4.09.2021

[film] Cast a Dark Shadow (1955)

4月3日、土曜日の昼、Criterion Channelで見ました。
ここの特集で”Starring Dirk Bogarde”という特集が始まっていて、12本紹介されている。見たことあるのもあるけど、まずはこの作品あたりからー。

“Alfie” (1966)や”Educating Rita” (1983)のLewis Gilbertが監督して、Dirk Bogardeが主演したとっても英国っぽい白黒ノワールなのだが、日本公開はされていないのね。原作はJanet Greenによる舞台劇”Murder Mistaken”。

冒頭、遊園地のカートに乗ってお化け屋敷を抜けていくアトラクションにEdward (Dirk Bogarde)とMonica (Mona Washbourne)のふたりが乗っていて、暗闇のなかMonicaは怖がってはしゃいで大騒ぎなのだがEdwardはその横でやや苦い顔をしたりしている。見た目だとふたりの年齢は結構離れているようなので、親子かしら? と思うのだが、実は妻と夫のふたりで、EdwardはMonicaのことをとても大事そうにケアして家に帰ってからもお酒飲む?とかお茶は?タバコは? とかこまこま気遣って、やがて彼女が椅子でうとうとして動かなくなると、ガス暖炉の栓を開いて彼女をその脇に引き摺っていって横に寝かせると自分は外にでる - 家政婦には外出すると伝えてあった。

Monicaの死は事故(部屋を暖めようと暖炉に寄って栓を開いたところで寝こんでしまった)として片づけられるのだが、彼女のお抱え弁護士だったMortimer (Robert Flemyng)はEdwardのことをずっと怪しいと思ってMonicaに指導していて、彼女の死後、全ての遺産がEdwardの懐に行かない - 家以外の殆どの財産は彼女のたったひとりの親族である妹のDoraのところにいくのだ – その彼女はジャマイカにいるから残念でした、とEdwardに伝える。

しらばっくれつつもちぇ、ってなったEdwardが次に見つけてきた獲物はMonicaよりは少し若い裕福な未亡人(でもまだEdwardよりたっぷり年上)のFreda (Margaret Lockwood)で、バーでの出会いからなんとか結婚するところまでいくのだが、よいとこのお嬢さんではない彼女はお財布周りについてはなかなか難物で脇が硬くてちっとも言うことを聞いてくれない。初めからあんたのことは信用していないからね、ってつんけんしている。(それでも結婚するところはやや不思議)

そうしているうちに今度は馬術学校に通うために近辺の不動産を探しているCharlotte (Kay Walsh)と知り合って、昔不動産屋をやっていたEdwardは彼女に近づいてFredaの嫉妬心を煽って撹乱してやれ作戦に出てみるのだが、実はそれが誰かのめぐらせた別の罠で、このCharlotteこそMonicaの妹のDoraであることがわかって…  なんだかんだついてなくてかわいそう、って言いたくなる程度に割と間抜けなEdward..

例えば、Hitchcockの”Suspicion” (1941) - 疑念に取り憑かれた男女の視点と立場を逆転させてターゲットをシニアにしたらこんなふうになる(っていうのはやや褒めすぎか)。 Edwardは徹底して冷酷で知的な悪漢というよりは、やや考慮が足らなくて隙もたっぷりで特定の女性層には強くて(そう思いこんでいて)Monicaには悪いけど、FredaとCharlotteに出会ったのが運の尽きだった、なのだがそういう時の弱さ小狡さも包めてDirk Bogardeが投げてくる影の微妙さがよいの。悪に染まったり取り憑かれたりした男の闇の強さというよりは、そこで顕になってしまう弱さの方が際立ってしまう - そこに飛びこんでやられてしまう女のドラマもある。 映画はそこまで描ききれていないかんじはあるのだがー。

イギリスのこういうノワールって、気候とかお屋敷の構造とか使用人との関係とか階級とか、そういうのがぜんぶ絡まって互いのことをどこまでも信じることができない/信じようとしないどろどろ関係の下地がベースになっているのと、そういうのがあるが故に反射的に燃えあがって止まらない永遠の愛、みたいのもたまにある気がする。さっきからなにかを思い出そうとしているのだが出てこないのでもう寝る。

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