1.05.2021

[film] Sylvie's Love (2020)

12月27日 – ホリディなので曜日なんてどうでもいい - の晩、Amazon Primeで見ました。

リリースは23日だけど、直前だったからクリスマスの最中に相手しているヒマはなくて、終わってからそういえばこんなの届いているけど、ってその箱を開けてみたらその冗談みたいなクオリティにびっくりして、どんな顔をしたらよいのか当惑して。 これを12月の初め頃に、シアターで見ることができたらどんなに素敵だったことでしょう。

62年、NYのTown Hallの入口でコンサート(Nancy Wilsonだって)に入るのに誰かを待っているらしいSylvie (Tessa Thompson)が、たまたまそこに現れたRobert (Nnamdi Asomugha)と出会って、ふたりは互いにはっきりと動揺しながらも再会を喜ぶ。

と、映画はそこから5年前に遡って57年のハーレムで、Sylvieは父親がやっているレコード店 – MonkとかSonny Rollinsが新譜でじゃんじゃん入ってくる - タイムスリップしたい – でTVを見ながら店番をしていて、ジャズバンドのサクソフォン奏者のRobertが現れて、Sylvieに惚れちゃった彼はそこの求人の貼紙をみてバイトしたいって近づいてふたりは仲良くなっていくのだが、Sylvieには婚約者があった。バンドの華として注目されつつあったRobertはSylvieを自分のライブに招待して、彼女は彼の演奏にいっぱつで魅了されて緩んで、でもやがて彼のバンドはパリでのライブの契約を結んで、海外に旅立つことになる。RobertはSylvieに一緒に行こう、というのだが彼女は思いとどまってお別れする。

そこから物語は分岐してSylvieはTV局のプロデューサーのアシスタントになって料理番組の裏方仕事に没入しつつ、元いた婚約者と結婚して子供を生んで、パリでのライブを成功させて戻ってきたRobertはマネージメントと自身のこれからやりたいことの間で悩み始めていて、そういう状態で再会したふたりは、再び燃えあがるのだが..

偶然の再会 → めくるめく回想 → 分岐点 → それぞれのキャリア → 再会・再燃 → それぞれの&ふたりの苦難、というメロドラマの王道を辿っていく。そんなにでっかい苛酷な運命の溝とか渦はなくて、黎明期にあったTV制作の現場 - 女性のキャリアの突端で、Motownのようなポピュラーミュージックの登場に押されつつもまだ発展途上にあったジャズの現場で、自身の将来をそれぞれに模索しているふたりが立ち止まって見つめ合う、その揺れる眼差しと熱とがじんわりと伝わってくる。

既にいろんなところで言われているように50~60年代のハリウッドのメロドラマの王道を黒人のふたりを主人公に再構成していて、これまで作られていそうでいなかった … らしいのだが、これに近い最近の実例として”Far from Heaven” (2002)とか”Carol” (2015)くらいしか知らなくても、そうそうこんなふうかも、っていうのはなんとなくわかる、のはなんでかしら? そしてたとえそんな昔のメロドラマとかを知らなくても、このふたりのドラマをハンカチと力こぶを握って追ってしまうのはどうしてなのか? これらのドラマがセットや書割のなかだけでない現実のメロやエモのなかにあることを、そこを生きてきた我々はどこかでとっくに知っているから、とか書くとくさいだろうか。でもそうやって入りこんで浸って見ることを許してくれるゴージャスな色彩と空間がここにはある。50~60年代のハーレムとジャズ – 撮影のDeclan QuinnはGordon Parksの写真を参考にしたという – がどうしてそう見えて、それを可能にしてしまうのか、については引き続き考えていきたい。時代は違うけどこないだの”Soul”の書割も精緻に描きこまれたNYとジャズの映画だったよね。

そしてこのドラマの主人公としてはっきりとそこに生きているふたりを演じたTessa ThompsonとNnamdi Asomughaには称賛しかない。ひとりが監獄行きになったりしなくても、それぞれが別の道を行こうとも、どこかで巡りあって向かいあうことになるふたりの運命 - 絆なんてちゃちなことは言わない - それがSylvie’s Loveなのだ、ってそれだけ。

撮影は”Carol”と同様16mmみたいなので、フィルムで見てみたいな。


英国、今度はレベル5だそうで、3度目の国まるごとのロックダウンだと。とにかくひとりでも多くの人が助かるなら1年でも2年でもやったらええのや。 そんなことよりあたしゃ日本の方がよっぽど心配だよ。あんな程度の「宣言」で人が救われるとは思えないもん。
 

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