2.20.2019

[film] Vice (2018)

12日、火曜日の晩、CurzonのSOHOで見ました。
Adam McKay渾身の実録くそったれ政界ドラマ。痺れるくらいにおもしろい。おもしろくないわけがない。

わたしはBush-Cheney政権の頃にNYにいたので、このふたりが東海岸でどれほど嫌われ疎まれ、憎まれてきたのかようくわかる。ライブに行けばこいつらへの強烈なDisやこき下ろしが入り、映画上映でトークが付けば、必ず政権批判のスピーチがあり(ジャームッシュなんて20分くらい延々アジってた)、こういう時期を通ってきたので今の日本の、政治的ななんかを言うのが憚られる(あんなひどいのに)というのが信じられないし気持ちわるいし、今のTrumpはこの頃のよか軽く10倍くらい酷いので、現地ではすごいんだろうなー(見たい聞きたい)というのがあって、これを見ているとそういういろんな声がわんわん増幅されて響いてくる。

こないだの”Green Book”のPeter FarrellyにしてもこのAdam McKayにしても、コメディを作ってきた連中がなんでこういうシリアスなドラマに向かうのかって、ここに出てくるアメリカのたんこぶとかイボみたいな奴らをなんとか、どうにかしないと笑いもくそもないからよ、ていうのと、こういうクズみたいな連中が社会の上の方にのさばっていっぱい儲けてのうのうとしているって、最高のジョークじゃねえかやってらんねえぜおい、ていうのの両方あるのかしら。

2001年、911の日のワシントンで、Bushが不在なので代行でものすごいことを(淡々と無表情で)やってしまうCheney – そう、こいつはそういう奴よ、という冒頭から60年代のワイオミングに飛んで、喧嘩と酒ばかりでどうしようもないDick Cheney (Christian Bale)を妻のLynne (Amy Adams)がものすごい剣幕でしばき倒して、それで反省した彼はD.C.でDonald Rumsfeld (Steve Carell)のお付きになって政治の世界で頭角を現していく - 政権の推移で浮き沈みを繰り返しつつも – その様を追っていく。

特定の政策策定や実行のためにものすごい政治的手腕やキレを見せるような場面はなくて、彼が関心を向けるのはUnitary executive theoryとか、要は自身に権力を集中させるために必要な風向きとか地図とか人脈とかそっちの方で、それさえ手にしてしまえば後は、どんな政策であってもどうとでもできる、戦争だって起こすことができるのだから、と。

そこにしか関心のなかった彼にとって、ぼんくらGeorge W. Bush (Sam Rockwell)のVice - 「副」であり「悪」でもある – というポジションは願ってもないあれだったの。あーめん。

もちろん、最初からずっと確信犯でやってきたわけではなくて、自身の健康の問題があり、娘とか家族のこともあり、クリントンの時代でフェードアウトしておけばじゅうぶん幸せだったのに..  最後の方で明らかになる語り手の正体も含めて、妖怪のように”Vice”を食らいながら生き延びていく姿は相当に気持ちわるいのだが、これこそがアメリカの政治のコア、そのありようなのだとか言われるとううむそうかも、って言わざるを得ない。

この辺の、もうこうだったらああだったかもしれないのに、というラインはドキュメンタリーで描くのは難しいし、かといってAnchorman - Ron Burgundyに喋らせるのも違うし、今回のような寡黙でシリアスなドラマにするのが一番だったのかもしれない。 Will Ferrell(今作ではプロデュース)にBushをやらせないくらいにはシリアスな。

あーそれにしても、(一番最後に出てくるけど)こいつらがでっちあげでイラク戦争を仕掛けさえしなければ…  というのはもう言ってもしょうがないことで、でもああいうことが二度と起こらないようにするにはどうしたら、というのはいくらでも言っておいたほうがよいことなの。 いまのアメリカといまのにっぽんは特に。 後者のなんてあんなスカスカの低レベルなのになんでみんな黙っていられるんだろ → TVでも新聞でも。

むかし、何度かD.C.に行ってある仕組みを作っていた政権に近いところの人たちと何度か会ったことがあるのだが、あそこにいる人たちってみんなつるっと小綺麗で妙なかんじで、それを思い出した。 まさに”They Live” (1988) のあれなんだよね。

俳優さんたちはどれも絶妙に巧くて - CheneyにしてもDonald Rumsfeldにしても - あれこれ思い出してむかついてぐうう、ってなった。 ぐったりしているときに見たらしんどいかも。 でも必見、ぜったい。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。