5.11.2021

[film] Death Takes a Holiday (1934)

5月1日、土曜日の晩、Criterion ChannelのMitchell Leisen特集で見ました。

いろいろ切羽詰まってしにそうなので、2時間を超える映画は見れなくて、最近のではなくてクラシックが多くなって、TVシリーズも多くなって、映画もこれ(長さは79分)とか、”They Live By Night” (1948)とか”Heaven Can Wait” (1943)とか、内容は生死の境目みたいのばかりになっている。ほんと境目だから。

邦題は『明日なき抱擁』、ブロードウェイの同名劇作を翻案したもの。タイトルだけだとコメディのようだが、どちらかというと暗い、ヨーロッパの耽美譚とか日本の怪談のような。“Meet Joe Black” (1998) - 未見 - はこれのリメイクだそう。

なにかのお祝いで花吹雪が舞って人々が楽しそうにどんちゃん宴をしているその脇でGrazia (Evelyn Venable)が物憂げな表情でひとり教会でお祈りしていて、そのまま彼女を引っ張って車に乗せて二台の車でみんなでわいわい山道を走っていく。が、それでもGraziaは不吉ななにかを感じているらしく、ロバを轢きそうになったりしながら、みんなで滞在するLambert公爵 (Guy Standing)の館に到着する。

Graziaは公爵の息子のCorrado (Kent Taylor)と婚約していて(Corradoは一ヶ月後に結婚したいと思っていて)この滞在はそんな両家の夢と希望に溢れた温かい集いになるはずだった、のだが、ふたりの将来を熱く語るCorradoにもGraziaは乗ってこなくて、なにか確かめたいことがある、と夜のバルコニーに出ていったら突然卒倒して冷たくて恐ろしいものが、暗い影がとかうなされてたりしている。

念のためぜんぶの窓に鍵をかけて寝ようとしたら公爵のところに暗い影が現れて、自分は“A sort of vagabond of space”であるとかなんとか – 要は自分は「死」であり、 わざわざ3日間の休暇を取ってここにやってきて、人はなんで自分のことをそんなに嫌うのか、とか人が自分を嫌わせるなにか、人をその人の人生にしがみつかせるなにか、たとえば美の意味とかそういのを知りたいのだ、と。そんなの3日間でが無理じゃねーの? とか思うのだが男爵は彼を受けいれることにすると、「死」は丁度館を訪れる予定だったPrince Sirki (Fredric March)として姿を現す。

人の姿になった時点で「死」は不死の存在から死に向かう存在へと変わってしまうのだが、そのことが館の人々にパニックを引き起こすことはなく - いちおう彼もホリディなので - ふつうに館の人々と交流していくのだが、唯一その到来を予知していたGraziaだけは、彼だ! ってあろうことか恋に落ちてしまったのでさあ大変。

彼女の傍にいるCorradoにとっても実母にとってもそんな.. って懇願するしかないし、滞在時間が残り少なくなった「死」もいやこれは冗談じゃないから、って押し返そうとするのだが、彼女はこれは恋だから - “Love is greater than illusion and as strong as death”とか強くて揺るがなくて、全員を説得してしまう。この辺の問答がすばらしくスリリングでおもしろい。自分は死にたいから死ぬのではなく、愛してしまったから死ぬのだ、と。これには誰も勝てない。愛に向かおうとすればするほど「死」はすぐ傍に現れた、と。

こうしてふたりは(闇ではなく)光のなかに消えていくの。 でもやはり祝福はできなくて、みんなお葬式モードになるしかない。

なぜ「死」が若い独身男性の姿をとって現れたのか、その予兆を感じて吸い寄せられていくのがなせ若い独身女性なのか、いろいろおもしろいけど、物語としては無理がないし、ベルイマンのよりもわざとらしくなくてわかりやすいと思った。 “Death Becomes Her” (1992)とかはこれの反対側にくるやつ? - いやこれよかひどいかも。


もう腰も背中もばりばりで指先はがさがさで寝くじいて首が回らなくて、いまここに「死」が現れてこっちを見たら自分の存在意義を見直したくなるであろう程度にはどうしようもない状態になっている。連れていってほしい、って頼んだらあいつは無言でどこかに消えてしまうにちがいない。

どうでもいい話だけど、見かけている途中のTVシリーズとか、しばらく見れなくなるのはやや残念かも。こんなこわいの嫌だ、っていいながら(まだずっと言ってる)見始めた”Game of Thrones”とかはどこでも見れそうだから別にいいのだが、まだ途中の”Mare of Easttown”の今後は少し気になる。

あと、日曜日にBBCで放映された”The Pursuit of Love”がすばらしいったらない。Nancy Mitfordの1945年の小説をEmily Mortimerが脚色して監督している。中心のいとこ同士にLily JamesとEmily Beecham。 まだ2/3だけど全部見終わったらなんか書きたい。  

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