2.01.2023

[film] Flaming Star (1960)

1月21日、土曜日の昼、菊川のStrangerで見ました。

特集『ぶっ放せ!ドン・シーゲルセレクション』からの1本。『燃える平原児』。燃える平原の児なのか平原児が燃えてしまうやつなのか。 原作はClare Huffakerの小説”Flaming Lance” (1958)で、最初のタイトルは”Black Star”だった、と。ウォーホルの有名なElvisのカウボーイの像は、この映画のElvisから取ったもの。

Don Siegelの特集はとっても待望だし見たいの - 2006年にFilm Forumで彼の特集があって結構みたの - だが、一本で1700円ってなあ(交通費足すと2000円超える)。こないだの東映の任侠映画特集もだけど、せめて二本立て1500円、よねえ。二本立てで見てしゃっきりする(ちょうどよくお腹がふくれる)のってあると思うのよね。昔のって特に。

冒頭、薄暗い牧場の家にPacer (Elvis Presley)とClint (Steve Forrest)の兄弟が戻ってきて、あまりに真っ暗で静かなので警戒しておそるおそる扉を開けてみるとサプライズで、近所のRoslyn (Barbara Eden)たちも交えたClintの誕生日のパーティになる。そしたらPacerが手も洗わずうがいもしないでそこにあったギターを手に取って歌い始めるので、そういうのかーと思ったけど歌はここだけだった。楽しいパーティでも、Pacerの母Neddy (Dolores del Río) に対して明らかに差別的な言葉が投げられて場が冷たくなったり、そういう空気を引き摺って自分たちの家に戻ったRoslynの一家はカイオワ族の襲撃にあってほぼ皆殺しにされてしまう。

翌日兄弟が弾薬を買いに町に出ても、おたくが襲撃されないのはカイオワ族が家族にいるからだろ、って嫌味を言われて、そこでPacerとClintは異母兄弟で、Pacerはカイオワ族だったNeddyの子であることがわかるのだが、なんでいきなり襲ってきたのかは族長が替わったから、くらいしかわかないでいると、カイオワ族から直接の訪問を受けて一緒に戦おう - 返事を待つ - とか言われて、でもそんなのできるわけないし、ってNeddyとPacerは一緒に直談判に向かって、そしたらその帰途に復讐に燃えるRoslynの兄に撃たれてNeddyは殺されて..   こんなふうにカイオワ族とPacerの家と町衆の間で憎しみがぐるぐる回って殺し合いの輪が広がっていく。

この土地はそもそも誰のものだから出ていけ、とか、お前は我々と異なる族だから出ていけとか、そういうそれぞれが背負って立つものによってお前はどっち側につくのだ? って引き裂かれて、「出ていけ」が「死ね」になっていって、彼らの周辺で巻かれていく憎しみと運命の渦がものすごく暗くて暗澹とする。

タイトルは「死を迎える時に燃える星を見る」っていうカイオワ族の言い伝えから来ていて、Neddyもそれを言った後に亡くなっていたしPacerも自分はあの星を見たから、ってひとり覚悟して死地に赴くところで幕を閉じるのだが、それにしても暗い。だってそれってなんの「解決」をもたらすものではなくて、ただ見たから、って言われて勝手に死なれても残された人たちはどうしろっていうのか? これなら猫を見たってロバを見たって、見なかったことにしたって同じではないのか? でもそれが彼の、彼の星が命じた決着のつけかたで、周囲からお前は自分の星に帰れ、って言われたのだから文句ないはずだろ? ってなる。そして後には野蛮と暴力の痕だけが残る、という絶望。

これが本当に、当時十分なアイドルスターとしてメインストリームにいたElvisに任せられた役なのだとしたらびっくりしかないが、それ以上に驚異なのは、激しい銃撃戦もアクションもなしに、彼がこの役をパーフェクトとしか言いようのない強さと弱さを使い分けながら演じきっていること、だろうか。主演スターに求められる尊大さだのナイーブさだのを軽く捨て去って、家族への思いと復讐に引き裂かれながらひっそり彼方に消えていくマイノリティの青年の暗い目をこの人は自分のものとして曝してびくともしない。

これのしばらく後にStar in the Night (1945)っていうDon Siegelの監督デビュー作の短編 - オスカーの短編賞を獲った – をYouTubeで見たの。クリスマスイヴの晩、砂漠をいく3人のカウボーイが地平線のあたりに見えるあの☆を目指していこうぜ、っていう。その☆はモーテルの主人がぶつぶつ言いながら飾りとして店先に取りつけたでっかい張りぼてので、その主人のところには難しい注文をつける困った客ばかり寄ってきて、彼はぜんぶそんなのダメとかムリとか突っぱねてて、彼の妻はその逆になんでも受け容れてあげてて、そのうちやってきた男女が奇跡のようなあれを…  Don Siegelがこんな素敵な人情劇を撮っていたなんて、というのと、これも星に縛られた運命のお話だなあ、って。(それだけだけど)

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