5.18.2021

[TV] Smiley's People (1982)

UKを去るにあたってこれだけは見ておかねば、というのは当然いっぱいあって、でも普段メモとか取っているわけではないので、終わりの方は(いつものように)ぐだぐだになっていったわけだが、でもやっぱしこれだけはなんとしても、というTVシリーズがふたつあった。

Alec GuinnessがGeorge Smileyを演じたJohn le Carréの「スマイリー三部作」のうち、TVシリーズ化されたふたつ。2019-20年にかけてBlu-ray化された“Tinker Tailor Soldier Spy” (1979) - 7エピソード; 315分と”Smiley's People” (1982) - 6エピソード:349分。これらがAmazonで見れるようになっていたので、”Tinker Tailor..”を5月4日から3日くらいかけて、”Smiley’s People”をそれに続けて5月6日から2日くらいで、箱詰めのあらゆる隙間の時間を狙って使って見た。

“Tinker Tailor Soldier Spy” (1979)の方は2019年9月にBlu-ray化記念でBFIで第一話だけ上映された時に見て、監督のJohn IrvinとPeter Guillam役のMichael Jaystonのトークを聞いた。これって2011年の映画版『裏切りのサーカス』よりもすごいんじゃないの、と思ったのだったが、改めてそう思った。

もちろん映画版の方だって悪くないのだが、16mmで映画と同等規模の予算とスタッフをちゃんと使って、Alec Guinness自身が人選したキャストが醸しだすリアル70年代の雰囲気と空気感ときたらそもそもの色艶からしてぜんぜん違うかんじでー。

あと、3部作でいうと、”Tinker Tailor..”は入り口で、サーカス内に絶対に潜んでいるもぐらを暴いていく推理ものなのでわかりやすくて明快で、次の『スクールボーイ閣下』は結末があまりに悲痛すぎてあまり読み返す気にはならなくて、最後の『スマイリーと仲間たち』はパリの老婆の元に現れた訪問者とロンドンの「将軍」の殺人を緒にすべてを操ってきたソ連の影の首領を「こちら側」に引きずり出そうとする総力戦で、単なるスパイものとは思えない「むこう側」との糸の引っ張りあいがすばらしくて大好きで、何度も読み返したりしてきた。

この”Smiley's People”はJohn le Carré自身が脚本を書いているので、台詞のいくつかは小説そのままだったりしてたまんないし、シーンのいくつか - ラストの橋とか - は読んでイメージしていたのととっても近かったり。

他の登場人物 - Madame Ostrakova (Eileen Atkins)も、将軍 (Curd Jürgens)も、Mikhel (Michael Gough)も、Anton Grigoriev (Michael Lonsdale)も、それぞれにたまんなくそこにいるし、”Tinker Tailor..”からのConnie Sachs (Beryl Reid)のすばらしさときたら。 でも、Peter Guillam (Michael Byrne)だけは”Tinker Tailor..”の方がよかったかも。 細かいとこだけど、Ostrakovaを匿った妻から電話を受けたPeterがパリの街を車で爆走して家になだれ込むシーンがTV版になかったのは、少しだけ..  あと、まだぴちぴちのAlan Rickmanが少しだけ出ていたり。

でもなんといってもAlec Guinnessだよね。 John le Carré自身がこの役はAlec Guinness以外に考えられない、と語っていたように(何度か聞いた)、シャーロックホームズは誰でもいくらでもできるかもだけど、George Smileyは彼にしかできないと思う。 彼はObi-WanではなくてGeorge Smileyなんだよ(もちろん、他にもいっぱい)。

とにかく全員が、スパイという業態からしてもうピークを過ぎたよれよれのぽんこつか変態ばかりで、それぞれに過去の傷とか後ろめたさにやられてどこまでも後ろ向きになってて、向こう側にいるのは間違いなく敵なのに狂ったように追い続けているうちにConnieのように深く、絶望的に愛するようになってしまう、その人としての弱さとやさぐれぶりがたまんない。これはJohn le Carréの作品ほとんどに言えることだと思うが、この作品ではエモ全開でなにもかも曝け出してしまっている感がある。

これとか”Berlin Alexanderplatz” (1980)とかを、出た当時に見ていたらもう少しまともな大人になれていたかも、とか。

UK滞在中に自分で買ったDVDは一枚だけ - “Leonard Cohen: Bird on a Wire” (1974)に監督がサインしてくれたやつ)だったが、これも買っておけばよかったかなー、って。


明日の朝のPCR検査でなにもなければシャバに戻れる。ここまでひどいとは思わなかった、ほんとにただドブに捨てたようなここ数年間で最低の3日間(ぶじ出られれば)でしたわ。

しかし日本のTVって相変わらずどうしようもなくくだんないのね。

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