4.25.2021

[log] St. Ives

もう自分に残された時間はあまりないので行きたいところに行っておかなきゃシリーズで、西の外れのSt. Ivesに行く。 ヴァージニア・ウルフの父親の別荘があって、夏の間、彼女はここで幸せな時間を過ごして『灯台へ』のモチーフも - Godrevy Lighthouseをはじめ、この土地のあれこれから作られているという。

ずっと行きたいな、とは思っていたのだが問題はやや遠いことで、ロンドンから電車で片道約5時間かかる。日帰りは無理かな、だったのだが帰りを夜行列車 - 夜22時に出ると朝5時にパディントン着 (行き帰りの時間差はわかんない考えない)にすれば行けそうであることがわかった。週末ぜんぶ使ってしまうのはあれなので金曜日に休んでしまえばいいや。

例によってお天気は気になったのだが、iPhoneの天気予報はこの一日ずっとイカの足みたいな模様がでていてよくわからなくて、でも天気図をみると変な前線もなさそうなので決行した。今回は海だし先週の丘みたいなこと- 体中ぼろぼろ-にはなるまい、と。

家をだいたい6時に出てパディントン発6:37の電車に乗る。この季節の車窓から、は本当に素敵で緑がぱりぱりしてきれいだし、羊羊羊 - いろんな羊 - 馬馬牛、のパレードなのだが原っぱを見ているとうさぎがぴょこぴょこしていたりキジみたいな変な鳥がいたり鹿が走っていったり、今回はロバもいたし。途中で干潟のようなのが現れてあらすてき、と思ったら海がどーん、てきたし、まったく飽きない。

この電車の終点は英国のいちばん西端の岬に近いところなのだが、St. Ivesはそこのひとつ手前で降りて2両編成のローカル線に乗り換えるの。ここでも海がでっかく見えてしかも遠くにいるやつはGodrevy Lighthouse ではないか。

降りて最初にいったのはヴァージニア・ウルフ(の父親の別荘)のTalland Houseで、もうとっくに人手に渡っていて改築中だったのだが高台に建っていて、彼女はあの窓からSt. Ives Bayを、Godrevy Lighthouse を眺めていたんだわ、って。

そこから町の方に降りて、その向こう - 北の反対側の海まで行ってみる。こちら側にはTateの分館のTate St. Ivesがあって開いていたら入って当然なのだが、いまはまだ。すごくかっこよい建物だった。

天気予報のイカの足マークはやはり風が強いという印だったかと気づく程度に風も陽射しも強くて、でも3年くらい前にGreenwichのNational Maritime Museumでみた英国のビーチ写真展に沢山あったいたように、ついたてをしてその中で読書をしている人たちがいっぱいいて微笑ましい。彼らはこんなふうに毎週通ってついたて立てて本を読んでいるんだろうな。

高台にあるSt Nicholas Chapelまで登ってしばらく大西洋も見納めかな、って海の向こうのアメリカのほうに手を振って、町の商店街を歩いてみる。建物も含めて小綺麗なお店が多くて住みやすそうで、ヨットハーバーはないけどサウサリートみたいなかんじかも。お店では当然にコーンウィールのスコーンとか粉ものお菓子がいっぱい並んでいてお昼につい買ってしまう - つい、って言わずにはいられない粉ものの魔力重力。

対岸の遠くに見えるGodrevyの方にも行きたくて、でも検索するとバスでは2時間とか出てしまうしUberもないのでタクシーを見つけて行ってもらうことにした。湾をぐるうっと回るので結構な距離だったが公園(National Trustのだった)の手前で降りてGodrevy Lighthouseの方を目指す。 風はこっちの方が強力で砂がばりばりなのと足元の岩場の岩も丸いのから尖ったのまでいろいろで、風で飛ばされないようにする - 何度か飛ばされたことあり - のと躓いて転ばないようにする - 極めて頻繁にすっ転ぶ - の両方に注意しながらそろそろ進む。でもさいあく、なんのガードもない崖から落っこちるかすっ転んで流血しながら海に落ちるか、その程度だろうし、それでもいいや、って。

フード越しのぼうぼうの風の音(吹きあげられた砂の音)と満ちてきているのか引いているのか波と岩場の間にたつ音が素敵ったらなくてぜんぜん飽きることがなくて、岩場で座ったまま1時間くらいぼーっとして崖の上の草のなかで1時間くらい寝ていた(よく寝る)。 少し離れた岩の向こうの海の間に岩のように見えたのが動いてきょろきょろして消えて、あとでこの辺にはGrey Seal - ハイイロアザラシが生息していることを知る。言ってくれたら1日粘ったのに。

本当は日没(20:30くらい)まで - 灯台が動き出すところを間近に見たかったのだが夕方に向かって寒さと風がきつくなってきたのと、灯台の灯りを見るのであれば、ヴァージニアが見たであろう距離から見るのが適切ではなかろうか、と思ったのでSt. Ivesの方に戻ることにして、砂浜を経由してバス停まで40分くらい歩いた。Sunset Surfingに向かう沢山の車とすれ違って、やっぱりサーフィンするのか、って。

St. Ivesの町に戻ったのは20時くらいで、寒くてへとへとで、でも食べ物屋はとうに閉まっていてハーバーで開いていたカウンターでFish & Chips(Halibutの)を買って、風が吹く店外で震えながら食べた(店内で食事はしてはいけないの)。揚げたてはとにかく、なんだっておいしい。

電車は21時半だったので、駅前のGodrevy Lighthouseが見えるところに座って灯台に灯りが点くのを待つ。日没を過ぎて相当暗くなっても光は来なくて、『緑の光線』(1986) のDelphineの気分で待って、光が見えたときには泣きそうだった。あんなに小さく光って、でも小さいから/小さくてもはっきりとわかる。それは360度回り続けていて、その様子はこちらにはわからない - こちらにずっと光が来ているわけではない。こちらから見るとゆっくりと同じリズムで明滅を繰り返している。でも間違いなくこちらに届いているなにかがいかに大切なものか、ということ。 波の押して引いての干満と同じように。

(よい灯りだったな、ってしみじみして、帰りの電車でTLみたら東京は消灯8時とかいうニュースでもちきりで、ばっかじゃねーの、って思った)

夜行列車は21:55発で05:07にパディントンに着くやつ。 寝台車もあるのだがそれは満員で取れなくて、あるのはふつうのリクライニングもしない椅子席で、西海岸から出張でNYに戻る時の飛行機便を思い出した(あれも夜22時発で朝の6時くらいに着いた。時差があったけど)。西海岸からの便の場合、エコノミー3席分を独占できるとそこに横になれて楽だったのだが、電車のは2席で、その幅は中途半端で不自然な格好で横になったり窓にずるっとなるしかなくて、でも疲れていたのか寝る → 体が痛くなって起きる → 姿勢を変えて寝る、を繰り返し、3回くらいへんな夢を見た。そうやって落ちて、最後に目が覚めたら周りに誰もいないので、え? って時計を見たら6:40だった。どっかの車庫に入っていたらどうしよう、って慌てて外にでたらいつものパディントン駅だった。 外の世界はみんな死滅していた.. でもよかったのにな。 それにしても到着して1時間半、寝ているやつは放っておくのね… 

iPhoneによると12.5マイル歩いて、131階分登り降りしたって。先週のがきつかったんだけどな.. ていうかもう懲りてあと3年は運動しないとか言ってたくせに。

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