8.28.2018

[film] Langrishe, Go Down (1978)

4日の土曜日の晩、BFIのHarold Pinter特集で見ました。
Aidan Higginsの66年の小説をPinterが脚色し、BBCの”Play of the Week”ていう番組枠の中で78年に90分ドラマとして放映された - のが2001年のLincoln Center Festivalで110分のフィルム版として再リリースされたもの。

1930年代、アイルランドの田舎の小さくない邸宅にLangrishe家 - Imogen (Judi Dench), Helen (Annette Crosbie), Lily (Susan Williamson)の3姉妹が暮らしていて、3人とも未婚で若くはなくて家は古くて売ろうにも売れないかんじで、でも3人ふつうに同じ家で大きな諍いも焦りもなく質素に暮していて、そこの離れの小屋に哲学を専攻しているというドイツの学生 - Otto Beck (Jeremy Irons)が間借りしてがさごそ暮らし始める。

ImogenはOttoに関心があるようで小屋の掃除に入ったりして話をするようになり、やがて二人でダブリンまで出かけて帰りのバスを逃して、Ottoの友人宅でワイルドな連中と朝まで過ごしたり、彼の小屋で寝泊りするようになり、そういう二人の騒がしさは穏やかに暮らしている二人の姉妹 – 特におっとり真面目なHelen - にも当然知れて、当然よい顔はされなくて、穏やかな緊張を孕みつつ過ぎていく日々を追い、そのうち学位論文のために忙しくなっていくOttoとImogenの間もうまくいかなくなって、やがて。

お話しとしてはぜんぜんどうってことないのだが、時間をかけてゆっくりと崩れ、消滅に向かっているかのような田舎の旧家の三姉妹(巻きこまれているけど、それでどうしろって?)と、そこに突然現れたドイツの(30年代のドイツの)粗野な(でも知的っぽい)若者が持ちこんだ不穏さと緊張感、そして恋を知って揺れるImogenとその姉妹の、それでも先が見えない(ことを全員が知っている)どん詰まり感が、絵画のような田舎の景色のなかに端正に描かれていく。
Rom-Comの方にもサスペンスホラーの方にも行かない、ただ”Go Down”していくそのありよう。

それにしてもImogen - Judi Denchの、あの姉妹の中であたしはここで埋もれたくないんだ、ていう撥ね返って背伸びしようとする不敵な表情と、得体の知れない言葉を操りながら彼女をいいようにしてしまうOtto - Jeremy Ironsの若々しさにふてぶてしさ、ふたりの生む化学反応が田舎の古くて澱んだ空気と交わることで何もかもどうでもよくなって、最後にはざけんなよ、ってライフルを持ちだしたくなるのはよくわかるかも、って。

ここにはこのPinter特集のテーマ - ”Power, Sex & Politics”のうち、PowerもPoliticsも一見、ぜんぜん見えないようで、でもここにこそ、こういうところにこそ、というのはなんとなくわかる。 階級とかそこに纏わる意識を巡るなにか、というよりも、都会と田舎、のようなところで表出してくる、昔の日本にもあったようなかんじの。

今やブロックバスターで女王とかMI6のヘッドとか、悪の黒幕とかそんなのばかりやっている大御所のふたりが若い頃はこんな田舎でこんなふうに燻って悶々と互いの毛を逆立てていたって思うのはおもしろいし、なによりも瑞々しくていいなー、って。

あと、Pinter本人がダブリンのアパートでOttoに絡みまくる酔っ払いの役で出ていて、こんなひとだったのね、と。
とってもイメージ通りなかんじ、ではあった。

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