8.25.2022

[film] Brian Wilson: Long Promised Road (2021)

8月17日、木曜日の晩、パルコの上のシネクイントで見ました。

Brian Wilsonのドキュメンタリーで、Brian自身や妻のMelindaもExecutive Producerとして関わっているので、本人公認のと言ってよいやつ。昨年のTribeca Film Festivalでプレミアされた、と。

内容は、Rolling Stone誌の編集者で、Brianとは以前からインタビューを通して馴染みがあって信頼されているJason FineとBrianが語り合う - Jasonの運転するポルシェの助手席にBrianが座って、カーステで音楽を流しながらLAのBrianのゆかりの地 - 生家、最初にレコーディングした場所、最初に結婚して住んだ家、等を巡って – Brianが行きたくない場所には寄らない - という、その時々の思い出などを語っていく。このやりかたで3回の週末に渡って – Brianのシャツの色が変わるのでわかる - 70時間分の映像が撮られたという。

そこに過去のBrian自身が持っていたのを含むいろんなアーカイブ映像とBruce Springsteen, Elton John, Jim James, Linda Perry, Nick Jonas, Taylor Hawkins(あぁ..), Jakob Dylan, Don Wasなどへのインタビュー映像が挟まる – 誰もがみんな、彼は、彼の音楽はすごいすばらしい、しか言わない - 他になにが言えるというのか?

Brian Wilsonのドキュメンタリーというと、かつてDon Wasの監督による”Brian Wilson: I Just Wasn't Made for These Times” (1995)があって、これはある程度わかっていたこととは言え、彼の音楽を「理解」する上で必修であることも了解した上で、それでも見るのはややきついやつだった。今度のは、それとはまったく異なる角度で、Brianがなにを見たり聴いたりしてきたのか、なにが好きでなにが嫌だったのか(今も)、などを知ることができる。そうだったんだー! っていう新たな事実のようなものが出てくるというより、そうだよね/そういうことね、っていうのを追っていく。いつもの、いつか見た風景を巡っていくので、道に迷うことはない。でも吹いてくる風のかんじは少し違って、やや心地よいのだった。

自分が始めてBeach Boysの音楽を聴いてBrian Wilsonの世界に触れた時、彼はすでに向こう側にいってしまった人 – Syd Barrettと同じような – という扱いだったので、最初のソロの“Brian Wilson” (1988)が出た時にはとても驚いて、でもこの時点でもEugene Landyの件があったのであまり信じてはいなくて、でもその後、ライブで歌う姿を数回見ることができたし、”Smile”までリリースされることになったのだから、彼がまだ音楽に関わってくれている、音楽について語ってくれるだけでうれしい。そういうファンにとって、彼がリラックスして車に乗っていたり、過去を思い出してちょっと涙ぐんだりしている姿を見るだけでああよかった、になるの。

それと、そういう空気のなかでBrianがその場所で聴きたいと思った曲をJason Fineが車内でかけて聴こえてくる彼の昔の音楽が、どんなにスイートに美しく、軽快に響いてくるものか、これはこの映画を見てはじめて感じられるなにかかも。それまでのBrianの音楽について散々語られてきた - ぶっとんだ、ありえないコード進行とか楽理を超えた狂ったハーモニーのようなもの – 最初の方でDon Wasが強調している – がとてもわかりやすくしっくりくるように響いてきて、それってちっとも興味なかった教会音楽が教会の中に入った途端に光と影と共に降り注いでくるのにも近いかも - 大げさかな。- "Add Some Music to Your Day”.

あと、“What a Fool Believes”がこわい、きらい、というのはおもしろかったのと、一番びっくりしたのはDennis Wilsonの“Pacific Ocean Blue” (1977)を聴いたことがなかった、というところだったかも – 終わりの方で幸せそうに聴いていくシーンが出てくる。

流れる曲とそれに対する彼の反応を通してCarlとかDennisに対するBrianの思いは伝わってきて、そこはもちろん感動的なのだが、Brian本人もがんばって – がんばらなくていいから幸せに長生きしてね、無理しないでね、って改めて思った。この間のJoni Mitchellのライブのときにも思って泣きそうだったけど、この人たちは音楽と共に生きて生かされているんだなあ、って。

全く関係ないのだが、”Long Promised Road”って聞くと、頭のなかで勝手にTodd Rundgrenの”Long Flowing Robe”に変換されてそっちが流れ出す。べつにいいけど。

これも全く関係ないのだが、The Smithereensはなんで今頃…

こんど西海岸に行くことがあったらBeverly Glen Deli に行くんだ。

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