6.24.2020

[film] Deux moi (2019)

18日、木曜日の晩、Lincoln CenterのVirtual Cinemaで見ました。
ここが毎年やっているシリーズ - ”Rendez-Vous with French Cinema”からの1本でこの日が最終日だったから。 英語題は”Someone, Somewhere”。なかなかおもしろかった。

パリで、オンライン通販の倉庫で働くRémy (François Civil)がいて、なんかの研究所に勤務しているMélanie (Ana Girardot) がいて、ふたり共シングルで、隣り合ったアパートに暮らしていて、フロアもだいたい同じで、仕事から帰ってくると別の建物の入り口から入って別のベランダから下の線路や電車を見下ろしてぼーっとしたりしてるのだが、まだ知り合いでもなんでもない。

Rémyは不眠症で仕事場ではロボットによる自動化が進んでいて、その流れにびくびくしていたらほうらやっぱりコールセンターの方に配置換えになって、彼女もいないけど別にどうでもいいかんじで、でも一応マッチングサイトには登録してみたり。 Mélanieは毎日ずっと眠くていくらでも寝れてしまうのが悩みで、研究所の仕事では規模大きめの発表会でのプレゼンを任されてちょっと緊張して、それにしてもこのまま前の恋を引きずっているのはよくないわ、ってマッチングサイトに登録して何人かと会ってみるのだがぜんぜん乗れないし続かないし。

こんなふうにあんまぱっとしないふたりがある日ぶつかって、なにかが回りだす(キラキラ)、っていうのがこういうドラマの定番だと思うのだが、このふたりについては本当に最後の最後のぎりぎり(残り3分くらい)までぶつからなくて、それぞれどんよりした状態でそれぞれ別々のセラピストのところに通って、そこでのセッションを通して彼らの過去が明らかになっていって、セラピストに言われるままに新たな出会いや機会を求めたりしてみて、でもだからといってそこでふたりを結びつける決定的な因子が見つかるわけではなく、でも近所のオリエンタル系食材店ではふたりとも同じような時刻に同じようなものを買っているし、Rémyがなんとなく貰ってしまった白猫(かわいい)は彼のとこからいなくなったあとにMélanieに拾われたりする。でも、そこまで行っても、物理的には割と近くにいるふたりが巡りあうことはない。

べつに意地悪をしているわけではなくて、そういうもんだよねふつう? ていう描きかたをしていて、それはいつか王子様がお姫様が..の甘い幻想を叩きつぶす、って程のもんでもなく、そんなに強く望んでいようがいまいがこの程度のものだからきっとなんとかなるんじゃないか、っていうその明るくも暗くもない見通しの立てかたがなんかよいの。で、その見通しを押し売りするわけでもなく天気予報みたいにパリの夕暮れの景色と一緒に示してくれる - Someone, Somewhere -  確率60%くらい?

ここで滲んで並べられるふたりの日々の暮らしって、日本の女性誌によく出ているパリの若者の暮らしとはぜーんぜん違うものすごく地味で色彩も奥行きもぺったんこのやつで、四六時中恋愛しているわけでもなくて、やはりこっちのがふつうな気がする。同様にこういうBoy Meets Girlもので元気を貰うとか、そういうのを期待したことはないのでこれはこれでとてもよいのだけど、でもやっぱり、最後はあの白猫が何やらしでかしてくれると思ったのになー。それすら甘いよ、ってことかなあ。

でも、くどいけど、こんなパリの恋物語だってあっていいはず。

Rémy役のFrançois Civilさんは4月に見た”Celle que vous croyez” (2019) - Who You Think I Am ではJuliette Binocheの若い恋人役をしていた人。SNSによく出てきそうな頼りない寂し犬系の人、というか。

すごくどうでもいいことだけど、ふたりが通う近所のオリエンタル系食材店で、お米を買うシーンがあって、店主がクリーミーなやつだったらUonumaのがいちばんだ、って薦める銘柄、こっちでいつも買ってるお米だった。あれを買っていると出会いがきたりするのかしら。


いよいよがーんとした夏日がきて、アパートにはエアコンなんてないので改めて戦慄した。この温度条件下で在宅勤務なんてできないわ(炎天下にプレハブで授業する小学生のイメージ)。でも同様に冷房のない地下鉄に乗って会社行くのもありえないわ。もうこの際こんな時だから夏休みを2ヶ月とかに..  

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