4.20.2021

[film] Conte d'hiver (1992)

4月11日、日曜日の昼、Film ForumのVirtualで見ました。
ロメールの「四季の物語」を順番に見ていくシリーズのふたつめ。英語題は”A Tale of Winter”、邦題は『冬物語』。

冒頭、盛夏のブルターニュの海岸でFélicie (Charlotte Véry)とCharles (Frédéric van den Driessche)がとても楽しそうにキスして抱きあって写真を撮って、などをしてて、別れ際に帰ったら手紙書くから会おう、ってFélicieに住所を貰ったりしている。

そこから5年後、12月14日 金曜日から新年にかけて、ベルヴィルで母 (Christiane Desbois)と、あの夏にCharlesの間にできた娘のElise (Ava Loraschi)と一緒に暮らすFélicieの日々を追っていく。Charlesからの手紙は結局届かないまま彼女はひとりでいるらしい。

彼女が勤務しているMaxence (Michel Voletti)の美容室に行くと、彼はここを畳んで彼の地元のヌヴェールに帰って店を開く予定だという。離婚協議していた妻とは話がついたので一緒に来ないか、というのでその週末にヌヴェールに行って準備中の店の場所をみて彼と過ごして行くことに決めて、並行して付き合っていた図書館司書のLoïc (Hervé Furic)にはさよなら、って告げて(”I like strong men, not bookworm”だって.. )、Eliseを連れてMaxenceのところに向かう。

のだが、行ってみると彼女たちの住むところは店の上階で落ち着かないし、開店直後のせいかMaxenceは慌しくてあまり相手をしてくれないし、そのくせ「マダム」って呼ばれてしまうし、Eliseはつまんなそうにしょんぼりしているので、結局3日くらいでパリに戻ってきてしまって、じゃあLoïcのところに戻るかというとそうでもなくて、(Loïcによれば)パスカルとかプラトンを経由して(そんな議論は知ったこっちゃないけど)わたしはやっぱりCharlesを待つのだ、現実的でないかもしれないけどそれしかできないのだ、と。

この後、Félicie はLoïcに誘われて町のシアターにシェイクスピアの『冬物語』を(やや渋々)見に行って、そこで5幕のハーマイオニーの彫像がかの「信じる力」によって動き出すところを目に涙を浮かべて見つめて、ああこれなんだわって感動していたら、やがてバスの向かいの席にCharlesを見つけてしまうという - しかも彼の隣には『緑の光線』(1986) のMarie RivièreがDora という名前でいたりする。(彼女はわかっているわよ、っていう顔をする - 気がした)

CharlesはDoraは恋人でもなんでもなくて、結婚もせずにずっとFélicieのことを思っていたというので結果はよかったよかったになるのだが、でもよかったねえ、のハッピーエンディングで締まる信じるものは救われるという諺とか格言のお話しではなくて、『美しき結婚』 (1982)のようにどこまでも理想の結婚相手を追い求めるのだ、という話でもなくて、彼女がCharlesとLoïcとMaxenceと付きあいつつもなぜCharlesのことをずっと、だったのかその理由がどう、ということでもなくて、彼女がそれを自分で決めて貫いたクリスマスと年の瀬、そこだけなのではないか、という気がした。

夏や春のイメージが多いロメールの映画のなかで、冬のというとやはり『モード家の一夜』(1968)が浮かんで、あれも運命的ななにかを強く信じる主人公のJean-Louis TrintignantがMaud (Françoise Fabian)とFrançoise (Marie-Christine Barrault)のふたりの女性の間で悩み、そこにキリスト教だのパスカルだのが絡んでくる話だった(気がする)。 こっちでは性別が変わって、子供のできる順番が違っていたり。

もういっこ、シェイクスピアの『冬物語』にあったメタシアター的な構造は、ここではFélicieと3人の男性とのそれぞれの関係のなかで、例えばクリスマスや新年を共に過ごす「家」とか「一家」のありようを対象化しているところに出てきているように思えた。それはやはり冬に起こること - ほんの暮れの2〜3週間の間に - で、そういうのの積み上げで世界は出来あがってきているのだ、って。

個人的にはFélicieに都合よく使われていた(ように見える)Loïcは幸せになれたのだろうか、っていうあたりが気になる。


18日の日曜日は、かつてない規模と重度の筋肉痛 - まだこんなに筋肉だの筋だのに覆われていたのか恥知らず! - で30分くらいかけて起きあがり、でも予約してあったので、館内ツアーを再開したShakespeare's Globeに行った。ここはオープンエアだからツアーができるのね。昨年こそは行って演劇見よう、って思っていたのに結局間に合わなかった… って泣いてもしょうがない。 まだ舞台には最後の公演「真夏の夜の夢」の飾りが残された状態で、ツアーそのものは約50分くらいにオリジナルのグローブ座の話から当時の観客のことからシェイクスピア演劇そのものにも触れ、舞台の上から上の方の椅子席まで連れていってくれて、すばらしくコンパクトにまとめられていたのでおすすめ。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。