1.25.2021

[film] Adolescentes (2019)

1月17日、日曜日の昼間、BFI Playerで見ました。
My French Film Festivalは世界中でやっているやつで、BFIのここでもSubscriptionで好きなだけ見ることができる。上映作品は場所によって少しづつ違うのかしら? と思ったら同じみたい。

これは日本のでもやっていて邦題は『思春期 彼女たちの選択』.. ラインナップのラベル『フォーエバー・ヤング』っていうのも死ぬほど(と言うほどじゃないけど)恥ずかしい。グローバルでこれみたいだけど、40年くらい前のCMみたいなかんじ。

見始めてしばらくはフィクションだと思ってて(Richard Linklaterの”Boyhood” (2014)方式)、実際の出来事も被さってくるので編集とか大変だったろうな、と思ったらドキュメンタリーだった。よく見たら監督のSébastien Lifshitzは性同一性障害の女の子を描いた”Little Girl” (2020)のひとだった。

フランスの片田舎に暮らすふたりの少女、AnaïsとEmmaの13歳から18歳までを追っかける、というよりゆったりと流していく130分。 最初に歯のブリッジを外したりしているEmmaは税務関係の仕事をしているらしいママにスペイン語を叩きこまれたり、馬に乗ったりスケボーをしたりミュージカルのオーディションを目指したり、家庭環境は割と恵まれているかんじで、EmmaよりややぽっちゃりしたAnaïsはママが入院したり幼い兄弟の面倒を見たり家が火事になったり、家庭の事情はややヘビーで大変そうで勉強も苦手ぽいのだが明るくて、こんなふたりはずっと親友で、友達仲間とおしゃべりしたりプールや海辺でよく一緒に遊んでいる。

最初の方は学校の先生から言われたこと、親から言われたこと、自分が立てた目標とか夢とか、でもまずは試験ねとか、周囲が自分に対して言ったり課したりしてくるあれこれについての疑問とか反発とか、できたできないで上がったり下がったりの日々で、大変だなあって。そのうち社会の出来事が入ってきてシャルリー・エブド襲撃事件があって、他にも同様のテロの緊迫したニュース映像が流れてきて、それらに対するデモや集会があり、選挙があり、それらに対して自分はどう思うか、とか(をきちんと家庭や学校で話したりするのはえらいねえ)。

やがて自分の進路を決める、考えるという季節になるとEmmaはミュージカルは諦めてでもアートに興味があるので映画関係の勉強を始めて、Anaïsは勉強は諦めて病院の看護婦のインターンのようなことを始めて、ドキュメンタリーとして切り取る前に相当いろんな悩みとか議論も喧嘩もあった(親との喧嘩はあちこち頻繁に出てくる)のだろうけど、最後は自分であっさり決めてて、カメラの方に向かって直に話すことはしないのだが、誰それに言われたから、ではなくまずは自分で、っていうのがいいなー、ってそれだけなんだけど。

彼らふたりがフランスの中高生の平均的な青年期に向かう典型かどうかはもちろんわからないのだが、なんだかとってもふつうなかんじがして、でも自分があの時期にそれを言われたらふつうって何だよ? って怒ったりしていた、そういう危うさにも配慮した細やかさで時間をかけてふたりに接していることはわかるような。 だってあの時期の数年間カメラにずっとついてこられたら嫌になっていいかげんやめて、になるよね?  暗く荒れる修羅場とか苦悶とかも編集なのかきちんと整理されて噴出するようなこともなくて、ここは”Little Girl”のそれと同様の見せ方のような。

どんなに仲がよくても親たちがなにを言おうとも、最後はふたりがそれぞれに家を出ていくところで終わって、でももちろん終わりじゃなくてこれから、っていう終わり方で。

あんまAdolescents - 思春期っぽいネタはないことを不満に思うひともいるかもだけど、”Eighth Grade” (2018)みたいに「学年」のようなところでさらりと切り取っている。日本でこれをやろうとするとまず校則とか制度対応の話が前に来そうな気がする。

授業でボヴァリー夫人のメランコリーについてやるところとか、いいなー。
フランスで育って勉強したらもっとちゃんとした大人になれていた気がする(殴)。

音楽はTindesticksのあの柔らかな質感がずうっと耳に張り付いてきて、終わりに流れだす”Take Care in Your Dreams”がこの上なく優しく響いてきて、タイトルもよいけど、素敵な曲。


午前中に雪がわんわん降り出してあっという間に真っ白になったのだが、そのあとすぐに雨に変わって、ぜーんぶ流れてしまった。 積もったら公園に行こうと思っていたのに、つまんなくなってふて寝した日曜日。

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