6.07.2020

[film] The County (2019)

5月31日、日曜日の晩に、Cursor Home Cinemaで見ました。
アイスランド映画で、原題は”Héraðið” (.. 読めない)。
監督のGrímur Hákonarsonさんは日本でも公開されて見た記憶がある羊兄弟ドラマ - ”Rams” (2015)のひと。

ヨーロッパ(英国も)って農業もの、みたいなジャンルがあって、人里離れた田舎で酪農畜産農産業は過酷で先の見通しも暗くて、遠く孤立した人間関係のなかで貧困とか後継を巡るドラマが湧きあがってどうするどうなる? と。 どれだけデジタルだなんだって言っても、この部分は土とか生き物が相手なので太古から変わりようがない(変えてみせる、とかデジタルの連中は言うけど、みんな地獄に堕ちろ)ところは間違いなくあって、そのへんがおもしろいと思うの。

"Rams"は兄弟のお話だったが、これは夫婦と彼らの暮らすコミュニティ - The County(郡)のお話。

Inga (Arndís Hrönn Egilsdóttir) - 妻とReynir (Hinrik Ólafsson) - 夫の夫婦は、もう初老で子供達も成人していなくなって、ふたりで酪農をやっているのだが生活は楽ではなくて、朝から晩まで働きづめでもう3ヶ月も休暇を取っていない。Ingaは牛の出産でもなんでもひとりで淡々とこなすプロで、それにしてもこの状態はおかしいのではないか、と訴え、寡黙なReynirはそれを認めつつも黙々と仕事をこなして、でもなんか思い詰めているようにも見える。

そんなある晩、トラックを運転していたReynirがトラックごと崖の下に落ちて亡くなってしまい、事故なのか自殺なのかなんで..?   と途方に暮れているIngaに仕事仲間がReynirのやっていたことを打ち明けると..

Countyで農業をやっている人達はみんなCo-op(生協)に属していて、Co-opはメンバーからミルクや肉を買い上げることで安定的な市場を保証し、かわりにメンバーに飼料やローンを提供して、そういう堅めの縛り - 互助関係を維持しながら続いてきたのだが、でもCo-opの外に直接売りに出た方がもっとよい値段で売れるんじゃないか/買ってくれるんじゃないか、っていうのがここんとこIngaが思っていたことで、そこでReynirのやっていたことというのはー。

昔から継がれてきた経済共同体のありかたが、市場経済のオープン化だのなんだので保てなくなってきた時、旧体制はどんなふうにそれを維持しようとするのか、昔だとやくざの恐喝とか村八分とかそういう方に向かいがちだったお話は現代だともうちょっと内に篭って不透明になり、結果Ingaのたったひとりの戦い - Facebookにすべてをぶちまけて訴える - みたいなことになる。でもその辺ぜんぜん無理なくありそうな方に転がっていくので見ていて気持ち良いの。

これをもう少し過激に荒唐無稽に推し進めると“Woman at War“ (2018)みたいになるのかも。(これもアイスランド- ウクライナ映画だった)
こういうお話、にっぽんでもとってもありそうだけどなー、そうかー「民度」が高いからなー(恥)。

もういっこ、Ingaは80年代に野外フェスに行った話とかをブログにあげてて、夜中にそういう音楽(ぜんぜん聴いたことないや)をレコードで聴いたりしている。そんな彼女がひとりでああいう行動を起こすのはとってもよくわかることだし。

アメリカでリメイクするとしたらInga役はやはりFrances McDormandかなあ。


本日、Parliament Squareで行われたBlack Lives Matterのプロテストは、上空をぐるぐるしている低気圧による偏頭痛がひどかったので行くのを諦めて、家で今日が誕生日のChantal Akermanさんの映画を見たりしていた。 “Golden Eighties”と同時期に撮られたという”Family Business”とか、すごくおもしろいの。

明日は行きます。

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