6.30.2020

[film] Take Me Somewhere Nice (2019)

24日、水曜日の晩、MUBIで見ました。あと4日で見れなくなるよ、って言われたので。

ボスニア出身でオランダで活動するEna Sendijarević監督の長編デビュー作となるオランダ映画。このタイトルと水着の女の子が寝そべっているパステル系色調のスチールで寄っていくと騙されるはず。それもまたよいこと。

冒頭、Alma (Sara Luna Zoric)が母親 – すばらしい猫を抱いている – に会話のレッスンのようなものをして貰っていて、どこの言葉かわからないのだがAlmaはこれから旅に出ようとしていることがわかる。

Almaが降りたったところはがらーんとした空港で誰もいなくて、離れたところに車で待っている若い男がいて、彼女はその車に乗り込む。はじめは誰が誰でどういう目的でどこに行くのかとか一切わからないのだが、Almaは休暇でボスニアの病院に入院している父親を訪ねるところで、空港に来ていたのはいとこのEmir (Ernad Prnjavorac)で、まずは彼の住むこれもがらーんとしたアパートに来る。

外に出たらアパートに戻れなくなったりスーツケースが開かなかったり散々で、そこに現れたのがEmirの仲間なのか手下なのかDenis (Lazar Dragojevic)で、少し優しくしてくれる。EmirもDenisもなにをやっている連中なのかわからないのだが、忙しいとかで父親のいる病院には連れていってくれないので片言でバスの切符を買って乗れば酔ってげろげろになり、休憩所で放心しているとスーツケースごとバスは出発しちゃってAlmaひとりが取り残される。

しょうがないのでひとり夜道をてけてけ歩いていると少しお金のありそうなおばさんがあんた正気か? って拾ってくれて彼女のホテルに滞在して、そこで知り合った中年男と夜遊びしていると駐車場で男ふたりに襲われて男はぼこぼこにAlmaはさらわれてもうだめかと思ったらそれがEmirとDenisで、父親の病院に連れて行ってやるという。その前にバス会社からスーツケースを見つけたって連絡が来たので取りにいったらぜんぜん知らない人のやつで、開けてみたら中には白いテニスウェアとドラッグぽいきな臭い包みが。

こんなふうにいろいろあってようやく病院にたどり着いたら..(まだまだ続く)

本来であれば、贅沢ではないかもだけどそれなりに楽しいバケーションになるはずだったのに相当にしょうもなく悲惨なことが立て続けに起こるスクリューボール(コメディじゃない)で、治安が良くなさそうなボスニアが舞台だからといって余りに酷すぎないか、って唖然とするのだが、Almaは泣いたり怒ったりしながらもめげずに立ち向かってふてぶてしいし、無口でぶっきらぼうなEmirとへらへら優しそうなDenisはなんだかんだついてきて、3匹が引っ掻き合ったりぶん殴られたり傷だらけになりながら転がっていくのがよいの。ロードムーヴィーでもないしクライムムーヴィーとも違うし、やっぱり青春映画.. になるのだろうか。

ちっとも”Somewhere Nice”とは思えないボスニアについて、そこで暮らすEmirからはナショナリストとパトリオットという言い方で部外者はすっこんでな、みたいなことを言われるのだが、それがなんなのよ、みたいな空気になってしまうところもおもしろい。 こっちはプールサイドでごろごろしていられればいいだけなのになにさぷん!  みたいな。
(いまのにっぽんでも同じようなドラマが撮れる気がする)

音楽は、みんなで車をぐるぐる乗り回すシーンでSonic Youthの“Kool Thing”が弾けるところが素敵。 ほんとうは遊園地のゴーカートなんかで楽しく遊ぶとこだったかもしれないのに。

とにかく、Almaが最後までぜったい負けないので、そこだけでも。


だれもが”Take Me Somewhere Nice”って思いながら一年の半分が過ぎてしまった。だれもがこんなひどいことになろうとは、って思いつつまだ収束していないし、亡くなってしまった沢山の人達とか家族のことを思いつつ、これからの半分はもう少しだけ動けるようになったりしますように、って誰にどう言ったらたらよいのかお祈りすればどうにかなるのかわからないけど、お願いだからー。

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