4.21.2021

[film] The Frightened City (1961)

4月13日、火曜日の晩、Amazon Primeで見ました。

60年代初のロンドン – SOHOからWest Endの界隈でギャングが跋扈する地下世界を描いたBrit Noirの古典で、ジェームズ・ボンドになる前のSean Conneryが出ていることでも有名な作品。邦題は『殴り込み愚連隊』 - あんま殴り込まないし愚連隊でもないけど。

いろんなお店から用心棒代を定期的に頂戴して、これに従わないお店は嫌がらせでぐしゃぐしゃにする、っていうのを裏の生業にしているクラブオーナーのHarry (Alfred Marks)が、お金持の会計士Waldo Zhernikov (Herbert Lom)と組んで、更にきっちり儲けられるようにギャングのボス5人を集めてシンジケートを作ってそうやって得られた収入を均等分けにするビジネスを考えて、ギャングのボスたちは合意する。

もちろん警察もこの動きを感知して警部のSayers (John Gregson)を取り締まりにあたらせて、ギャング側でもムダなく動けるようにイキのいい若者Paddy Damion (Sean Connery)を雇って周辺の見回り立ち回りにあたらせる。PaddyはWaldoのオフィスにいた移民の女性Anya (Yvonne Romain)に惚れて..

ストーリーにうねりがあったり、でっかい激突の山場や凄惨な殺し合いがあったりするわけではなくて、オーソドックスなアンダーグラウンドのギャング vs. 警察の押して引いて群れて散ってを、スウィンギン・ロンドンの盛期へと向かうロンドンの盛り場の瞬きとそこに見え隠れするあれこれを、バーからクラブから路地裏からいろんな明るさと闇の間に浮かびあがらせる。ひとりひとりの俳優の顔つきも含めてとても後に残る。実際にこんな人達がうろうろしていたんだろうな、って既に知っている気がする顔たち。

Sean Conneryは表情の作り方とか余裕たっぷりのぴっかぴかに(もうヘアピースを付けているらしいが)出来あがっていて、女性に対する立ち回りも含めて既にじゅうぶん007ぽい。つまり007というのはこういうアンダーグラウンドから湧いてきたあんちゃんに先端のスーツと銃器類を持たせただけなのではないか、って。

ロンドンの繁華街のSOHOとかWest Endって映画ではいろんな描き方をされてきて、このエリアに根付くのはギャングとかやばいのばかりではなく、アートとかファッションとかゲイカルチャーとかカフェカルチャーとか、路地裏の、穴倉の奥の方から表通りのカジノとかクラブまで、その成り立ちと集まってくる人々に応じたいろんな表情があって(ということを見たり聞いたり読んだりして知った。これらを総合して解説した本ってあるのかしら?)、これらは当然他の都市や地域とは異なる独特の発展(と言ってよいのかどうか)をしてきている。それがその都市をそういうものとして形づくる。

以前、Michael Caineが彼のドキュメンタリー上映後のトークで、60年代初めのロンドンには本当になんでもあってやろうと思えばどんなことでもできたけど、それらをすべて潰してしまったのがドラッグの登場だった、と語っていたのを思いだしたり。

ノワール系の映画だと“The Naked City” (1948)のJules Dassinがあの映画の手口をロンドンに持ち込んでRichard Widmark主演で撮った“Night and the City” (1950) とその原作のGerald Kershによる小説(1938)を見たくて読みたい。“The Naked City”のNYがまだ微かに残っている(Criterion Channelに短編ドキュメンタリーがある)ように、“Night and the City”のロンドンもまだ辛うじて残っているらしい。スポーツ用品店とかスニーカー屋ばかりがなんであんなにいっぱいあるのか、とか少し疑問だけど。

でも最近の - Guy Ritchie以降というべきか - ロンドン(& 英国)を舞台にしたやくざ、ギャングものはなんかあまりに野卑で男臭くて、クラブでは必ずストロボがびかびかで音楽がどうどうやかましく鳴ってて、暴力描写も痛そうなのばかりだし、とても苦手なのだが、あれらってなんでみんな見たいの? とか。でもこれらも40-50年経てば、この時代の都市の記憶として語られることになったりするのだろうか。

昭和の時代のやくざ映画とかに記録されていた東京や大阪のネオン街や路地裏がいまどんなふうになっているのか、考えたくないくらい全てどこかに消えてしまって、そんな惨状なので後の時代の映画にはろくなのがない - 画面にばーんと出た瞬間にそれがどこの都市なのかわかんないのって、それだけでテンションが半減する気がする。

こんなふうに映画を見たり絵画や写真を見たりして、ロンドンを去りたくないようばっかりやり始めるの。NYから戻るときもそうで、これを続けていると何を見てもここやあそこを思い出してしょうもない、になる。

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