6.19.2020

[film] Babylon (1980)

14日、日曜日の昼、Criterion Channelで見ました。こないだ見た”Smithereens” (1982)と同系の、自身の起源を再訪する旅。

当時、これの輸入盤を売っていたことはよく覚えている(買えなくてううって唸っていたから)のだが、映画を見れる日が来るとは。

ストーリーはシンプルで、サッチャー時代の南ロンドンでsound systemを組んで闇ライブをやっている若者達がいて、彼らのライブとかダンスフロアにかける熱だけじゃなくて、家族とか警察やNational Frontとのごたごた – 怒鳴られる、追っかけられる、殴られる - 壊される - とか日々の差別に曝され苦闘するぐだぐだなどを描く。決して音楽好きがてきとーに楽しくやっているわけではなくて、理不尽なところに挟まれて苦しくてきつくてやってられない。

脚本を書いているのが”Quadrophenia” (1979)のMartin Stellmanなので - 出演者も一部被っている - あれにあったのと同様の若者のイキがりと無軌道、それに伴う苦さのかんじ、そこにどんなふうに音楽が被って彼らの生を支えていたのか、あるいは差別や貧困がそれだけ彼らを疎外し隅に追いやっていたのか、などドキュメンタリーのような感触も含めて、似た感触はあるかも。

ていうのと、当時のロンドンの裏町のかんじ – まだ二次大戦後の瓦礫(← なんだって、後の解説で知った)が残っていたり、火が焚かれていたり、SOHOの裏手のやばい暗がり - 等が出ていて、それはBabylonとしか形容のしようがないのと、その反対側で結婚式前夜のパーティのほんわかあったかいかんじもあって、よい映画だと思った。

音楽は俳優としても出演しているAswadとDennis Bovellのが中心で、あの頃のレゲエ・ダヴの硬くざらついたボトムが全編を覆っていて、それに浸っているだけでたまんない。当時は硬くうねって暴れてくれる音ならなんでもよくて、心底かっこいいって思っていた。今だとメタルとかドローンに該当するやつとして聴いていたのかも。 Steel Pulse, Aswad, Basement 5, Linton Kwesi Johnson, などなど。(事情わかんないけど聴いてないだけなのかもだけど、レゲエってなんでいつの間にあんな踊れりゃいいみたいなのになっちゃったんだろ?)  

更に勉強になる参考ドキュメンタリーがふたつ。時代は遡って60年代頃、ジャマイカから英国に来た移民がどうしてどんなふうにsound systemで音楽を楽しむようになっていったのか、を描いた“Rudeboy: The Story of Trojan Records” (2018)、もういっこは日本でも公開された(のよね?)”White Riot” (2019) – Steel Pulseの名前が出てくる。

Criterionのサイトには本編のおまけでVivien Goldmanさんによる解説インタビュー映像があって、とても勉強になる。撮影されたLadbroke Grove - Lancaster Rdの辺りは当時AswadのメンバーやJoe Strummerが住んでいて、まさにそれが起こっていた爆心地だったのだ、とか。当時の英国は国としてのアイデンティティを模索して揺れていて(← いまだにそうじゃん)、その対岸に現れたのがBabylonという概念だったとか。

このトークでVivienさんの聞き手をしていたAshley Clark氏の記事 ↓。まだ見ていないのがいっぱいあるねえ。

https://www.theguardian.com/film/2020/jun/19/from-pressure-to-the-last-tree-10-of-the-best-black-british-films?CMP=share_btn_tw


Right On! (1970)

12日、金曜日の晩、MoMAがリリースしていておもしろそうだったので見てみた。
“Babylon”から10年遡ったアメリカ – NYでThe Last Poetsの3人がビルの屋上や瓦礫の上で順番に歌っていくだけ – 同録のように見える、どうやっているのかしら? -  なのだが、約70分間、ぜんぜん緩まないの。バックはボンゴをぽこぽこやってる2人だけなのに、力強くてなんだこりゃ?のテンションがずうっと続いて、気がつくと拳を握りしめている。

HipHopの起源? とか掘っていけば諸説ありそうだけど、まずひとつはこれ見せてみれば、とか。ほぼ手ぶらの素手の普段着でも言いたいこと - メッセージはこんなふうにビルを越えて橋を渡って伝播していくものだよ Right On!  て。プロテストの時代にふたたび。

90年代、Tha Last Poetsは全員ではなくてひとりとかふたりでよくいろんなイベントに出ていた。当時にこの映画の姿を見ていたらなー。


今日はSwedenではMidsummer Eveだし、在宅始めてちょうど3ヶ月だし、金曜日 - いろいろお店が開いて最初の金曜日だし、3時くらいに切り上げて外に行きたかったのだがぜんぜんだめで、低気圧の渦もひどいし野菜売り場にもろくなのなくてさあー。 こういう日もあるわ。金曜日なのに。

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