6.04.2020

[film] Papicha (2019)

5月29日、金曜日の晩、Film at Lincoln CenterのVirtual Cinemaで見ました。
昨年のカンヌの「ある視点」部門にも出品されたアルジェリア – フランス映画。

“Based on the true event”と出て、本当だとしたら恐怖で震えるしかないが、それでも、それ故にすばらしい輝きを放つ女性映画。

90年代の終わり、アルジェリア内戦でイスラム武装集団によるテロが日常化していたアルジェリアで、女子大生のNedjma (Lyna Khoudri)と友達のWassila (Shirine Boutella)は夜中に女子寮を抜け出して馴染みの闇タクシーの中で着替えてメイクして検問にあったりはらはらしながらナイトクラブに行って、自分が作った服を売ったりしている。

寮の門番に融通してもらって戻ると寮にいる仲間のひとりは妊娠しちゃったけど親が決めた婚約者の子ではないのでやばい、とか、ひとりはカナダ大使館の門番の子と仲良くなってVISAを手に入れて高飛びしたい、とかいろいろ抱えていて、学内には厳格な風紀委員のような女子たちが巡回していて、ちょっとでも左寄りの授業をしていると乗りこんできて妨害したり大変そう。

Nedjmaは”Papicha” - アルジェ語のスラングで”Cool Girl”って呼ばれていて、ファッションデザイナーになることを夢見てずっとデッサンしたり布地を買いに行ったりしていて、状況がきつくても夢は絶対捨てない、って元気なのだが、自宅の前で大好きだった姉が殺されたり、何度もヒジャブ着用を強要されたり、布地を調達していたお店がヒジャブ専門店になってしまったり、寮の門番に犯されそうになったり、自分たちのショーのために準備していた服やミシンを風紀委員にずたずたに破壊されたり、あまりの惨状に … になってしまうのだが、それでも彼女と仲間たちは立ちあがって、手作りでショーの準備とリハーサル(モデルは仲間たち)を始めて、開催はぜったい許さぬ、っていう校長も説き伏せて、ようやく当日の晩を迎える。

つき合い始めた大学生の彼からこの国はもうだめだ、一緒にフランスに渡ろう、って誘われても、周囲の男子からも女子からもどれだけ呆れられて嫌われても、それでも私はこの国が好きだしここでやるんだ! ってNedjmaは強くて負けなくて、離れていた仲間も戻ってきてみんなで海にいってやるぞ! ってやるシーンはすばらしい、と同時に悲しくなる。

なんでここまで迫害されて辛い思いに曝されてしまうのか。べつに反政府組織で活動するとか、そういうのではないの、自分のデザインした服でもってみんなでファッションショーをやりたい、それだけなのになんで?  今アメリカや日本で起こっていることを追っていると根はおなじことなのかな、って。 自身や世間さまが設定した規範から外れて何かが行われてしまうことへの一貫した不寛容と排除と暴力。想像力と反省力の決定的な欠如。

でもファッションは – もちろん文学でも映画でも音楽でもアートでも – そういう闇とゴミを裂いて光を与えてくれるものだったはずだ(ヒジャブを強制させられるような社会では特に)、ということを改めて思い起こさせてくれて、手元にそれしかないのであればそこにすべてを託すだろう。 それは捨て身の、生き残るための最後の賭けで、政治もくそもないのだが、それ故に極めて政治的な挙動として、みる奴はみるだろう。

最後のほうは目を疑うくらい悲しいのだが、それでもNedjmaたちの強さと輝きの方がその上をいく。
いまも世界に数千万くらいはいる(もっとかな)はずのNedjmaに向けて放たれた強いメッセージだと思った。
Nedjmaとその仲間たち、みんな素敵で、”Mustang” (2015)のかんじもあるかも。

日本でも公開されますようにー。

揚げパンがおいしそうだった。


いきなり寒くなった。まだ木曜日..

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