5.31.2021

[film] The Brother from Another Planet (1984)

5月27日、木曜日の晩、Criterion Channelの5/31でいなくなるリストを見ていて、あら懐かしい、になったので見ました。UCLAがリストアしている。

大昔の公開当時、まだ桜丘町にあったユーロスペースで見て以来かも。ミニシアターっていう分類もあったかなかったか、たんに米国のインディペンデント映画、とか呼んでいた気がする。

冒頭、中学の自主映画みたいにちゃちいCGとただの鉢みたいなコクピットの中で慌てている人がいて、錯綜したぴろぴろ音の後に、それはしゅん – ぽちゃ、って紙ゴミのように一瞬で水に落ちる。エリス島のそばに落ちたその中に入っていたと思われる男 (Joe Morton) – 後で”The Brother”と呼ばれたりするが喋れないので名前は不明な - がイーストリバーから這いあがってきて、片方の膝から下がなくなっているのだが、しばらくじっと念じていると再生されていたりする(足先は三本指)。彼 – かどうかも本当は不明 – が廃墟になった駅のようなところに入ると誰もいないのにいろんな人の声が聞こえてきたりするのだが、マンハッタンにあたる朝日を眺めてから再び川に落ちて、そこから船に乗って125th - ハーレムに降りたつ。ここまでが導入部。なぜAトレインでハーレムなのか?

彼は喋らないので、彼の旅がどこへ向かおうとして何をやろうとしていたのか、そもそも彼がどこ星の何某なのかは一切わからない。地元の人達がたむろするバーに入ってもジェスチャーのみなのだが、相手の喋る内容とか、人が困っていることについては察して理解して、アーケードゲームを直すのを一瞬の手かざしでやってしまったり、不思議な力を持っているらしい。最初は怪しまれながらもそうやってゆっくりハーレムのコミュニティ – それを成り立たせている行政とかどさまわりの歌手とかやなかんじの白人とか多種多様な人達のあいだ - に馴染んでいく彼と、どういう理由かは不明だが彼を追っているらしい白人二人組の男たち(監督のJohn SaylesとDavid Strathairn!)が立ちはだかってきて..

これって別に彼をわざわざ地球に落ちてきた男、としなくても、他所(他の土地、国)から流れ着いた変な男、としてもふつうに成立する話で、ただそこには、彼が黒人でべらべら喋らなくて無害でどちらかというと有益である、とか、その土地はハーレムとかクイーンズのジャクソン・ハイツのような場所である、といったような条件がついて、その条件って政治的かつ歴史的ななにかとして規定されうるものだよね、と思う。というようなことが最後までいくとわかって、つまりこれはそんなふうにして成り立ってきた社会=合衆国の姿を描いているのだ、というのと、でもそれにしてもいろいろ大変なこともあるし - 最初に出てきた声たちとか  - これからもこうなのか、とか。

最初に見た頃はそこまで考えずに、見るからに低予算だけど不思議で謎めいててよいわ、とか洟を垂らしてぼんやり思っていただけだったかも。かわいそうでバカな子..

あの二人組はMen in Blackだったのかー。Tommy Lee JonesとWill Smithの映画はこのテーマを180度転換させて地球を防衛する話にしてみせたのね、と。そういうふうに見てみると、MIB、なんかやなかんじに見えてきたり。

これが白人 - David Bowie -だと”The Man Who Fell to Earth” (1976) になるし、見るからに宇宙人だと”E.T. the Extra-Terrestrial” (1982)や”Alien” (1979)になる。 なぜ”Sister”ではなく”Brother”なのか、とか、当時ややブームとなっていたSF映画たちと並べてみると、いろいろ見えてくるものがあるが、決して彼ひとりではなかった、というあたりはひとつのポイントかも。

あとはNYという街 - エリス島から入って、Brooklynに入ってハーレムに至る、その形成の過程を宇宙人も同様に反復しているという。 そうそう、“140 Broadway”という建物があったけど、あれは..

John Sayles、”Baby It's You” (1983)も久々に見返してみたいな。


禁外出が解けたし、明日はとうとう会社に行かねばならないし、区役所とかもあるので、しぶしぶ外にでる。
久々に見た町は、なんだか疲れて寂れて見えた。シャッター街になっちゃう手前くらいかも、とか。
でも区役所も銀行も相変わらずの光景 - 非効率、という点ではアメリカともイギリスともそんなに違わないと思うのだが、なんで日本のって悲惨に見えてしまうのだろう? だし、歩道を自転車がびゅんびゅん走っていくし、人はディスタンシング関係なく寄ったりぶつかったりしてくるし、車いなくてもきちんと信号守っているし、電車のなかは緊急事態宣言下とは思えないし.. 慣れてくるのだろうけど、いろいろ疲れた。

そうして疲れてばかりいてもかわいそうなので新宿の紀伊国屋に行って、少しだけ。本だけは戻ってきてもオンラインのクリックはしないで本屋に行こうと思っていたの。2年ぶりに日本語の本の本屋に行くと、なかなか来るものがある。パニックにはならないけど、ほぼ知らない本ばかりが入ってくる、ってすごい。 握りしめていたリストのうち、目についたのだけカゴに入れた - 『デヴィッド・ボウイ 無を歌った男』、『生の館』、『ミルドレッド・ピアース  未必の故意』、『かわいいウルフ』、とか、必殺で喉元にきた奴らから。文庫と料理本関係はまたこんど。

自分史上最悪だった5月が終わる。20年前の5月は二度目のNY駐在が始まったときで天に昇る思いだったのにな(でもその4ヶ月後に911が.. )。 6月はもう少しだけよくなりますように。

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