5.07.2021

[film] Effie Gray (2014)

4月22日、土曜日の晩、有料のYouTubeで見ました。日本では公開されていないもよう。

John Ruskinの妻だったEffie Grayを描いた英国の評伝ドラマで、脚本を(出演もしている)Emma Thompsonさんが書いている。ちなみにこの作品でJohn Ruskinを演じているGreg Wiseさんは彼女の夫。

誰もがそうであるように幸せな花嫁を夢みていたEffie (Dakota Fanning)がJohn Ruskin (Greg Wise)と結婚して、彼の父 (David Suchet)と母 (Julie Walters)のいる実家で同居の新婚生活を始める。この家の最初の晩にEffieが彼の寝室に入っていって彼の前でガウンを脱いで裸を見せると彼は見事に凍って固まってしまい、その姿に動揺した彼女は自分の部屋に戻って、そのまま南極のような結婚生活に突入する。

彼の両親は彼を誇りにして溺愛して(ママが入浴させてくれる)、社交でもアカデミーの世界でも賞賛と羨望の嵐のなかにあった彼の傍で、ただそこに立っているだけのEffieは孤立し、脱毛症になり、不幸のどん底で固まってぼうっとしているのだが、それに気付いたのは家に遊びにきたElizabeth Eastlake (Emma Thompson) - 彼女自身も芸術批評家で夫はNational GalleryのDirectorだったCharles Lock Eastlake - くらいで、でも気付いたからといって初めのうちはどうすることもできない。

やがてJohn Ruskinが持ち上げていた新進画家John Everett Millais (Tom Sturridge)と知り合ったEffieは、滞在していたスコットランドで彼の絵のモデルになったり、少し仲良くなるもののそれ以上には発展しようがなくて、ますます塞ぎ込んで幽霊のようになっていくEffieを見かねたElizabethが彼女を医師に診察させ、彼女が未だに処女であることを確認すると、これは離婚の理由になるわって、行動を起こして…

頭の切れるエリートで評判もよいのに結婚したらどうしようもないマザコンで結婚生活どころではなくて、というのは現代でも転がっていそうな話で、それを19世紀のアート界隈におけるスキャンダルのように描くことにどんな意味があるのか? あんまりない気がするのだが、これが当時の絵画や建築における「美」とか芸術運動のありようを考察したり自分でも絵を描いて浸ったりしていたJohn Ruskinの足元で起こっていた、というのがなんかおもしろい。実際には本件についてふたり共それぞれの見解をきちんと残しているので、それを少し広げて架空の法廷劇にしてもよかったのでは。

Ruskinて、”Mr. Turner” (2014)でもろくでもない奴みたいに描かれていた(演じていたのはJoshua McGuire)けど、本当のとこはどうだったのかしら? まあこれらが本当だったとしても彼の著作を読まないでおくことなんて不可能 - それくらいRuskinの著作って英国のアートを見たり考えたりする上で基本の基本みたいになっている - のだけど。

ここで見るべきは夫に家庭内放置されて、そんな自分をどうしてよいのかわからずに幽霊のようにホラー映画の主人公のようになって彷徨うDakota Fanningさんで、ここでの彼女は”War of the Worlds” (2005)で宇宙人の襲撃をうけて目の奥を空っぽにして叫ぶこともできなくなってしまったあの娘の姿に近くて、それは傷ましさを通り越してすごいとしか言いようがない、彼女にしかできない演技で、これがあるので見事な女性映画になっていると思う。Ruskinが彼女の表情を見たらなんと言っただろうか。

映画の最後でRuskinの元を去るEffieは後にJohn Everett Millaisと一緒になるのだが、彼の“Ophelia” (1851–2)のモデルがEffieであったかのように描かれているのって、違うよね?(モデルは当時19歳のElizabeth Siddal)

まだ美術館が開いていなくて絵を見ることができないので、本屋の美術書のコーナーに通って端からめくりながらどうしよう、とかやっている。いくらでもやっていられて楽しいけど、楽しくない。美術館で絵を見たい。

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