6.01.2021

[film] Minnie and Moskowitz (1971)

5月28日、金曜日の晩、Criterion Channelの特集 - “Gena Rowlands: An Actor’s Actor”で見ました。
そしていま、6月になったので、ここではCarole Lombardさまの特集が始まっている。

Seymour Moskowitz (Seymour Cassel)はもうもうのムスタッシュとポニーテールの髪を束ねて陽気に豪快に笑って喋って、匂ってきそうなかんじで街をうろついても周りに寄ってくるのは同様のむさくて狂った剛毛野郎ばかりで、仕事はパーキングの駐車係をしていて、それが好きでやっているというよりは他にできることがなくて、でも自分にはなんだってできると思い込んでいるから見栄きって勇んでLAにやってくるのだが、いつもと同じように小競り合いを起こしてばかりでなかなかしょうもない。

Minnie Moore (Gena Rowlands)は美術館 - The Los Angeles County Museum - LACMAだー - でキュレーターをしている独身で、同僚と映画館でHumphrey Bogartのクラシックを見てぼーっとなって、でもそうやってうっとりして帰ると、つきあっている不倫相手でもう別れたはずのJohn Cassavetesが家にいて絡んでくるのでもういい加減にして、になって泣いていたり。

そんな駐車場以外には交わるところがなさそうなふたりが巻き込まれ喧嘩のまんなかで出会って、出会うというよりSeymourが彼女だ - 彼女しかいないって興奮して、Lauren Bacallみたいだ、って突っ込んだりしたのでMinnieはついぼうっとなって、いやでもやっぱりそれぞれの境遇とか違いすぎるし無理だし、って押し戻して、そういうことを繰り返しながら結婚へとなだれこんでいくロマンチック・コメディであり、ふたりのぶあつい境遇の違いを考えるとスクリューボール・コメディなのかもしれない、けど、笑えたり爽快になったりするようなところはあまりない。家族が集うとこはおもしろいけど。

全体として迫ってくるのはやって来てほしくない夜の闇であり、ぶつかったりぶつかられたりの暴力と怒りに満ちた生(なま)の世界であり、そのなかをちっとも演技をしているようには見えない生身の俳優たちがこんなの好きになっちゃったんだからしょうがないじゃないかどうしろっていうのか、って震えながらこっちに向かってくる。そのアクの強さにこんなふうに始まる恋もある.. よね.. にならざるを得ない。何回見てもこんなことがあってよいのか、って震えるのだが、ここにこうしてあるのだから黙って見てろ、目を逸らすな、と映画の世界の人々はいう。

ここでこんなふうに描かれた愛の誕生は、続く”A Woman Under the Influence” (1974)でその瓦解を経験し、続く”Opening Night” (1977)でその復活と再生を、最後の”Love Streams” (1984)で、愛ってやつはなにがあろうととめどなく流れていくのだ、って断言する。それは、その中心にいるJohn CassavetesとGena Rowlandsのふたりが断言している、というより、愛そのものがそこで語っているような、そういう錯視と盲信の世界に我々を導く。 で、なんども言うようにそれはロマンチックでドリーミーななんかではなくて、常に死と隣り合わせの暴力と諦めのなかにある過酷なしんどいやつで、なのに目を離すことができない。なんでだろう? っていつも思うの。思うのだが、John CassavetesとGena Rowlandsのふたりを見るとこんなのしょうがないどうしようもないわ、ってなる。

これもAnti-romcomだし、”Punch-Drunk Love” (2002)がやりたかったのもこれなんだろうな、って。

このタイトル、Minnieがファーストネームで、Moskowitzがラストネームなのはなんでだろう? っていつも思う。 結婚の話だから?

Cassavetes夫妻のそれぞれの実のママが出てきたり、ふたりの娘のZoeがまだ赤ん坊だったり、ちゃっかりCassavetes家のファミリーアルバムになっている変な作品でもある。それにしたって、なんて家だろうね。


とにかく会社に出勤した。もう二度と行きたくない、とか言えないストレスと辛さ。
あまりに辛いので、帰りの本屋で『Mornington Crescent Tokyoの英国菓子』を買ってきた。あのMaids of Honourの作り方が出ている。 クリームチーズなの?  という衝撃..  恋しいよう。
 

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