8.02.2022

[film] Straight Shooting (1917)

7月23日の夕方、シネマヴェーラのジョン・フォード特集で『捜索者』から1本おいて、見ました。
この日、これの前の『香も高きケンタッキー』+トークなんて気がついたら売り切れでぜんぜん無理だった。

フォードの、現存していて見ることのできる最古の作品だという。
もちろんサイレントで、邦題は『誉の名手』。画面上の監督名の表記はJack Ford。

最初のショットはこちらに向かってくる牛の群れと彼らが降りていった平原を見下ろす馬たちと人、なの。

ずっとそこに暮らして帝国を築いてきた牧場主と、そこに入植してきた者たちの対立が続いている土地で、入植者のSweet Water Sims (George Berrell)とお兄さんのTed (Ted Brooks)と妹のJoan (Molly Malone)の3人家族がいて、粗末な掘っ立て小屋で真面目に平和に暮らしているのに牧場主側はなんとか追い出そうとしていて、お尋ね者の凄腕 - Cheyenne Harry (Harry Carey)を味方につけようと、$1000の張り紙をだす。そしたら木の切り株から「呼んだか?」っていきなり顔を出すHarryがなんかすごい。

入植者側は水飲み場も柵で囲ったりしているのだが、ある晩あんま考えずにそれを跨いでしまったTedが撃たれて亡くなって、父と妹の嘆き悲しむ姿を見たHarryは彼らの側につくことにして、Harryの悪仲間も後で合流して束になってやってくる牧場主側を入植者たちが迎え撃つの。それだけ。なんだけど、ロングでとらえた丘や谷を走り抜けていく馬たちの姿とか、家のなかから外の景色をとらえるところ - 『捜索者』(1956)のあれを既に - とかがすばらしく素敵で、それだけでうっとり盛りあがるのと、それに加えて牧場主たちが家のまわりを囲んでぐるぐる回るところとそれを屋内から狙って倒していくとこなんて『天国の門』(1980) - 『天国の門』の舞台って1890年だからこの映画の頃とそんなに違わないのか ー。

遠くで動いているものをまっすぐ狙って撃って(Straight Shooting – それだけの意味じゃないかもだけど)倒す、そのためには遠くのものがどんな動き(こちらに全速力で向かってくるのであればなんかやばいかも)をしているのか、それはいったい敵なのか味方なのか、などがわかっている必要があって、そのためにはそれがどこから来たどんな奴で、なんで倒されなければならないのかが説明されたりしている必要があって、こうして西部劇と呼ばれるジャンルを構成する基本要素みたいなのが明らかにされて、そうやって得られるカタルシスのようなものも遠近の解像度こみで既に繰り広げられていたりしていて、これが最初期の1本って、すごくないだろうか。

Harry CareyってThe FallのMark E. Smithにどこかしら似ているかんじがしてすき。


Hell Bent (1918)

7月24日、日曜日の昼のジョン・フォード特集で見ました。53分。邦題は『砂に埋もれて』 - 直訳の「地獄絵図」ってほどでもないかも。

最初に書斎にいる小説家が、ヒーローなんていないのだからもっとふつうの人とかを題材にした方が.. って出版社から大きなお世話の手紙を貰って、ふうむって壁にかかった額縁の絵 - 酒場で複数の人が倒れている - 絵としてはあんまし - を見ているとカメラが寄っていって、絵のなかのあれこれが動きだすの。

これもCheyenne Harry (Harry Carey)のお話しで、さっきの絵にあった酒場からいかさまで逃げ出した彼は馬と共に川を超えてダンスホールの裏手にあるホテルに流れ着いて、でっかい馬ごと階段を上がってCimmaron Bill (Duke Lee)が寝ていた部屋に押し入って、ふたりは相棒になり、馬は寝具を食べちゃうの。

それと極悪連中を率いた悪党のBeau Ross (Joseph Harris)がいて、こいつら馬でものすごい高いところから駆け降りて強盗でもなんでもやっちゃう奴らで、Harryがちょっと好きになったダンスホールの踊り子のBess (Neva Gerber)の兄となんか企んで、そのうち彼女を浚ってしまうので、Harryは捜索者になって地の果てまで追っかけていくの。

↑の『誉の名手』と同じように遠く馬の暴れようとか坂道を下りていくところとか馬車が崖から転げ落ちるとことか魔法のようによく見える(特殊なことなんもしてない)のでなんか(彼方であれこれ動いているだけで)すごいぞ、って痺れっぱなしなのと、ロバとか子犬とか大量の馬のお尻とか、同じ顔のウェイターふたりとか、サイレントなのに音痴なCimmaron Billとか、怪しげなのもいっぱい出て来て、最後は↑にあった馬のぐるぐる回りと同じように幻惑効果たっぷりの砂漠をいく馬の影とか蜃気楼とかが見えて、みんな砂嵐に埋もれていって、お馬を横にして毛布被せて一緒に横になったりしてて、実際そうやって生き延びようとしたのだろうなー、とか。

こうして、砂に埋もれてひとりは生き残るのだが、これって冒頭の小説家せんせいの件とはどう繋がるのかしら?

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