.2021

[film] Days of Wine and Roses (1962)

4月5日、月曜日(イースターの休み)の昼、Criterion Channelで見ました。

邦題は『酒とバラの日々』。タイトルと冒頭に流れるHenry Manciniの主題歌からロマンチック(やや曇り)程度のを想像していたら後半に情け容赦ないどん底に突き落とされてしまう。 原作はJP Millerがテレビ用に書いた58年の脚本を書き直したもの。

サンフランシスコのPR会社の営業マンJoe (Jack Lemmon)はクライアントの秘書のKirsten (Lee Remick)と船上のパーティで出会って、営業の一環で彼女にも声を掛けてデートするようになる。初めのうちは硬くてつんけんしたかんじだった彼女もJoeがBrandy Alexanderとかを教えて楽しく話しかけていくうちにお酒の楽しさを知ったのかJoeが好きになったのか結婚することにして、造園業をしているKirsenの父Ellis (Brandy Alexander)のところに伝えにいくと、あまりよい顔をしないけどわかった、って。その後に娘のDebbieも生まれて、ここまでのふたりも家族もとても幸せそうに見える。

ふたりの飲酒はどんどん泥沼にはまっていって、Joeは業績不振で大手クライアントの担当を外されてそのまま会社を辞め職を転々としてガラスに映った浮浪者みたいな自分の姿に震え、ひとり家飲みをするようになったKristenはアパートで火事を起こしそうになり、やはりこれはいかん、とふたりはDebbieを連れてEllisのところに行って、彼の造園業を手伝うことにする。はじめのうちは力仕事は楽しいな、だったのが、ちょっとだけ息抜きしようか、って力仕事の後のお酒はおいしいな、になった途端、もっとよこせって我慢できなくなり自分が温室に隠しておいた酒瓶を探して売り物の植木をぐしゃぐしゃにして病院送りになる。

Joeはアルコール依存症のサナトリウムで拘束衣を着せられて担当のひとと沢山セッションをした結果、なんとか抜けることができたのだが、EllisによるとKirstenが家に帰ってこない、という。最後に2日間断酒してきたというKirstenがJoeと対面するのだが、自分は依存症ではない = 意思の力で止めようと思えば止められるのだ、というKristenと、いやそうなっていないではないか、というJoeは最後まで折り合わなくて …   最後に浮かんでいるバーのネオン(LIQUORS)がなかなか恐ろしい。JoeはKristenを追ってまた溺れていくのではないか、とか。

アルコール依存症の恐怖をふたつの側面から描いていて、ひとつは意識していないのに(自分では大丈夫だと思っていたのに)気がついたらそうなっていた、というのと、もうひとつはいつでも抜けられるはずだったのに抜けることができない、っていうのと、そんなのそこらの教科書にも書いてあることだけど、ここの場合、Joeは仕事を円滑に進めるために入った、っていうのと、その仕事の場でKristenに誘いをかけた、っていうのと、Kristenにとってのお酒はJoeが教えてくれて、Joeと一緒に家庭をつくる - そういう中ではまっていった、っていうのと、ふたりは愛しあっていてその関係をよくするためにもお酒は効いたよね、っていうふたりの内側にあるいろんな認識とか縛りが、互いに抜けられない穴を掘って互いを嵌めようとしている。

これだからこんなに怖いんですよ、っていうのは簡単でわかりやすいのだが、この作品ではそういう描き方をしていない。夫婦関係を維持していくというのは酒とバラの日々を生きることなのだ、それはドラッグと違って犯罪ではないし、時と場合によってすばらしい夢や歌をもたらしてくれるじゃないか、とか。 Joeは更生できそうだしさ、とか。 だからこそ怖いし、映画は道徳的なガイドにはなっていない。べつにそんなの求めていないのでいいけど。

お酒は少し舐めたら死んでしまうので、ふたりの境地とか、こないだのドキュメンタリー ”Bloody Nose, Empty Pockets” (2020)のような世界はたぶん永遠にわからないし到達できないのだが、やっぱり損しているのだろうか? 「損」とか言っちゃいけないのかな。

お酒が絡むやつで最近みたのは、”The Flight Attendant” (2020)っていうHBOの連続ドラマで、アル中のFlight Attendant (Kaley Cuoco)が、フライト先のバンコクで、ファーストに乗っていた客の男とデートして酔っ払ってホテルで朝に起きたらベッドで彼が首を切られて死んでいて、自分はなにも覚えていないから容疑者にされる可能性があって(というか、ファースト容疑者になって)、いろんな人や組織が絡んでくるのだが、やばくなったらウォッカをがぶ飲みすると頭が冴えて、死んだ彼の亡霊が現れてアドバイスをくれたりするの。例えばこんな使い方もある。  

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