6.01.2020

[film] Never Rarely Sometimes Always (2020)

24日、日曜日の晩、ふつーのYouTubeでお金払って見ました。

こないだ見た“It Felt Like Love” (2013)のEliza Hittman監督の最新作。 *It Felt..*も決して明るいトーンの映画ではなかったが、これもまた、テーマも含めて重く、でも少女の後ろ姿を追っていくすばらしい少女映画 - Coming-of-Ageがあり、友情があり、ロードムービーでもあり - だと思った。

冒頭、学校の学芸会で、メイクをしてひとりギターでThe Exicitersの”He’s Got the Power”(この歌の歌詞を読むと..)を暗く歌うAutumn (Sidney Flanigan)がいて、客席のちょっとしたからかいで歌が止まってしまうほどぴりぴりしている。

17歳の彼女は妊娠しているようで、地元ペンシルベニアの田舎のクリニックに診察に行ってもそうだと診断されて、どんよりして薬飲んでも自分でお腹を叩いてもだめで、クリニックを再訪してやはり中絶したい、というと怖いビデオを見せられて親の同意も必要というので、こんな田舎ではだめだって、いとこのSkylar (Talia Ryder)と一緒にネットを調べて、そういうのを必要としないNYのクリニックまで旅をすることにする。ふたりでバイトしていたスーパーのレジのお金を少しくすねて。

バスを乗り換えてNYのPort Authorityに着いて、メトロカードを買って地下鉄に乗ってブルックリンのクリニックに行くと、その前には中絶反対派の人達がデモをやっていて、そこを抜けて診察を受けるとペンシルベニアで10週間と言われていたのが実は18週間で、これだと検査も含めて丸2日掛かるので明日また来るように言われて、ホテルに泊まることは想定していなかったのでダイナー 〜 チャイナタウンのゲーセン 〜 カフェと流れて夜を明かす。この辺はふたりにとって初めてとなるNYの街を彷徨い - でも内心はそれどころではないドキュメンタリーのように見えて、でもふたりは途中で折れないように手をとりあって行くの。

Autumnは終始どんより硬く無表情なのだが、唯一我慢できずに泣きだしてしまう箇所が、処置の前日の検査でカウンセラーの女性から質問を受けるところで、その内容が相手の男の挙動についての一連の質問 - 例えば「彼は嫌だと言っても強引にやろうとしますか?」とか - これの選択肢が四択の”Never” - “Rarely” - “Sometimes” - “Always” なの。 思い出したくもない男の行動についてはその暴力も含めて選択肢があるのに、わたしの今はこんななのか..  ってことだと思う。

予定が一日伸びてしまったことでお金がなくなり、行きのバスで声を掛けてきた青年のところに連絡してお金を貸して貰ったり、最後まではらはらしっぱなしだし、Autumnの表情も晴れることはないのだが、絶対に負けないふたりとか彼女の側に立ってくれるカウンセラーも含めて、そのテンションと情のバランスがすばらしい。

主人公の硬さ寡黙さが彼女の置かれた不条理と言ってよいくらいの悲惨な状況を暴いていく、という点でこないだの”The Assistant” (2019)と似ていないこともない。 ここでは彼女の受けた/受けている傷について処方箋や将来が示されるわけでもなく、相手のことを「こいつだ」と指し示すこともないのだが、徹底的に微細に詳細に彼女たちのありようを描くことで、これは暴力であり虐待であり差別であり人権の侵害であり、あってはいけないこと、なんとかしなければいけないことなのだ、と強く訴える。

こういうのって絶対に男性 - 性に関して小中学生並みに幼稚な成人男性 - に見せないといけないやつなんだけどどうしたらよいのか。

これが映画デビューとなるSidney FlaniganさんはSSWでもあるそうなのだが、今度は音楽も聴いてみたい。あと、Sharon Van Ettenさんが彼女のママ役で出ている。すんごく地味でわからなかったけど。

彼女たちが見せてくれるNYの風景は、これまでの映画で描かれたNYとはちょっと違って見える。例えばふたりが夜まですごすゲーセンで、鶏(ほんもの。生きてる)と○Xをやるゲームがあるのだが、あれほんとうにあるの? やってみたい。


5月が終わってしまって、明日から6人までは外で集まってもよいことになるみたい。よくわかんないけど。 そんなことよりアメリカのことが心配だわ。

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