12.19.2020

[film] Tale of Cinema (2005)

12日、土曜日の晩、MUBIで見ました。ホン・サンス特集が始まったらしい。
“Woman is The Future of Man” (2004)の次の作品で、原題は“극장전” - 翻訳にかけると『劇場前』、邦題は『映画館の恋』。

ぱっとしない学生風のサンウォン (Ki-woo Lee)が町を歩いていると眼鏡店の奥にかつての恋人ヨンシル (Ji-won Uhm)の姿を見つけて声を掛けて、久々なので会わないかって夜に会うことにして、サンウォンは演劇とかを見て時間を潰す。

久しぶりにヨンシルと会っていろいろ話していると溢れて止まらなくて帰り難くなって、そのまま夜の町を歩いてぼろい旅館のようなところに入ってセックスして、サンウォンがおれはもう死にたい、っていうとヨンシルも「あたしも!」って応えて、ふたりでなんの薬だかわからない錠剤(用意していたの?)をがぶ飲みして眠りについて、でも朝になったらヨンシルは目が覚めて、サンウォンは起きないのでそのまま病院に運ばれる。なんとか回復して退院したサンウォンは家族一同から散々になじられて(自殺未遂したのにひどい)、あーあ、ってビルの屋上に出たサンウォンが下界を眺めるので、飛び降りちゃうのかしら..  と見ていると素っ頓狂な音楽(いつものホン・サンスの)がぴらぴら流れてくるの。

場面が切り替わって、映画館で映画を見ているヒマそうでつまんなそうにしているドンス (Kim Sang-kyung)がいて、彼が映画館 - 壁にサンウォンのレトロスペクティブ(?)のポスターが貼ってある - の外に出ると、サンウォン(と同じ女性?)が歩いていて、ドンスは緩めにそうっとついていって、やあって挨拶して話しているのを見るとふたりは映画関係の知り合いらしい。

ふたりの会話からサンウォンは入院していて重体でよくないらしいことがわかるのだが、それって前のエピソードで彼がビルから飛び降りちゃったから? とか思って、でも更に話を聞いていくと前のエピソードはサンウォンが昔に作った映画そのもの – それをドンスが見ていた – という構成になっているらしいことを知る - だからあそこのヨンシルは若く見えたのか。

ドンスとヨンシルは向かい合って呑みながら、サンウォンがあんなふうに映画にした内容はかつてドンスがサンウォンに語った自分(ドンス)のお話しなのだ、それを勝手に映画にしやがって - というのがドンスの主張で、あの映画にあったようにふたりは旅館に入ってあの映画の劣悪なコピーみたいなセックスをして、でもその後でヨンシルはドンスに「あなたは映画のことがちっともわかっていない」といって出ていくの。

“Woman is The Future of Man”で描かれたふたりの男の記憶の中で再生されたひとりの女性との過去の色恋と現在の交錯が、ここではふたりの男とひとりの女とその間に置かれた一本の映画に変奏されていて、でもこんなもんが変奏されたからって、だからどうした? みたいなどこにも転がっていかないどうでもいい寸詰まりの話で、“Woman is The Future of Man”でもそうだったように、映画監督の男ってどこまでもしょうもない(の)?

サンウォンはドンスの話を映画にしたわけではないし、ヨンシルは映画の世界にいるわけではないし、映画はそうやって過去のなにかに/どこかに残っていくようなものではない。だからこの原題はその手前の『劇場前』なのだと思うし、”Tale of Cinema”は、”(This is Not a) Tale of Cinema”が正しいのだと思うし、邦題はいつものように道脇のドブに落ちていると思う。 ただ映画って、前後にそういうしょうもないなにかを呼び込みがちな - こんなふうにバカな男のファンタジーになってしまうようなもんなのかも。

最後に病院で峠を越えたらしいサンウォンが退院してどんな映画を撮ることになるのか、再会したドンスとぐだぐだ呑んで“Woman is The Future of Man”みたいなろくでもないことになることを期待してしまうわ。


クリスマス直前の週末だというのにこの盛り下がりっぷりときたらなんなのか。

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