1.29.2021

[film] Risate di gioia (1960)

1月23日、土曜日、Film ForumのVirtualで見ました。4Kリストアされたモノクロ。とってもおもしろかった。

原題を直訳すると“Joyful Laughter”。英語題は”The Passionate Thief”。日本公開はされていない?
原作はAlberto Moraviaで、彼の短編集”Racconti romani” (1954)(と続編の”Nuovi racconti romani” (1959)も?)からの2編 - "Le Risate di Gioia”と"Ladri in Chiesa”をミックスしたもの(?)。

ローマの大晦日の夕方、小さなアパートでこれから地下鉄の車掌の仕事に出かけるうらぶれたAlfredo (Mac Ronay)がいて、妻は仕事があるのでお祝いなんてできないけど応援してるわがんばってね、と悲しそうに送りだして、彼が出ていくといそいそ嬉しそうにパーティの支度を始める。

シネチッタのスタジオではエキストラ女優のTortorella (Anna Magnani)が撮影中のばかでかい宗教劇のセットで仰々しい衣装とカツラを纏って「ミラクル~ ミラクル~」とかわめき叫んでいて、でも大晦日の晩なので「はいおしまい」になると、衣装を脱ぎ捨てて支度をするのに家に飛んで帰って、更に狂ったように夜の町に飛びだしていく。ここまででなにやら尋常ではない一晩になりそうな予感がたっぷり。  

夜の22 :00、泉の前でTortorellaを待っている仲間たちは、彼女もう来そうにないから行っちゃおうか - 来たら来たでちょっと面倒だしな – と逃げるようにどこかに移動してしまい、Tortorellaが着いた時にはだれもいないので、なんなのよみんなー、とかいう。

他方で初老のUmberto (Totò)と若いスリのLello (Ben Gazzara)のコンビにとって年越しパーティの雑踏は稼ぎ時/場なので、連携プレーであっちでスッてこっちでカスめてをやろうにも邪魔が入ったりなかなかうまくいかなくて、そうしているところにパーティ命でごうごうに燃えたぎったTortorellaが現れて旧知のUmbertoを見つけてきゃーきゃーはしゃいで、でもお蔭で彼らの仕事は捗らずにアメリカ人の運転手を巻きこんで果てのない彷徨いに突入して、Tortorellaを置き去りにした連中と日本食居酒屋(「ます」って提灯がいっぱい。いろいろ謎)でぶつかったり、スリふたりはTortorellaをふっきろうとしてもなぜかまた会ってしまうし、花火が飛んできたとかいちゃもんつけてドイツ人のお屋敷のパーティに潜りこんでも追い出されちゃうし、最後は夜明けに教会で新年のミサに出たところで..

深夜を過ぎても延々帰れない/どこにも辿り着けない底抜けのかんじは “After Hours“ (1985)のようでもあるのだが、彼らの恐怖は折角の大晦日なのに、みんな着飾ってきゃーきゃー楽しそうなのに、そこに乗れない、稼ぎ時なのにちっとも稼げない(から帰れない)、というところにあって、でもそれが空振りに終わったりはぐらかされたりしても、何かが達成されるまではめげない、移動し続けるってほんとすごいわ、って感心する。

フェリーニの映画にもよくあると思うのだが、いったん妄想(主人公たちはそうは呼ばない何か)とかゴールが自分の頭にセットされてしまうと絶対にそれを降ろしたり修正したりすることをよしとしない、そのために悪夢的な事態に巻き込まれてへろへろになり、それでも自分はちっともおかしくないおかしくなってるのは世界の方だ!って叫ぶのって、イタリア的ななにかなのだろうか。これらの映画は主人公たちの方ではなく、世界の方がどれだけ狂ってこちらにのしかかって倒れてくるのかを示せれば十分で、その点でこの作品はとっても王道で、楽しいったらない。そしてその狂った「世界」がローマという都市のありようや成り立ちと表裏なのは言うまでもない、これが起こりうるのは花火ばちばちのローマだからこそ、という…

Anna Magnaniの終わりまでまったく途切れることのないテンション - どんなことでも自分に都合よく寄せて扇でぱたぱた散らしてふんぞり返ってしまう芸はとてつもなくて、そこにTotòが加わることで、なんかお呼びがかからないけどあなただけはわかってくれるはず、になってしまうふたりが楽しいのは勿論、すごくかっこよくて切れそうな若者なのに実はそんなでもないBen Gazzaraの軽い滑りっぷりも素敵で、このトリオをどこまでも見ていたくなる。

ほぼJohn Cassavetesの映画でしかBen Gazzaraを知らなかったりすると結構(心地よく)衝撃かも。


こういう映画ばっかり見ていたいなー、と思いつつ、街の人混みが恋しくなったり旅に出たくなる結構危険なやつかも。

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