2.11.2019

[film] Green Book (2018)

6日の水曜日の晩、Picturehouse Centralで見ました。オスカー前に見ておきたいのがあるのにぜんぜん追いつかないや。
”Glass”だって見れてないし。

60年代初、NYのナイトクラブで用心棒をしているTony(Viggo Mortensen)は、クラブが改修のために一時クローズして暇になるときに、カーネギーホールの上階に暮らす黒人のピアニストDon Shirley (Mahershala Ali)から中西部から南部 - Deep South - を巡っていくライブツアーの運転手をやらないか、というオファーを受ける。期間は6週間で、クリスマスイブに戻ってくる。日頃、特に意識もせず漫然と(というかたちで)差別意識を抱いてしまっているTonyは最初はやだよ、って断るのだが、結局期間限定だしお金も稼ぎたいしいいか、と水色のリモの運転手としてDonと大陸横断道中をすることになる。 Green Bookっていうのはレコード会社から渡された黒人旅行者が安全に旅するためのモーテルやレストランが記してあるガイド冊子のこと。  あ、実話ベースのお話しね。

道中の最初の方は雇主であるDonと、そんな彼のことを理解できないししようとも思わないTonyの間のすれ違いとか小競り合いが面白くて、それがやがてツアー先で、ライブの間は称賛・喝采されるのに、それが終わって一旦路上に出ればどこまでも蔑視や暴力に晒されてぼこぼこになってしまうDonを護ったり面倒を見たりに変わっていって、最後は互いにとってもよい親友同士になるまで。

喧嘩っ早くて威勢と調子のいいイタリア系のTonyと無口で全てを見通しているかのように尊大でつーんとしたDonの波長が合うわけないし、NYで定期的にライブやっていればいくらでも稼ぐことができるDonがなんでわざわざ差別にまみれたあっちの方まで赴くのか、とかいろいろあるのだが、とにかくふたりはそれぞれに折れないしめげないし、それがだんだん矢でも鉄砲でも、のかんじになっていくところが楽しい。

昨年見たドキュメンタリー映画に”The King” (2017)っていう、かつてエスビス・プレスリーが所有していた車に乗りこんでエルビスの辿った旅を、彼の見ていた風景を追う、っていうのがあったけど、これは車中から外を見るだけではなく、外から中を覗きこまれて途端に変な顔されておまえ降りろ、って言われたりして、しかもそこに明確な理由があるわけではない、という地獄。

Green Bookがなければ危険な旅、それどころかTonyみたいに腕っぷしの強い白人が傍にいないと危険であることをDonは十分にわかっていて、それでも何故彼は旅に出なければいけなかったのか? ということ。

これと同様に、これまで巷の差別意識を敢えて表に晒すようなしょうもないコメディを連発してきたPeter Farrellyがなぜこんなふうなヒューマンドラマを作ってきたのか。(Adam McKayのもそうなのかしら)

ついでに、”If Beale Street Could Talk”にしても、ドキュメンタリーの”RBG”にしても、ここにきて少し時代を遡ったところから差別の根っこを浮き彫りにするような作品がいっぱい出てきているのはどういうことなのか。

とにかくとても笑って昔のことさ、って言えるような状況ではなくなってきた、という今を、今のうちになんとかしないと(笑いのドラマを作ることすらできん)、というのが背景にあるような気がしてならないので、今の問題意識、危機意識でもって見てほしい。ドラマとしてもとってもよいから。

あと、彼らのように旅にでないとだめだよねえ、って。いまのにっぽんの「差別」を「趣向」とかに転嫁する/できる発想ってなんなの? 想像力ゼロなの? って思うけど、たぶん国内のニュースとTVとネットしか見ていないと、あの国では簡単にそうなっちゃうんだろうな、ってこないだ帰ったときにもしみじみ感じた。 気分悪くなるので10分くらいで切っていたけど、にっぽんの閉じたかんじ、相当ひどい。 って中にいたらわかんないからー。

それにしても、Viggo Mortensenが拳を振りあげるとそれだけで“Eastern Promises” (2007)になっちゃっておっかなくて震える。このひとの生の暴力性みたいのも健在で、すごいねえ。

Tonyがおうちに戻った時にテーブルに並べられるイタリアのご飯、パスタにハマグリに.. これってほんとうにおいしいんだよね。 これがあるからTonyは家に戻ったのだし、そしてDonは..  (クリスマス映画でもあるの)

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