4.30.2021

[film] Conte d'été (1996)

4月19日、月曜日の晩、Film ForumのVirtualで見ました。
ロメールの四季の物語をリリース順に見ていくシリーズ。英語題は ”A Summer's Tale”、邦題は『夏物語』。

ロメール作品の中では最も個人的な内容で、若い頃にロメール本人に起こったことを題材にしている、のだそう。なので、ロメールの夏だというのに、主人公は若い男性なの。

物語の展開が日にちと曜日の日めくりで表示されていく。最初は7月17日の月曜日で、そこから8月の6日頃まで(どうでもよいけど、曜日と日付の前後が違ったりしていることがある - そんな時空のおはなし?)

若く物憂げなGaspard (Melvil Poupaud)がギターを抱えてブルターニュの海辺の町に降りたって、自分のではないらしいアパート - 壁にはピカソとOASISの” Definitely Maybe”のポスター - に入ってギターをつま弾いたり、カセットレコーダーに録音したり、そのまま退屈そうに町にでて、パンケーキ屋に入るとそこでウェイトレスをしているMargot (Amanda Langlet)が声をかけてくる。最初は適当に応じているのだが、浜辺でも一緒になって、互いにヒマだし会って一緒に散歩をしたりするようになる。

Gaspardは数学の修士を取ってこの休暇明けにはナントの方に仕事の研修に出る予定で、Margotはおばさんの店でバイトをしながら人類学の博士課程にいる学生で、遠くに想っている考古学者の彼がいて、Gaspardもここで落ち合うはずなのに連絡が行き違ったりでなかなか会えない(たぶん)恋人のLéna (Aurelia Nolin)がいるので、よいかんじになっても日々のお喋り相手から先に進むかんじはない。

やがてふたりで踊りにいった先ですれ違ったMargotの友人Solène (Gwenaëlle Simon) – Margotは彼女いいわよ、って勧める – と道端で会って仲良くなって、そのまま彼女の叔父さんの家に行って、でもはじめからセックスはしないと言われ、こんなふうに情熱的に振り回してくるSolèneからLénaかあたしかどっちか選べ、と強く言われた彼はSolèneを選んで、ふたりで遠出する約束をする。

そしたら突然Léna が現れて、彼女は彼女でGaspardはとっくに自分のものと思っているので、自信たっぷりに彼を誘ってきて、やっぱりSolèneのほうは諦めるか、になって..  こういうのが男女4人の間で高速回転するシーソーみたいにぎったんばったんと展開していく最後の数十分はなんかすごい。

こんなふうにそれぞれにタイプの違う女性たちの間で揺れ動く軟いGaspardの姿を描いて、男と女は友達になれるのか? とか、なんでその人じゃなきゃだめになるのか? とか、理想の恋人とはどういうの? とか、約束っていったいなに? とか、誰が誰にそれを問うているのか、その答えを出すのは誰なのか、とかいろんなのが夏場の潮風とか夕立のように適当に移ろったりこちらに降りかかってきたりする。

それにしても、いくらかつての自分の身に起こったこととはいえ、70代後半のじいさまが作る映画かよこれ、とは思う。よい意味で生々しくて瑞々しすぎるというか、50数年前にしでかしてしまった決断について未だにぐじぐじ引き摺っていたりするものなのか、とか。

「春」が哲学で、「冬」は演劇で、「夏」は音楽、だろうか。Gaspardがカセットに重ねていく自作の歌の他に、Margotと“Valparaiso”を歌うシーンが印象に残る。一緒に歌って歌声を重ねるみたいに恋が叶うのならこんな楽しく簡単なことはない〜、とか。

ぜんぜん思い切れずにうだうだで、人によっては引っ叩きたくなるであろう迷い犬のような主人公をMelvil Poupaudは極めて的確に演じていてすばらしいし、Margotを演じたAmanda Langletさんは『海辺のポーリーヌ』(1983) の海辺に戻ってきて全くブレていないかんじが素敵ったらない。

Gaspardって「夜のガスパール」から来ているのかと思ったら、セギュール伯爵夫人の小説 - “La Fortune de Gaspard” (1866) から来ているのだと。翻訳は出ていないみたいだけど読んでみたい。19世紀の女性が書いた若者のお話なのだとしたら、いろんな観点からおもしろいかも。

いつものロメールのように女性がまんなかにいる設定だったら、Gaspardはうじうじしているだけの情けない端役、として物語の初めの方で彼方にふっとんでしまっていたのではないかしら。


久々にオフィスに行って机の周辺を片付けて箱詰めしたりしていた。書類の積みあがりっぷりときたら壮観で、仕事のやつは目をあわせないように端からシュレッダー行きの大袋にばっさばさぶっこんでさよなら。 美術館とかBFIとかの送付先も会社の方にしていたのでそっちの積みあがりの方もすごくて、BFIからはなぜかDVDが3枚も届いていた(プレイヤーないのに)。ロックダウン直前のTime Out誌のその年(2020年)の夏のお楽しみ特集とか涙なしには目を通せないので、持ち帰ることにした。まったくねえ。

もう4月が終わってしまうって、いいかげんにしてほしい。もう時間が...

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