12.20.2020

[film] How Green Was My Valley (1941)

13日、日曜日の昼、BFI Southbankの一番でっかいスクリーンで見ました。問答無用の『わが谷は緑なりき』。

最後にこの作品をスクリーンで見たのは2011年のお正月、この年の最初の1本で、NYのWalter Reade Theaterだった。ほぼ10年ぶり。この時はUCLAがリストアしたばかりのぱりぱりの35mmフィルムで見て、ああこんなすごいものがあろうか、って打ちのめされた。 今回のはデジタル上映だったが、大画面で見たときの驚異は変わらない。

1942年のオスカーでは『市民ケーン』『マルタの鷹』『ヨーク軍曹』『断崖』なんかがノミネートされている中で作品賞を、Orson Welles、Howard Hawks、William Wylerらがノミネートされている中でJohn Fordは監督賞を、他に3部門でも受賞した。この並びを見てもとにかく、問答無用のやつで、まったく異議なし。これにならノーベル賞あげたっていい。なに部門になるか知らんが。

Richard Llewellynによる1939年の同名小説を原作に、生まれ育った南ウェールズの炭鉱町を去ろうとしている(そしてもう戻ることはないだろう、という)Huw Morganが自分の幼い頃を回想していくお話。

Huw (Roddy McDowall)が子供の頃、炭鉱で働く父のGwilym Morgan (Donald Crisp)と5人の兄達がその日の手当てを貰うと、みんなで歌を歌いながら家に帰ってきて、入り口で母のBeth (Sara Allgood)にお手当を渡して、男達はそれぞれ体を洗ってから食卓について、父は食事を取り分けてみんなに手当てを分け与えて、という昔の大家族の1日が描かれる。やがて長兄は村の娘と結婚して、その式で姉のAngharad (Maureen O'Hara)は若い牧師Gruffydd (Walter Pidgeon)にときめいたり。

そのうち炭鉱が賃金を下げてきたのでみんなでストをやろう、ってなるのだが父はひとり反対して家族に亀裂が走り、父ではあかんって、かあちゃんのBethが嵐の夜中に集会に出ていって男達を捨て身で説得して、その帰りにBethとHuwは冷たい川に落ちて、みんなに助けられるもののHuwは足が動かなくなってしまう。

足が動かなくなってベッドに寝たきりでしょんぼりになったHuwを明るい屋外に連れ出して、歩く訓練も含めていろんなことを教えてくれたのが牧師のGruffyddで、そんな彼を遠くから見つめるAngharadだったが、ある日炭鉱の偉い人が父のところにやってきて、彼女をうちの嫁にどうか、って言ってきて、相思相愛だったAngharadとGruffyddだったのに、いろんな人の幸せを考えると..  ってAngharadは結婚して遠くに行ってしまい、でもしばらくすると戻ってきたので離婚と、それと共にGruffyddとの仲が噂として立ち昇って、Gruffyddは町を出ていくことに…

学校に通い始めたHuwは先生も含めてみんなに虐められてぼろぼろにされて帰ってきて、そんな彼を見た父の取り巻きのボクサーとBarry Fitzgerald(さいこう)がHuwを鍛えて、みんなで学校に乗りこんでいって、ぼこぼこにして復讐したり、学業が優秀で大学までの奨学金を得るのだが、生活が苦しくなってきた父を助けるために進学を諦めて炭鉱で働き始めて、でも炭鉱仕事はきつくて、やがて事故で兄が亡くなって..

こんな具合に、一家の内と周りでこんなふうになってしまった、あんなことになってしまった、というのが続いて、それが家族の歴史を振り返るということなのだろうが、その最後には悲惨な炭鉱事故で父が死亡する、というのが起こる。でも、みんなどんなに世界中に散り散りになってもこの家は父と共にあって、その限りにおいて父は死ぬことができないのだ、って、家族がテーブルを囲む夕食時の絵が..

19世紀の南ウェールズの炭鉱夫の一家の、そこで育った子の回想とその独白が、なんでここまで強烈な普遍性でもって迫ってくるのか、それって、我が谷が緑だったからで、緑はそうやってどこまでも続いて枯れずに残っていくものだし、もちろん我が海が青いことだってあるし、としか言いようがないのと、どこを切ってもそのままスチールになる - カメラが登場した時代の写真のように深い陰影で刻まれた人々がこちらに向かって笑いながら手を振ってくるから、としか言いようがないの。

これがロンドンのTier2時代、最後に映画館で見た映画になってしまった。これが最後でよかったわ、って思った。


今年はこれを見て改めて懸案だった「ウェールズのクリスマス」(Dylan Thomas)を実現すべく準備を進めていたのだが、あそこもロックダウンでそれどころではなくなってしまった。そしてロンドンは明日の日曜日からTier4やるよ、って。 Tier4なんてあるのも聞いてなかったんですけど..?

今日は、週末だしHampton Court Palace(ヘンリー8世が好き放題やったとこ)に行って、帰りにLiberty(デパート)に寄った。どこもそこそこ賑わっていて、そんなふうに賑わっちゃいけなかったのよね、やっぱし。

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