4.22.2021

[film] Starlet (2012)

4月14日、水曜日の晩、アメリカのMUBIで見ました。
“The Florida Project” (2017)の、”Tangerine” (2015) – 未見 - のSean Baker監督作。日本はビデオスルーらしく、邦題は腹が立ったので書かない。酷すぎる。恥を知れ、だわ。

冒頭、ぼんやりしたベージュの壁紙のようなのと黄金の藁みたいのがちらちら映っていて、それが主人公Jane (Dree Hemingway)の部屋と寝起きでぼさぼさの彼女の髪の一部であることがわかる。彼女はカリフォルニアのサンフェルナンド・バレーで友人のMelissa (Stella Maeve)と彼女のBFのMikey (James Ransone) – ふたり共終日ビデオゲームばかりやっている - の家の一部屋にチワワのStarletと一緒に間借りしていて、なんも気にせずにぼさぼさの状態で起きあがるとそのまま外に出てヤードセールで買い物したりしている。

ある日、Janeが入口がぼうぼうの木で覆われた一軒家のヤードセールでおばあさんから魔法瓶を「返品不可だからね」って念を押されて買って、家で使おうとしたら瓶のなかから輪ゴムで丸く束ねられた$100札の塊がゴロゴロ出てきて、なにこれ? になる。 棚ぼたで使っちゃえ、って少し使ってみてからやはり気になったのかおばあさんのところに戻ると彼女はめちゃくちゃ不機嫌で返品できないって言っただろ、って扉をびしゃんて閉めて追っ払おうとする。その言い方やり方がなんか気になったので、スーパーの出口で彼女を待ち伏せして一緒に帰ったり、彼女が週末に通っている町のビンゴ場に出かけていったりする。

おばあさんの名前はSadie (Besedka Johnson)と言って、今は身寄りもなくギャンブラーだった夫に先立たれてからずっと一人で、というようなことを不機嫌の合間に目を合わせないでぽつぽつ喋ってくれるようになるのだが、魔法瓶のお金のことはどうやら全く記憶にないらしい。でもその件とは別にJaneとSadieはだんだん距離を縮めていって、Sadieが夫と行ったという廃墟になっている動物園に行ったり(このシーンすてき)、一緒にSadieがずっと憧れていたパリに行く計画を立てたり、互いに互いのことをどう、って言うわけではない/言うほどのものではない、茶飲み友達のような仲になっていく。

そんなことをやっているJaneはなにをしている人かというとポルノ女優で、撮影する場面も描かれたりするのだが、極めてクールにただのお仕事として淡々とやっていてスタッフからの評判もよくて、同居しているMelissaも同じプロダクションにいてこちらは態度が悪いってクビにされたりする。でもJaneがその仕事をしていることがSadieとの関係に絡んでくることはない。 せいぜいどちらも自由時間が沢山あって、その時間とそこでできることを楽しもうとしている、とかその程度。

そのうちにMelissaがJaneの(Sadieの)お金をたまたま見つけてしまったり、Starletと留守番をしていたSadieがStarletを見失って強い陽射しのなか泣きながら探しまわったり、いろんなことがあって、ふたりはそれぞれお互いに言えないことを抱えた離れられないふたりになっていくの。

“The Florida Project”でも描かれた、どうしようもないけどこれしかないのだ/これでいいのだ、っていう腐れ縁のツヤをもった輝きとその渦に見ている我々も巻きこまれていくのだが、あの映画がFlorida郊外の煤けた陽光に満ちていたのと同じように、この映画もカリフォルニアのからからした白い光に溢れていて、陰鬱な老後や先の見えない人生の暗さからは程遠い。その光と共にあれこれ忘れて真っ白になって構わないや、になりそうで、だからこのふたりはこんな仲になれたのかもしれない、とか。

でも、“The Florida Project”もそうだったけど、お願いだから犯罪とか事故に巻きこまれたりしないで(強い太陽が呼び込む邪悪ななにか、という妄想)、っていうところではらはら怖くてしてしょうがない。今回は特におばあさんと犬で、SadieだけじゃなくてチワワのStarletもおそらくしおしおの老犬みたいなので(かわいいけど)、突然倒れちゃったりしたら、という恐怖が隣り合わせで。

最後、ふたりはパリに向かうために空港に車を走らせる。この時点のふたりの想いはそれぞれに微妙で複雑で、でもなんかうまく言い出せなくて言葉少なくて、Sadieは彼女の亡夫の墓に寄ってほしい、って頼むの。ここでどんなことがあったか。このあとに二人はどうしたのか、とか。とてもよいエンディングだと思った。

Jane役のDree HemingwayさんはMariel Hemingwayの娘さんなのね。で、Sadie役のBesedka Johnsonさんはこれが映画初出演で、これ一本だけ撮って、2013年に亡くなっている…

音楽はぜんぜん知らない静かめのエレクトロみたいのが多くて悪くないのだが、今ならLana Del Reyあたりがとても合う気がする。


箱詰めの手前の、本棚の上とか手前に積みあがっている山を取り崩す作業に取り掛かって、こんなところにこんなものが、とか、これはどこで手に入れたのかしら、大会を始めている。このへんがまだ余裕で一番楽しくて、これが当日になると適当につっこみ始めてごめんもう二度と引っ越しなんてしないから、になるの。この二度としない、を何回やっていることか。
 

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