8.08.2022

[film] The Man Who Shot Liberty Valance (1962)

7月30日、土曜日、シネマヴェーラのジョン・フォード特集で見た2本を。
この日見たのはぜんぶで3本だが、”Mogambo”  (1953)はもう少し転がしていたい。

The Grapes of Wrath (1940)

原作はJohn Steinbeckのピュリッツァー賞受賞作『怒りの葡萄』 (1939)。

2010年にNYのFilm Forumで公開70周年でニュープリントが焼かれたときのを見ているので少しだけ。
刑務所から仮出所してきたTom Joad (Henry Fonda)とずっと暮らしてきた農地を追われた家族の西方に向かう果てのない彷徨いを怒りをこめて叩きつける。家族だろうが個人だろうがある土地に暮らす、生活するというのがどういうことなのか、それが常に戦い(誰との? どういう?)と共にあったこと、なんでこうなるのか、こんなことでいいのか? 等などを何度も何度も。

彼らから土地を奪って向こうに追いやる側って「我々にもどうすることもできん」ていうの。そういう竜巻のように理不尽な力がなぎ倒そうとして、そういう力に対して葡萄の房になってどう戦うか、というより我々はどうあるべきなのか、という歌。TomもMaもずっとここにいるから、と歌う。そんなふうに幽霊のようにそこにずっといる/ある魂のありよう(楽しいのであれ悲しいのであれ)をSteinbeckもFordも描いてきた、その基本の根っこみたいなところにある影。 レンブラントの絵画みたいなやつ。


The Man Who Shot Liberty Valance (1962)

原作はDorothy M. Johnsonによる同名小説 (1953)。邦題は『リバティ・バランスを射った男』。この年なのに、カラーではなくモノクロの、西部劇? なのか?

上院議員のRansom "Ranse" Stoddard (James Stewart)と妻のHallie (Vera Miles) – どちらもやや老けメイク - が自分たちが出た村に戻ってきて、偉い人たちなので歓待されて、でも目的はTom Doniphon (John Wayne)の葬儀だと言われて、みんな誰それ? って、回想シーンに入る。

若い弁護士として張りきって新しい村に赴任しようとしていたRanseが村の手前でLiberty Valance (Lee Marvin)の一味に襲われてぼこぼこにされて、TomとPompey (Woody Strode)にHallieのいるステーキ屋に連れられていって手当して貰い、Liberty Valanceは暴れん坊でどうしようもないし、保安官は頼りないし、ここは法がどうの言ってもしょうがない無法地帯だから、って言われるのだがRanseは聞かずにステーキ屋でバイトをしながら法律事務所を立ちあげて、地元の新聞社のPeabody (Edmond O'Brien)に手伝ってもらって読み書きができないHallieたちのために教室を開いたりしながら、でもやっぱり敵の荒れ狂う暴力の前にはなすすべもないので、言い訳しつつもTomに銃の扱いを教えて貰ったりする。

TomはずっとHallieのことが好きで結婚することを夢みて一緒に暮らす家を建てていたり、妨害を受けても負けないPeabodyの新聞社 - 報道の自由とか、やっぱり選挙はみんなにとって大事だからとか、やっぱり教育の大切さとか、修行しながら村にとけこんだり学んだりしていくRanseの姿を描いて、全体としては当時の合衆国を作っていくそのありようがひとつの村の騒動に集約されているかんじで、そこに暴力的に挟まってくるあまりに暴力的なLiberty Valanceの所業をRanseは、Tomは、村はどうするのか。

結局ガリ勉くんのRanseは番長のLiberty Valanceに行きがかり上避けられないようなかたちで決闘を申し込んで、ふたりは相対するのだが、銃も満足に扱ったことがないしろくな喧嘩もしたことないRanseは嘲笑われて絶体絶命になったところで..

有名な話でもあることだしネタバレすると、Liberty Valanceは影からTomが援護して一発で仕留めて終わりで、でもRanseはこの件で「リバティ・バランスを射った男」として有名になり、法曹界から政界に出て、Hallieとも結婚しちゃって、Tomは反対にぜんぶ失ってやけになって家も燃やして、亡くなるまでPompeyひとりしか傍にいなくて棺桶のなかも映して貰えなくてかわいそうすぎで。むかしの日本の任侠ものみたいな「美しい」オチになっているように見えるけどそんなことでよいのか、きちんと検証されるべきではないのか、なんてもちろん誰もいわない。

またしてもかわいそうで報われないJohn Wayne、ていうのはべつにJohn Wayneのせいにしても面白いけど、それよりも、「合衆国」の建国の神話なんて例えばこんなふうに - 温厚な誰かが凶暴な誰かを射ったとか - いい加減にてきとーに作られてきたものが大部分なのではないか、とか、本物の「リバティ・バランスを射った男」はTomみたいにひっそりと亡くなっていくものなのだ、とか、”It's a Wonderful Life” (1946)でJames Stewartがやった役をJohn Wayneがやろうとして、でもやっぱりJames Stewartにもっていかれてかわいそうすぎ、とか。

『怒りの葡萄』のTomがべつの形をとって現れて、ひっそり消えた、そういうお話なのかも。

あと、クライマックスの対決〜銃撃のところはやはりモノクロだからあれだけかっこよく映えたのかも、とか。

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